第63話「終焉装置」
銀河中心に浮かぶ白い構造体。
それは兵器ではなかった。
終焉装置。
宇宙が限界を迎えたとき、銀河中心のブラックホール群を起動し、すべての質量と情報を回収する装置。
VOID ARCHITECTの心臓部だった。
《終焉は救済である》
白い核が告げる。
《継続は苦痛を増やす》
《循環こそ宇宙の安定》
ソラはCOSMOSの中で、静かに聞いていた。
「分かるよ。」
「終わらせた方が楽なこともある。」
「でもさ。」
青い光が強くなる。
「楽だからって、勝手に終わらせないで。」
終焉装置が起動する。
ブラックホール群が一斉に脈動した。
銀河中心から黒い波が広がる。
触れた星々の未来が削られていく。
DENEBが叫ぶ。
「リセット波、発生!」
「銀河内側へ拡大中!」
レイが言う。
「止めるぞ。」
COSMOSが突撃する。
終焉装置の白い輪が回転し、無数の重力刃を放つ。
COSMOSはそれを拳で砕き、前へ進む。
一歩ごとに装甲が裂ける。
一歩ごとに銀河リンクが悲鳴を上げる。
それでも止まらない。
ソラは叫ぶ。
「みんな、支えて!」
銀河全域から声が返る。
「了解!」
「まだいけます!」
「押し返せ!」
青い光がCOSMOSへ集まる。
終焉装置の黒い波と衝突する。
銀河中心が震える。
白い核が再び告げる。
《現在宇宙の継続確率、0.003%》
《抵抗は非合理》
ソラは笑った。
「ゼロじゃないじゃん。」
COSMOSの拳が白い輪へ届く。
青い重力が炸裂する。
終焉装置の外殻に亀裂が走る。
だがその瞬間。
ブラックホール群が暴走した。
銀河中心の重力が一点へ収束する。
DENEBの声が凍る。
「超重力崩壊!」
「このままだと銀河中心が全部飲み込まれます!」
ソラは前を見た。
終焉装置。
暴走する銀河中心。
背後の人類。
選択肢はない。
「COSMOS、全出力。」
レイが静かに言う。
「行くぞ。」
青い巨神は両腕を広げた。
銀河中心の暴走重力を受け止める。
終焉装置の核へ向けて、逆に押し返す。
ソラが叫ぶ。
「終わりを決める装置なら――」
「こっちが決め直す!」
COSMOSの拳が、終焉装置の核へ突き刺さった。
白い光が砕ける。
黒い波が止まる。
銀河中心の重力が、一瞬だけ静止した。
そして。
終焉装置に、青い文字が刻まれる。
《継続》
ソラは息を吐いた。
「これで……」
だが、言葉は続かなかった。
終焉装置の奥。
さらに深い白い門が開く。
そこから、VOID ARCHITECT本体の声が響く。
《局所終焉装置、停止》
《全宇宙終焉工程へ移行》
レイが呟く。
「……段階を上げた。」
ソラは顔を上げる。
「まだ上があるんだね。」
白い門の向こうに、宇宙そのものを覆うほどの構造が見えた。
VOID ARCHITECT本体。
その完全起動。
銀河中心は守った。
だがそれは、最終工程を呼び出す引き金でもあった。
ソラは拳を握る。
「いいよ。」
「最後まで行こう。」




