最終話 へんてこな帽子は預けておいていいですか? あなたへ
一日遅れまして失礼しました(・_・;) さて最終回でございます。どうぞリゼットの決断を見てやってくださいませ。
――彼女に……近づくべきか否か――。
あの幻? の姫君だかの正体を間近で見てしまうべきか、否か……。
いえ正体もなにも無いのですけれど……どうして今になって――?
というよりもまず、なんだかとってもお声をかけづらい……。まるで知らない人のようなのですもの。……しっかりとお化粧、なさってますし。
少し伏し目がちな整った目元。落ちた睫毛の影……。息を呑むうつくしさと、淑やかな仕草。
――誰ですか、私が伯母さまの若い頃に似ているなんて言ったのは。本気を出されたら全然敵わないじゃあないですか。
隣にいるウィリアムも恍惚として見惚れていますし。あなた、私に婚約の申し込みした人ですよね? どういうご了見で?
突然の最高級ゲストの登場に、皆がざわめいたりひそひそと遠巻きにしてみたり……けれど誰の目にも好奇心と蕩けるほどに見惚れた表情が浮かんでいます。
そこで姫君の目の前に立ったのは――――
ああ、そうです。この御方以外にあり得ません。
「ウィンザー卿――頂いたお手紙にあった通りに致しましたけれど……」
お手紙……? あ、まさかあのお礼状……?
「ええ。私の期待通り……いえ、それ以上ですね」
眼の前でウィリアム・ウィンザー卿が、黒いタキシード姿で微笑んでいました。うーん、相変わらず実年齢を感じさせないお姿――。あの髪の毛も元々のプラチナシルバーに見えて、ウィリアムと並んでもまるで年の離れた兄弟のよう……。
「先日はドレスのご注文並びにもう一着のお申し付けありがとうございます――。けれど何故でしょうか、それを着てわたしにここへ来るように、というのは」
ええっウィンザー卿はそんなことを書かれていたのですか。ん、本当になんのため――でしょう。期待している通りだと思ってもいいのかしら。
だって伯母さまだって期待しているからこそ、そんなに耳が真っ赤なのでしょう?
「もちろん、私のダンスの相手、その後の交際についても考えてもらうためですよ、エライザ」
うわあ。わあ。
快哉を叫んでしまいそうで、慌てて口に手を当てます。
だってだって! え、え、すごい! なんでしょう。全くいい大人達が心配させてくれたものですわ。本当に世話の焼けることです。
――ああなんて素敵なんでしょう、すでに両想いだったのですか!
「――っ。そ……っ」
伯母さまは相当に動揺していらっしゃる――ええ、そう見えはするのですが、これは何と表せばよいのでしょう? 嬉しくてどうしたらいいか分からない、という“それ”ではなくて。どうにも眉を顰めてしまって、まるで不機嫌なようにも見えてしまう――?
ええ―っと?
「一体どういうことなのか、ご説明くださいウィンザー卿。わたしの姪であるリゼット・バークレーに婚約を申し込まれていたはず……。まさかあの子、恐れ多くもお断りしたのですか? それで仕方なく代替としてわたし、ということですの?」
え、ウィンザー卿が私に婚約の申し込み? まさか。んん?
「は……い? あなたの姪御さんであるリゼット嬢に、私が……?」
えっと? 何て仰いましたの伯母さまは? 何かとんでもなく変な話を聞いたような……?
「え? え? 伯母さま?」
その間にウィリアムが怒鳴り込みます。
「父上!? は? いい歳して何やっているんです⁉ 人が求婚している相手に……しかも私とそんなに変わらない年齢の令嬢に!?」
「ん? ああ、息子くんよ――お前はいつからそこに?」
あら天然でいらっしゃる。それどころではないのですが、ウィンザー卿?
「伯母さま? えーと結局……? 誰と誰の婚約のお話でしょうか……? 私? 伯母さま? ウィリアムさま、どういうことでしょう?」
ウィリアムの方を見ると、渋い表情で顔を横に振っています。
「父上と私のどちらかを選ぶと言う背徳的なことを、君はするのかい?」
ええっ。そんな割と黒い話でしたの? そういったものに関わりたくはないのですけれど。
「あのう、ウィンザー卿には何の類の要件も申し込まれておりませんが。そこでそんな、っはい……って……どういうことでしょう?」
その言葉があまりに品性に欠けるので口に出したくもないのですが……。それはそれとしまして――?
