お盆に帰省。
「ただいま~。帰って来たよ~」
「小百合お帰り~」
実家の玄関で、母と抱擁。
都会から、飛行機に乗り、バスを乗り継ぎ、田舎の実家に1年ぶりに帰省した。
毎年1回、お盆になったら帰省している。これで12回目の帰省だ。
母との抱擁も12年目。
本当に心から嬉しいと溢れんばかりの笑顔で、私を抱きしめる母。
こんなに、お母さん細かったっけ・・・。
カレンダーには”さゆりかえる♡”と、へなへなの字で書いてある。
12年前、私が都会に就職する時は、ふくよかだった母は、数年前に脳梗塞を患い、右半身麻痺。
何とかトイレや着替えは一人でできるが、炊事、洗濯など日常生活は父の手を借りている。
最近は食が細くなり、ほとんど外出せず過ごしているらしい。
夏の初めに熱中症で救急搬送されたと聞いていた。
「小百合、元気だった。ちゃんと食べてるの」
「食べてるよ、体見て~、また太ったみたい」
「ふふふ。そうね。ちょっとやせた方がいいね。熱いからクーラーのある部屋に入ろう。
冷えたスイカがあるよ、切って食べて~」
太ったと言うくせに、私を食べ物でもてなそうとする母は、右足を引きずり、柱に捕まりながら進んでいる。
その夜は、私が作った、皿うどんを食べて、家族水入らずで過ごした。
7日間の盆休みはあっという間。
家をすみずみまで掃除して、冷蔵庫、洗濯機も綺麗に。お墓も掃除して、お墓参り。
都会に戻る朝、涼しい時間帯に、母と車で近くの海に散歩へ。
母は私に支えられながら数歩しか歩けないけど、久しぶりの海風を受けて、嬉しそうに、寂しそうに微笑んでいた。
「7日間は早かったね~。忘れ物はない?気つけて、健康に過ごさんね」
「それは、お母さんやろ。体に気を付けてね。無理したら駄目よ。ありがと・・・またね」
母は、玄関から道路に出て、私が角を曲がるまで手を振っていた。
私は、バス停に向かいながら、一生懸命涙をこらえていた。
12年間続いたいつものセリフがなかった。
『また来年、お盆に帰って来るとやろ、気をつけて、健康に過ごさんね。またね』
もう母との来年の予定はないの?、母から、さよならと言われた気がした。
3か月後、突然、母の訃報が届いた。
帰省し、白い棺桶の中の母と対面。
やっはり、さよならは言わない。
「またね、お母さん」
本当は短編の予定でしたが、間違えて連載にしてしまいました。
設定で、連載が変更できなかったので、もう一話載せて本物の連載にします。




