第66話「最終計画」
敗北のあとに残ったものは、沈黙だった。
銀河外縁防衛線は崩壊。
COSMOSは大破。
人類艦隊は半数以上を喪失。
守れなかった星もあった。
それでも、人類はまだ消えていなかった。
司令艦アルゴス。
司令官は、最後の作戦命令を出した。
「Ω計画を発動する。」
会議室が静まり返る。
ミナトが言った。
「GF-Ω INFINITYは、兵器じゃありません。」
「宇宙創生炉そのものです。」
「起動に失敗すれば、VOID ARCHITECTより先に宇宙を壊します。」
司令官は答える。
「分かっている。」
「だが他に道はない。」
ソラは、壊れたCOSMOSの中でNOVA核に触れていた。
青い光の奥から、巨大な設計図が浮かぶ。
全高十二キロ。
恒星炉ではない。
ビッグバン炉でもない。
宇宙創生炉直結型重力神機。
GF-Ω INFINITY。
レイが静かに言う。
「乗るのか。」
ソラは少し笑った。
「乗らないと、終わっちゃうでしょ。」
「戻れないかもしれない。」
「うん。」
それでも、ソラは前を見た。
「でも、今戻ったって、帰る宇宙がなくなる。」
ミナトは歯を食いしばる。
「INFINITYはCOSMOSより危険だ。」
「人類全体で支えても、ソラの意識が炉に飲まれる可能性が高い。」
ソラは頷いた。
「じゃあ、飲まれる前に使い切る。」
ミナトが叫ぶ。
「そういう問題じゃない!」
ソラは笑った。
「でも、そういう問題にするしかない。」
銀河各地で、残存GFが再接続を始める。
壊れたSPICA。
半壊したARES。
砲身を失ったZEUS。
盾を砕かれたCRONUS。
まだ動けるものは、すべてINFINITY起動のために力を送る。
司令官の声が全銀河へ響く。
「人類は敗北した。」
「だが、敗北は終わりではない。」
「これより最終計画を開始する。」
銀河中心。
崩壊しかけた空間の奥で、巨大な封印構造が開く。
そこに眠っていたのは、白銀の巨神。
GF-Ω INFINITY。
長い沈黙を破り、その目が青く灯る。
ソラは深く息を吸った。
「行こう。」
「負けた先へ。」
VOID ARCHITECTが迫る。
終焉工程は進み続けている。
だがその前に、人類最後の神機が立ち上がる。
最終計画。
それは勝つための作戦ではない。
終わりを越えるための作戦だった。