????????
――ええ。たぶんこの状況をカオスと呼ぶのでしょうけれども。
ええとええと……。
「エライザ……伯母さま、です、よね」
一応の確認です。
「……え? リゼット、あなた只のうっかりより酷くなってしまったの?」
いまうっかりどころでは済まないのは伯母さまの方なのに……。なんて酷い……。
「私はウィンザー卿に求婚も何もされておりません。どころか今伯母さまがちょうど口説かれ――いえ、ダンスの相手にお誘い頂いているさなかだったと記憶しておりますわ……」
姪に何を言わせるのでしょう。
「え……? こ――――こ、んな可愛らしさの欠片ない年増……ああ、自分で言っていて悲しくなってくるわ。それをどこの物好きが選ぶと言うの? そもそも眼の前には婚約直前のあなたが――え??? あなた、求婚されていないって――どういうこと、何? だって前にウィリアム・ウィンザー様から婚姻の申し込みをされているって言っていたじゃないの?」
ああやっぱり誤解なさっている。それにいい加減に苛々してきてしまいましたわ。
「エライザ伯母さま、過剰な自己否定は嫌味にしか聞こえませんわ!」
「……⁉ リゼット、なんて口をきいて……いくらなんでも誰に……」
「とてもかなわないと思うほどうつくしい、私がただ一人尊敬し憧れる伯母さまに対して、ですわ!」
「えええ、そこまで思ってくれていたのあなた……⁉」
叫んですっきりしたような恥ずかしいようなごちゃ混ぜな気持ちになって、渦を巻いたように脳内がぐらぐらとしてきました。
もうごまかすためにも丁寧な説明をして差し上げるしかありませんわね。
「え――――っとですね。まず、こちらはすでにご存知のウィリアム・ウィンザー卿……。そして、そちらが私に婚約を申し込まれている、ウィリアム・ウィンザー様ですわ。つまり“Jr.”と呼べば宜しいでしょうか、よくあるお父様の名前と同じというだけですが……」
………………。全員が黙りました。
なんだかもう世俗離れというより、色々どうでもよくなった十数年前に、忘れ去った中にはある程度必要な知識かなにかもあったのではないのでしょうか? 前に仰っていた色んなしがらみを捨てて軽くなったっていう中に……捨ててはいけないものとか螺子か何か落ちてません? 手遅れではないといいのですけど。ええ。
「……物忘れが酷くなったのかしら。わたしはもうおばあちゃんなのかしら」
どうしてかこう、時に伯母さまはとっても面倒くさい方になります。
「おばあさんではないです、ぼんやりが酷くなっただけです、まあ、たぶん、おそらくは」
――あら? フォローになっていなさそう。
「だって……男やもめだって、つまりウィンザー卿は今は独り身、それで名前が同じ息子さんがいたなんて頭からすっぽり抜けてしまって、卿があなたに求婚されたのかと……」
寝不足でしょうか。人生にお疲れでしょうか。伯母さまはすっかり頭を抱えています。ふぅ。頭を抱えたいのはこちら側ですよ! 本当になんだって……そんな勘違いのまま突っ走ってしまわれたのでしょう……。なんだか今、特段に血の繋がりを感じますわ。悪い意味で。
呆れてはいないらしいウィンザー卿が、やさしく声をかけます。なだめるように。
「エライザさん、いやエライザ、私は貴女に結婚を申し込みたいと――息子と娘がおりますが、それでもよければ……ね」
泣き出しそうで、けれど嬉しそうな初めて見るエライザ伯母さまの表情。
――そう今は自分をいくら卑下したところでどうにもならない時でしょう?
