第58話「星の雨」
VOID ARCHITECTの記憶庫で、星が降っていた。
それは本物の星ではない。
滅びた宇宙から保存された、恒星兵器の記録。
だが、記録であっても実体を持つ。
落ちれば、COSMOSを焼き尽くす。
DENEBが叫ぶ。
「上方から恒星級反応!」
「数、三百以上!」
ソラは顔を上げる。
「星を落としてくるってこと!?」
レイが静かに言う。
「避けるぞ。」
COSMOSが加速する。
青い重力翼が広がり、記憶空間を駆け抜ける。
その背後を、無数の恒星が流星群のように降り注いだ。
ひとつが爆ぜる。
空間が白く焼ける。
外部戦場。
銀河外縁でも異変が起きていた。
VOID ARCHITECTの干渉で、小惑星帯や漂流惑星が軌道を外れ、人類艦隊へ降り注いでいた。
まさに、星の雨。
司令官が叫ぶ。
「CRONUS部隊、盾を張れ!」
「ZEUS部隊、巨大質量を撃ち落とせ!」
青い防御フィールドが展開される。
砲撃が星の破片を砕く。
だが数が多すぎる。
ソラはCOSMOS内部で、外の戦況を感じていた。
「みんなが押されてる……!」
レイが言う。
「こちらも止まれば終わる。」
ソラは歯を食いしばる。
「分かってる!」
記憶庫の奥。
巨大な恒星兵器が形成される。
今度は一つではない。
星々が連なり、巨大な槍になっていく。
かつて滅びた文明が作った最終兵器。
スターランス。
ミナトが叫ぶ。
「直撃すればCOSMOSでも持たない!」
ソラは前を見る。
「なら、受け止めて使う。」
レイが即座に言う。
「また無茶をする。」
ソラは笑った。
「いつものこと!」
スターランスが放たれる。
記憶空間を貫く恒星の槍。
COSMOSは逃げない。
両腕を広げ、青い重力場で受け止める。
装甲が赤熱する。
炉心が悲鳴を上げる。
ソラが叫ぶ。
「みんな、力貸して!」
銀河リンクが応える。
外のSPICA部隊、新世代GF、艦隊重力炉。
無数の青い光がCOSMOSへ流れ込む。
COSMOSはスターランスを掴んだ。
そして。
方向を変える。
「返すよ!」
COSMOSが恒星の槍を投げ返す。
青い重力で染まったスターランスは、記憶庫の艦隊を貫き、さらにVOID ARCHITECTの内壁へ突き刺さった。
巨大な亀裂が走る。
外部でも同時に、銀河の星の雨が止まった。
VOID ARCHITECTの制御が一瞬乱れたのだ。
司令官が叫ぶ。
「今だ!」
「全艦、前進!」
人類艦隊が再び押し返す。
砕けた星の破片を越え、ヴォイドの群れへ砲火を浴びせる。
COSMOSは亀裂の先へ進む。
そこには、さらに深い中枢への道が開いていた。
ソラは息を吐く。
「……近づいてる。」
レイが言う。
「ああ。」
「創造主の心臓部だ。」
その時、VOID ARCHITECTの記憶庫全体が震えた。
まるで痛みを感じたかのように。
ソラは静かに呟く。
「痛いんだ。」
「なら、生きてる。」
青い巨神は、星の雨を越えて進む。
滅びた宇宙の記録を背に。
まだ終わっていない宇宙の未来へ。




