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トップを越えろ!2  作者: たむ


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第73話「終焉の向こう側」

終焉工程は停止した。


銀河を覆っていた黒い波は静まり、崩壊しかけていた星々も、わずかな安定を取り戻していく。


人類艦隊には歓声が広がった。


「止まった!」


「終焉工程、停止確認!」


「助かったんだ……!」


誰かが泣き、誰かが笑った。


長い戦いの終わりが見えたように思えた。


だが――。


宇宙創造領域の最深部。


ソラは違和感を覚えていた。


「……まだ。」


GF-Ω INFINITYの創生炉が、静かに警鐘を鳴らす。


真核もまた、白い光を震わせた。


《観測不能領域》


《存在確認》


《記録なし》


レイが低く呟く。


「何だ。」


ミナトの声が震える。


「そんなはずは……。」


「VOID ARCHITECTのさらに奥なんて……。」


暗闇だった。


光もない。


終わりも始まりもない。


宇宙そのものが生まれる以前の“空白”。


そこに、何かがいた。


鼓動。


一度。


また一度。


静かに。


けれど確かに。


真核が初めて恐怖を滲ませる。


《観測者以前の存在》


《終焉以前の存在》


《名称……なし》


ソラは息を呑んだ。


「創造主より前……?」


その存在は、形を持たなかった。


巨大でもない。


小さくもない。


ただ“在る”。


宇宙という概念の外側に。


始まりも終わりも知らないもの。


《我らもまた、観測対象だった》


真核が呟く。


《我らは創造主ではない》


《ただ、宇宙を託された管理者だった》


ソラは目を見開いた。


「じゃあ……。」


レイが続ける。


「さらに上位の存在がいるのか。」


鼓動。


空白が揺れる。


そして、声が響いた。


それは言葉ではなかった。


だが、誰もが意味を理解した。


《なぜ、続ける》


ソラは、少しだけ笑った。


「またその質問?」


涙で濡れた顔のまま。


それでも前を向く。


「好きだから。」


「怖いけど。」


「苦しいけど。」


「続きが見たいから。」


空白は沈黙する。


《理解不能》


ソラは頷く。


「うん。」


「でも、それでいい。」


INFINITYが一歩前へ出る。


創生炉が静かに燃える。


恒星炉が暖かく脈打つ。


NOVA核が、優しく光る。


「私はアマミヤ・ソラ。」


「人間。」


「負けたし。」


「泣いたし。」


「何回も間違えた。」


少し笑う。


「でも、まだ続きたい。」


空白が揺れた。


宇宙そのものが息を呑む。


終焉の向こう側。


そこには敵も味方もなかった。


ただ、問いだけがあった。


《もし継続が、更なる苦痛を生むとしても?》


「生きる。」


《もし再び滅びるとしても?》


「生きる。」


《もし愛するものを失うとしても?》


ソラは涙を拭った。


「悲しい。」


「でも。」


「それでも、また誰かを好きになる。」


長い沈黙。


やがて。


空白は、わずかに揺れた。


《……観測継続》


真核が震える。


VOID ARCHITECTは静かに呟いた。


《我らもまた、観測を続ける》


《終焉は保留される》


ミナトの声が途切れそうになる。


「……勝ったのか?」


レイは静かに答えた。


「違う。」


「まだ終わっていない。」


ソラは空白を見つめた。


「うん。」


「たぶん、これからも終わらない。」


「でも。」


INFINITYの拳を握る。


「だから、明日がある。」


宇宙創造領域に、初めて静かな光が満ちる。


終焉の向こう側。


そこには完璧な答えはなかった。


けれど。


続きを選ぶ意志だけは、確かに存在していた。


そして。


アマミヤ・ソラは、小さく笑った。


「トップを越えるって。」


「終わりの向こうに行くことだったんだね。」


誰も知らない宇宙の最深部で。


少女と創造主と、そのさらに向こうにある空白は。


同じ未来を見つめ始めた。

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