お盆に帰る
誰にでも起こりえるかもしれない体験3
私は昔、高校を卒業してから、ド田舎から都会に上京して就職した。
この夏、お盆に連休が取れて、一年ぶりに帰省した。
「ただいま、お母さん。帰って来たよ」
「おかえり、ともみ。飛行機やったとやろ、大丈夫たったね」
「飛行機で帰って来たとけど、大変やったー。離陸はよかったとばって、着陸がねー。雨の降っとったやろ、気圧の変化で左顔の痛かったー。副鼻腔炎の薬ば飲んどったとけどね」
「それは、大変やったね。今はよかとね」
「ぶぶぶー。チッシュの手放せんと。お土産買ってきたばい、ばんかくの煎餅とへんば餅。美味しからしかー、ここに置いとくけんね」
その日の夕食後、キッチンと繋がった居間で寛いでいると
「ポタ、ポタ、ポタ、ポタ、ポタ、ポタ」
「ともみ、蛇口ば、しっかり閉めとらんやろー。音のすっばい、見てこんね」
居間の畳でテレビを見ていたお父さんが、スマホに夢中の私に言う。
「え?ホントだ、水の音がする。止めてくっけん」
私は、キッチンに行って蛇口を捻った。ちらっと横をみると、やかんが火にかけてある。
「あ!やばい。お湯沸かしてたんだった」
私は慌てて、ガスコンロのツマミを回し、火を消した。
ヤカンの蓋を開けると、沸騰したお湯が少ししかない。気付かなかったら空焚きする所だった。助かった。
「危なかー。もう、ともみは、また忘れて。火事になるとこやったばい。気をつけんばー」
夜になり、寝床の座敷に移動する時、玄関の明かりのスイッチを押した
「・・・・・。ピカ。・・・・ピカ。・・・ピカ、ピカ。ピカ」
「明かりが点かない。接触が悪いのかな。そうだ、座敷に行く前にトイレしとこ」
私は、寝る前のトイレをすませた。
「そうそう。寝る前はトイレに行っとかんば、夜中に起きるばい」
「ト、ト、ト、ト、ト、ト、ト、ト、ト、ト、ト、ト、ト、ト、ト、」
「何の音?虫?」
夜中に寝ていたら、窓に何かが当たる音がする。
うつら、うつらする瞼を、無理やり開け、窓の方を見た。
2燭光が照らす薄暗いオレンジ色の座敷。クーラーが効いた室内。
障子が閉まっており、窓は見えない。
「ん~。寝る前、窓を閉めた事は確認したから、虫は入ってこないよね」
私は、お腹に布団をかけなおし、目を閉じすぐ眠りに落ちた。
「部屋の寒かー。この子は、また、寒かとにお腹ば出して寝とる。
タオルケットば掛けんね、クーラーの設定温度ば上げんね。風邪引くばい」
お盆休暇の一週間が終わり、都会に帰る日。
「お世話になりました、ありがとう。元気で過ごすけん、心配せんでもよかよ。またね、お母さん」
私は、仏壇の前に座り、線香を立てて祈った。
読んでいただき、ありがとうございました。でも、是非2回続けて読んで下さい。見方が変わります。
今回の話は、実体験です。母の声は実際には聞こえていませんが・・・そう言ってるだろうなと思います。