もう心のうちそのままをさらけ出して良いはず……え、と、たぶん。考えてみれば私には全然お付き合いとかの経験がなかったんでした。耳年増の知ったかぶりをして居るだけなのでしたか。いえ応援するならもう何でも良いのですっ。
「こ、んなわたしはもうすっかり歳を取りまして――」
「おや……エライザ、貴女が歳なら私はじじいになってしまいますが」
「えっ? そんな、ウィンザー様はお若くて……え?」
そっとドレスの裾のあたりで、ウィンザー卿のご年齢を伯母さまに伝えます。
「――えっ!」
「はいっ?」
「いえ、あのいえ、なんでも」
両手をぱたぱたと卿の前でブロックするように振り、それもまた不敬かと思ったのか、伯母さまはすぐに頭を床に向けて下げてしまわれます。
「わたしは……とても粗忽で、失敗してしまうことも多々ありまして――」
ん? とウィンザー卿は少し考えたようでした。
「今拝見した程度のことですか? そんな生きていればそれなりに起こるイベントのようなものです、寧ろそれを楽しみましょう」
「え、莫迦にされていらっしゃる?」
「はは、私の言葉に裏があるとか思わないでくださいね。それに私は変わり者のウィンザー卿、ですよ? エライザこそ大丈夫ですか?」
伯母さまはようやくすべてを受け入れる覚悟が出来たようでした。
「古今東西、変わり者はたくさん見てまいりましたわ。自分も含めて――」
そうしてふわりと微笑まれます。まるで女神のような、うつくしくて儚い微笑――。
「……わたしはウィンザー様に恋焦がれていて良いと言う事なのですね。良かった……」
そのまま公開告白されてしまいましたわ……。はあ。大胆なことで。
「そうですね。関係が進展しても恋焦がれた状態を続けると言うのはとても粋ですね」
目尻に皺を浮かべて笑ったウィンザー卿が差し出した手に、もう手が荒れていることなど気にせずエライザ伯母さまは自分のそれをのせステップを踏み始めます。さすがなことに2人はまるで長年のパートナのようにうつくしいダンスを刻むのでした。
「結局は全く阿保なほど人騒がせなだけだったようだね、リゼット……」
「まあ言ってしまえばそうなのかも知れませんが……。そんな、身も蓋もない。感動していましたのに……」
くるりっと勢いをつけて、ウィリアムが私の真正面に立ちました。先ほどまでのセリフとは打って変わって、唐突に真剣な表情をしています。
「ごほん!」
……あら? これって前にも。擬音を本当の言葉に出すのが流行ってでもいるのかしら?
「リゼット嬢……今日はこの場所に期待をして参りました」
「サフォーク家はきれいでお料理も絶品ですものね」
…………。無理がありましたか。
「すみません、失礼でしたね。ウィリアム様が真剣なお話をされると思うと、つい緊張で」
緊張のルビにはナーバスとかセンシティブ、よりはストレス、が適当だったのですが。
「私と共に人生を歩いてくださいませんか、リゼット」
……ええ、ウィンザー卿に続いて自分も、という勢い任せなのは分かりましたが――むしろ私はあの一連を見たことにより、決めていた応えをより強く意識しました。
“自分の人生に何をするかは、私の人生なのだから私が決めます”
「――婚約はお受けできません。謹んで辞退申し上げます……」
思いっきり絶望し、頭の上から青いペンキでも被ってそれが侵食している色のようになっていくウィリアムの顔色――。でもきっと説明しても理解はされないでしょう。特にこのお坊ちゃんでは。他人に分からないことは、どうあってもどう言っても交差しない線になることはあるのですから。
さて流石に婚約破棄を告げた後にまでここにいるのは気まずいというか……帰りますか。そして早く旅の準備をしなくては。伯母さまは昔使われていた大きなボストンバッグ、まだお持ちかしら……。
「くくくく、兄上、振られてやがりますね、笑える」
すっといつのまにかマーガレットが近づいていました。こんなに静かに近づけると思っていなかったので別の意味で驚きます。
「あ! 分かった、こいつのせいだろう!?」
……はい?
「うちのおてんばか妹のことが問題なのだろう! これは数年もすれば嫁ぎ先に消えるものだよ!」
「は? え? いえ、誰です? おてん、なんです?」
いえよく分かりませんが理由を説明するのは無意味に感じられてならないのです……。
「父上ー! あほ娘の妹はエライザさまに紹介しないのですか!」
ダンスをやめてすっかり歓談に華を咲かせていた大人2人に、ウィリアムが声をかけます。ああ、こういう所も本当に――。
「そうしたいのはやまやまなのだが息子くんよ、マーゴ※はどこに行ったんだ?」※マーガレットの愛称
「この道化の馬鹿娘のことですか、父上」
マーガレットはその年齢の平均より背が低いのですっかりウィリアムの陰に隠れてしまっていました。
「ん? マーゴ、お前はそれは、特注のドレスはどうしたのかな」
「あんぽん娘はリゼット嬢をあごで使って流行りのデザインだかに取り換えさせたんですよ」
あんぽんたんというのはおばかさん、という意味だったのでしょうか。そしてさっきのは? おてんばか……? 造語でしょうか、隠語ですか?
