第68話「恒星炉起動」
INFINITYの胸で、星が生まれた。
それは本物の恒星ではない。
だが、恒星と同じ熱を持ち、同じ重力を持ち、同じ光を放っていた。
人工恒星炉。
GF-Ω INFINITYの第二心臓。
ミナトが叫ぶ。
「恒星炉、起動確認!」
「創生炉との二重同期、開始!」
レイが言う。
「危険域か。」
ミナトは答える。
「危険域なんてとっくに超えてる!」
ソラは、光の中心で目を開いた。
「……あったかい。」
胸の奥で星が燃えている。
それは破壊の熱ではない。
生きるための熱だった。
VOID ARCHITECTが迫る。
黒い構造体から、無数の終焉槍が放たれる。
INFINITYは片腕を上げた。
恒星炉が輝く。
白銀の掌に、小さな太陽が宿る。
ソラが静かに言う。
「燃やすんじゃない。」
「照らす。」
INFINITYの掌から、恒星光が広がった。
黒い終焉槍が、光の中でほどけていく。
消滅ではない。
情報へ戻り、青い粒子となって銀河へ散る。
DENEBが震える。
「敵の終焉情報を……再変換してる?」
ミナトが呟く。
「終わりを、始まりの材料にしてるんだ。」
VOID ARCHITECTの本体が大きく揺らぐ。
その奥で、さらに巨大な影が開く。
全宇宙終焉工程。
本格起動。
ソラはINFINITYの拳を握る。
「来るなら、来て。」
恒星炉がさらに燃える。
「こっちは、星を抱えてる。」
INFINITYが突撃する。
拳に恒星光。
背に創生炉。
一撃。
VOID ARCHITECTの外殻が砕ける。
二撃。
黒いリセット波が押し返される。
三撃。
銀河中心に青白い夜明けが広がる。
レイが静かに言う。
「押している。」
ソラは答える。
「うん。」
「でも、まだ足りない。」
VOID ARCHITECTの奥。
宇宙の外側が開いていく。
そこには、次の宇宙の種があった。
リセットが始まれば、現在宇宙は材料にされる。
ソラは恒星炉の光を見つめた。
「星は、燃え尽きる。」
「でも。」
INFINITYの目が輝く。
「燃えてる間に、誰かを照らせる。」
恒星炉が最大出力へ向かう。
ミナトが叫ぶ。
「ソラ!出力を上げすぎるな!」
「炉心が星化する!」
ソラは笑った。
「じゃあ、星にならない程度にする!」
「その感覚で制御するな!!」
INFINITYが両腕を広げる。
恒星光が銀河中心全域へ広がる。
崩壊しかけた星々が照らされる。
消えかけた記録が戻る。
人々の声が、再び銀河リンクへ灯る。
ソラは呟く。
「まだいる。」
「まだ、みんないる。」
INFINITYは、ただ敵を倒すための機体ではなかった。
失われかけた宇宙を、もう一度照らすための巨神。
VOID ARCHITECTが沈黙する。
そして初めて、明確な問いを放つ。
《なぜ、終わりを拒む》
ソラは答えた。
「終わりが嫌なんじゃない。」
「勝手に終わらされるのが嫌なの。」
恒星炉が輝く。
「終わるなら、自分たちで決める。」
「続くなら、自分たちで歩く。」
INFINITYの拳が、創造主の中心へ向けられる。
恒星炉、完全起動。
人類は、終わりの闇に星を灯した。




