100 使者からロマーフ公国に関する報告
数日後、ジョナサンの協力を得て調査を終えた使者がルベリオ王国に戻ってきた。
その知らせを受けて、シャンテルたち王族は使者の話を聞くため、再び謁見の間に集結していた。
「ご報告いたします」
その一言から始まった報告は、ロマーフ公国で調査を行ったことと、その結果が告げられた。
「調査の結果、ロマーフ公の私室から、ルベリオ王国を乗っ取った後の計画が記された書類が出てきました」
「なんだと?」
その発言にどよめきが起こる。
話によると、ロマーフ王国と題された書類があり、その中には、ギルシア王国への侵攻計画まで記されていたという。
「ジョセフ公子とジョナサン公子の私室も調べましたが、怪しいものは発見されませんでした。よって、首謀者はロマーフ公であるとジョナサン公子とも意見が一致しております」
「そうか……」
国王が力なく相槌を打つ。
いつもルベリオ王国を訪れるロマーフ公はとても愛想よく色々話をする人だった。
ルベリオ王国から独立した同盟国の公王が裏切りを働いたことは、それほど衝撃だったということだ。
「ジョナサン公子の協力により、ロマーフ公への謁見から調査まで迅速に話が進みました」
「すぐ調査に移りましたから、証拠を隠蔽する暇もなかったでしょう。この調査結果はかなり信憑性が高いものになります」
「ロマーフ王国と記された書類を目にしたジョナサン公子はかなり動揺されていましたので、彼は何も聞かされていなかったようです」
三人の使者たちはそう報告した。
「手紙の内容を総合して考えると、ジョセフ公子はロマーフ公に命令されて動いていただけのようですね」
「だからと言って、許されることではありません!!」
ニックが見解を述べると、バーバラが声を張り上げた。今回の件でバーバラは随分神経を尖らせていたため、普段以上にヒステリックになっていた。
そんな彼女に、ニックは真面目な顔で同意する。
「えぇ。妃殿下の仰る通りです」
苛立ちを見せたバーバラを気にしながら、使者たちが報告を続ける。
「ロマーフ公や公子たちの私室の他にも城内を調べましたが、何も出ませんでした。よって、この件はロマーフ公の暴走によるものと考えられます」
「ジョナサン公子は緊急で会議を開き、ロマーフ公国としてはルベリオ王国と同盟国でありたいと結論を出されました」
公国はロマーフ公が国のトップだ。そのため、国として同盟関係を破棄してロマーフ公の意向に従う判断を下してもおかしくはなかった。だが、ジョナサンたちは賢明な判断をしたようだ。
「これを受けて、ロマーフ公は公国の北の果てに直ちに幽閉されました」
「幽閉、か……」
国王がボソッと呟く。
それは、ルベリオ王国側からすると、甘い処分だからだ。
「ですが、公国側は暫定的な処置と考えているようです。公国からルベリオ王国へ使節団を送り、その辺りの話し合いを行うための会談を望まれていました。それから、ルベリオ王国の国王陛下がロマーフ公国を属国と見なしても仕方ないとも。ただ……」
そこで使者は少し言葉をつまらした。
「その代わり、ジョセフ公子の命を取ることだけは容赦してほしいと仰っていました」
「わたくしたちを葬るつもりだった国が! なんて図々しい!!」
「そうですわ! そんな都合のいいお話! 許されませんわっ! わたくしたちがどれだけ怖い思いをしたと思っていますのっ!!」
バーバラが叫ぶと、それにジョアンヌが続いた。だけど、命を狙われていたのだから、二人が怒るのは尤もだ。それでも、ジョナサンが弟を助けたい気持ちも理解できるため、シャンテルは複雑な思いだった。
「おまえたち、落ち着け」
国王が二人を窘めると、その視線は再び使者へ向けられた。
「使節団はいつ我が国を訪れるか言っていたか?」
「人選や遠征の準備が整い次第、書簡を送ると仰っていました」
それを聞いて「シャンテル」と国王が呼ぶ。
呼ばれた瞬間、シャンテルは嫌な予感がした。
「この件は全てお前に任せる」
あぁ、やっぱりね。とシャンテルが思ったと同時に今まで静かに話を聞いていただけだった宰相が声を上げた。
「国王陛下! 流石にそれは如何なものかと……」
大抵のことは国王の思い通りにさせている宰相だが、流石に今回は口を挟まずにはいられなかったらしい。
これは、いつものような国内の問題ではなく、国同士の問題だからだ。
「案ずることはない。シャンテルなら問題なくやれる」
「し、しかし……」
「どうせ向こうもジョナサン公子が相手だろう。そんなに心配なら、お前が手伝ってやれ」
そう言われて、宰相は口を噤んだ。
事なかれ主義の宰相は、間違った判断をした時に首が飛ぶような難しい案件に深く関わりたくないのである。そのため、重要な案件をシャンテルに任せる国王をこれまで黙認してきた。
彼は口が上手い。そして、思った通りに同意してくれるのが気持ちよくて国王は宰相を気に入っていた。そのため、彼は今も宰相の座に収まっている。
「一先ずこちらの意見を纏めた要求書を考えて提出せよ。使節団への対応から会談まで、くれぐれも頼んだぞ」
重大な役目を指名され、シャンテルの心は一気に重たくなった。
今回の件は非常にデリケートで難しい。和解の条件をキツくしすぎては、ロマーフ公国を支配することになりかねないし、逆に緩すぎてもいけない。
今はまだ王城内と一部の貴族にしかこの話は通達されていない。だが、いずれ社交界から国民にも広がっていくだろう。
お父様は自分が矢面に立って批判されたくないから私に任せるんだわ。
「……分かりました」
シャンテルは苦い思いを飲み込んで了承した。
いつもお読みくださりありがとうございます!
シャンテル王女も遂に100話目となりました。
ここまでこれたのも、読んでくださっている皆さんのお陰です。
さて、現在シャンテル王女は展開的に想定より難しめの内容に向かっております。
とはいえ、あまり深く考えずに読めるものにしたい&そんなに難しいことは書けないので、ある程度誤魔化している部分もあります。
ですので、皆さまも気楽にお楽しみください。
因みに、このお話しはまだまだ続きます。
たぶん、半分は書いたと思います。
お待たせしてしまうこともあると思いますが、今後もシャンテル王女をよろしくお願いします!