――ここで伯母さまががっかりするかと思えば、ふぅむ? と周りを見回し、リラ・デュークがあのドレスを身に着け引く手数多になっている様子と、彼女に渡した私の髪飾りに気づいたようでした。
……ばれてしまったようですね。
しかしマーガレットの方は慌てて嘘八百でも並べるのかと思いましたら、こちらも様子が違いました。
「やっぱりこのドレス、結構質が悪いわね――。でも何でもかんでも、お母様がいないからって面倒を見てやらなきゃ? ドレスも見繕ってやろうって? 冗談でしょ! 兄さんがわたくしにそんなことしてみせてるのは、結局そういう自分に酔っているだけっ! わたくし自身がどんなに決めたいことでも先回りしてぜーんぶ思い通りにしようだなんて、そんな業腹なこといい加減にして貰えるかしらっ!」
マーガレットが恐ろしい勢いで兄であるウィリアムにまくしたてます。
「本当はあの品の良いドレスだって着たかったのだから‼ でも兄さんがお父様に言づけたと聞いたら、あまりに腹立たしくて、あんな風にするしかなくなってしまったってことよ!」
おやまあ。マーガレットにそのような事情があったとは露知らずに、私もまだまだですわね。
「兄妹仲はそこそこ良いものかと思っていた父、ショック。私は自分が情けないですよエライザ、すみません私は子育て失格であったようです」
「……まあそれは――将来にやってくる結果が親の評価だといいますし。まだ決まったことではありませんわ、恐らく。それよりもマーガレット、私があなたをマーゴと呼んで母親ぶってみせたら、どう思うかしら?」
マーガレットは少しだけ顔を傾けて言いました。
「別に、それはそんなに気になりませんわ。猫被りの兄に比べたらなんにも」
えっと……。これは――私はもしかして、図らずも大きな命拾いをしたのでしょうか。
「でぇも、これで後継者としての威厳は思い切り下がりましたわねっ! もうそうそうは偉そうに振る舞えないのではないのかしら! だぁってあんまりにも恥ずかしい、そう、醜聞になってしまう類の事ですものねっ! あはは情けなーい!」
「ウィリアムさま。私が婚約をお断りしたのは、別の理由ですわ。ただ……そこまでマーガレットを虐げていたとは存じませんでしたが……」
え、は、いやっ! と言葉にも言い訳にもならない言葉を叫んでいるウィリアム。
「どうせきみはうちの格式に慄いた程度の事なんだろう! それなら私の方もお断りですよ。私は慈悲深いのでね、無駄な噂は流さないでおいてあげますよ。しかし本当に瘦せ我慢をしているんじゃないでしょうね、後から泣きつかれてもどうにもしてやれませんよ?」
……思っていた以上に小物でしたか。ふぅ、良かった。しかも今の自分の決断が正しかったようだと分かるのが、随分と早かったですね。
「くくっ。兄、強がって苦し紛れの言い分は見苦しいですわよ。噂が流れて困るのは兄さんでしょう? それにしてもリゼットお姉さま、とってもすっきり致しましたわっ! 多大な感謝を申し上げますの」
こちらからもお礼なぞ言ったら今は火に油かしら。でも本当に誰もがどのくらい多面性を持っているか分からないものですのね。
「おい、俺と結婚しなかったらリゼットはお前の義姉さんにはならんぞ」
「ふふふふ、本当に救いようがないですわねえっ!」
マーガレットが邪悪ながら、心から楽しく笑っている姿を初めて見た気がしました。
「ああ兄は本当に浅慮で仕方のない! わたくしはリゼット様を年上の広い意味でのお姉さまとお呼びしているの。以前から、この先もね。でも兄は永遠にただのくだらない破局相手の男よ! 笑えるぅ」
――さて。挨拶もそこそこにもう二度とこういった場所に来ることさえ無いのかも知れませんが、私は決めた場所に行かなくては。はっきりとこの場所、とは決めてはいませんが目的の場所は見えているのですから。
✙親愛なる“何者でもない”ただ一人のリゼットへ✙
あなたが旅立ったあとは結構いろいろと大変ではあったのよ。
わたしの父母――まあ、あなたの祖父母に至っては、やっと行き遅れが片付いたとか、肩の荷が下りただのとまた勝手なことばかりを言ってくるけれど聞き流しているわ。
