お盆に帰省(5年後)
この2話目は、私が以前九州弁で書いた短編ホラーを、標準語に書き換え投稿しています。
主人公は、母なら、こんな風に言ってるだろうな~と、思っています。
幽霊では、ありません。
1年に1度の里帰り。今年もお盆に1週間。
「ただいま、お母さん、帰って来たよ」
私は、仏壇の前で、手を合わせる。
『お帰り、小百合。飛行機で来たんでしょ。大変だったね』
母が居たなら、たぶんこんな風に、返事をかえしてくれる。
「飛行機で帰って来たよ。大変だったー。着陸の時、気圧の変化で左顔が痛くてね。副鼻腔炎の薬は飲んでるんだけどね」
私は、母の遺影を見ながら話している。
『それは、大変だったね、今はいいの?』
母は、絶対、私の体の心配をしている。
ぶぶぶー
「チッシュが手放せないよー。お土屋買って来たよ。ここに置いておくね」
私は、仏壇の横に、母が好きだった煎餅をお供えした。
その日の夕食後、キッチンと繋がった居間で寛いでいると、
ポタ、ポタ、ポタと水の音が聞こえる。キッチンに確認に行くと、蛇口から水滴が落ちていた。
蛇口を捻り、ちらっと横を見ると、やかんが火にかけてあった。
「あ!やばい、お湯沸かしてたんだった」
私は、慌ててガスコンロのツマミを回し、火を止めた。
『もう、危なかったー。小百合は、また忘れて。火事になるところだったよ。気を付けなさい』
母が知らせてくれたんだろうか。
夜になり、座敷の布団に移動する時、廊下の蛍光灯が、ピカ、ピカピカ、ピカと点滅。
「接触が悪いなー。そうだ、寝る前にトイレに行こう」
『そうそう、寝る前はトイレに行きなさい。夜中に起きるよ』
母が、私に子供の時から言っていた口癖がよみがえる。
トトトトトトトトト
「何の音?虫?」
夜中に寝ていたら、窓に何かが当たる音がする。
うつらうつら目を開け、窓の方を見た。
2燭光が照らす薄暗いオレンジ色の座敷。クーラーが効いた室内。窓は障子が閉まっており見えない。
「ん~。寝る前、窓が閉まってることを確認したから、虫は入って来ないよね」
私は、お腹にタオルケットをかけなおし、目を閉じすぐに眠りに落ちた。
『部屋が寒い。この子は、また寒いのにお腹出して寝てる、風邪をひくよ』
母がやさしい顔で タオルケットを私に掛けてくれる夢を見た。
お盆休みの一週間が終わり、都会に帰る日。
「本当にお世話になりました。ありがとう。元気で過ごすから心配しなくても大丈夫。
お母さん。またね」
私は、仏壇の前に座り、手を合わせた。
お付き合い下さり。ありがとうございました。