ウィンザー卿は――ええ。そうね、夫のウィリアムは……本当に優しくて面白い人。そしてなんと裁縫と受注生産を認めてくれているの。理解があるわ。この年齢の男性にしては珍しいわよね。
そもそもウィンザー家で一番問題があったのは、あなたが逃げ切ったのが大正解の長男のウィルJrの方だったの。時間があるからわたしはマーゴの家庭教師もしているのだけれど、余計な邪魔をもっともらしいことを言って遂行するのですもの。あれではマーゴが我儘散らかして……それだってどこまで演技だったのかも、よくわからないわ。あの子はわたしを母親みたいに扱ってくれるから。
あなたの居場所についてはもちろん散々、あなたの母親であり私の愚妹シルビアから詰められましたとも。結婚したからっていい気にならないで、リズはわたしの娘なのだから返して頂戴ですって。わたしの所に通っていた頃は何一つ見向きもしなかったのにね。
だからはがきが来るだけでそれ以上は何もって、あなたがいつも2枚送ってくれる絵しか描かれていない方を見せているわ。
誰も彼も勝手なものよね。
でもきっとわたしとあなたも誰かから見れば勝手なの。それだけのことなのよね。
“修行”はどうかしら、きっと厳しいのだろうけれどあなたはそれを選んだのだし。
苦難の中、今は好きじゃないと否定している部分が、こういうこともあるのだわって好意的に納得出来たりしてくる時も来るわ。物事も気持ちも、たくさんの事柄が空の色のように変化してしまうのだから。
価値観も変わるの、良くも悪くも。今やっていることが嫌いになった気がしてしまっても、いつか楽しい記憶と折り重なってもっと飛躍出来たりすることもあるの。予想をはるかに超えていく事象は、やっぱり存在するのね。
これから色んなものを見て色んなことを経験してきて。わたしの知らないものも、新しい時代も自分の足で歩いて行って欲しいわ。できれば輝いていて欲しい。何も無いと思ってしまったとしてもね。
たとえ寂しくなっても、わたしはあの家も残して貰っているから帰る場所はきちんとあるわ。その時にはあなたの“修行”の腕前も見せて頂戴ね。女性がやる仕事じゃないなんて時代錯誤なことをJrは言っているけれど、あれだけうっかりのあなたが家で失敗作を見せたことはなかったわ。だからきっと叶うわよ。
どうあったって本当にどう転ぶか人生は分からないものだって実感しかないの。わたしの恋は実ってくれて、手に職もある。時にはうっかり泣きたくなる時もあるけれど――消えない傷は、どうしてもあるのだから。
それでもごまかして、楽しく生きていけるわ、わたしもあなたも。
最愛の親友・リゼットへ エライザ・M・バークレー
――追伸
あなたが置いていったあの“へんてこな帽子”はきちんとあの家の棚に飾ってあるから安心して頂戴ね。
まさか1話が短い回があったとはいえ10話までなんちゃって令嬢口調を続けているとは想定外でした(笑)。なるべくボケとかツッコミみたいなのを入れよう! と意識してみていました。ユーモアといえばセンス良く聞こえますが、笑えるようなテンポのよい、もう芸人さんの掛け合いみたいなのを書きたいです(笑)。当然、難易度は高いのですが……精進あるのみですかね。知的な漫才とかが結構好きなので。
ここまでお読みくださった方々ありがとうございます! どこまで令嬢口調が合っているのか、似非関西弁みたいになっているのかな、とか思ってびくびくしています(笑)。コメントなどで指摘してください(;^_^……。
次作の構想はありまして、さすがに現代日本が舞台ですが主題的には暗くなるかなあと。いや、芸人風に書くのでした……そうでしたか? ジャンル的には事件系でしょうか、11月中頃には連載し始めようと思います。さすがに整えてからでないとですね(;´Д`A 完結はしているので再構成・推敲・校正の繰り返しから始めます。再びお付き合い頂けるとさいわいです。それでは今回のリゼット嬢とエライザ伯母さまのお話はここら辺で幕引きとなります。タイトル回収出来たと思います!
本当にありがとうございました!




