第54話「合体実験」
合体は、完了していなかった。
COSMOSは起動した。
戦場で戦い、VOID ARCHITECTを押し返した。
だがそれは、まだ仮の姿だった。
本来のCOSMOSは――
銀河全域のGFネットワークと完全同期することで完成する。
銀河防衛機構・統合試験宙域。
そこには、数千機のSPICAと新世代GFが集められていた。
中心に立つのは、GF-Σ COSMOS。
その周囲を、無数の青い光が取り囲む。
ミナトの声が響く。
「これよりCOSMOS計画、第三同期試験を開始する。」
「目的は、GFネットワークとCOSMOSの完全合体。」
ソラが苦笑する。
「完全合体って、なんかすごい響きだね。」
レイが言う。
「実際すごい。」
試験開始。
SPICA部隊の重力炉が順に点火する。
ARES、ZEUS、CRONUS、MNEMOSYNEも同期に入る。
青い光が線になり、COSMOSへ集まっていく。
最初は安定していた。
だが、すぐに異常が出た。
DENEBが叫ぶ。
「同期波、乱れています!」
「外縁部のSPICAが負荷に耐えられません!」
ミナトが歯を食いしばる。
「出力を下げろ!」
だが、VOID ARCHITECTは待ってくれない。
試験宙域の外側に、黒い影が現れる。
VOID-GF NULL。
さらに、その量産型。
黒いGFの群れ。
レイが即座に反応する。
「敵襲。」
ソラが目を細める。
「実験中に来るとか、空気読まないね。」
ミナトが叫ぶ。
「合体試験を中断する!」
ソラは首を振った。
「しない。」
「このままやる。」
NULL部隊が突撃する。
SPICA部隊が迎撃に出るが、同期中で動きが鈍い。
黒い刃が青い機体を狙う。
その瞬間、COSMOSが腕を伸ばした。
重力場が広がり、SPICA部隊を守る。
ソラが言う。
「守りながら合体する。」
ミナトが叫ぶ。
「そんな器用なことできるか!」
ソラは笑う。
「やるんだよ!」
COSMOSが動く。
敵を殴り、味方を支え、同時に銀河GFネットワークへ意識を伸ばす。
レイが機動制御を引き受ける。
「右は任せろ。」
ORIONが砲撃管制を安定させる。
ALTAIRが防御を張る。
DENEBが同期波を調整する。
一つずつ、光が繋がる。
SPICA部隊のパイロットたちの声が届く。
「こちら第三小隊、同期可能!」
「第八小隊、まだいけます!」
「外縁義勇隊、接続します!」
ソラは歯を食いしばりながら言った。
「みんな、無理しないで!」
返ってきた声は、明るかった。
「先輩こそ!」
「置いていかないでください!」
青い光がさらに広がる。
COSMOSの背に、新たな翼が形成される。
それは装甲ではない。
人類全体の重力リンクでできた、巨大な光の翼。
NULLがその中心を狙う。
黒い槍がCOSMOSの胸へ迫る。
レイが叫ぶ。
「ソラ!」
ソラは動かなかった。
「避けない。」
「ここで避けたら、同期が切れる。」
槍が届く寸前。
SPICA部隊が前に出た。
一機、二機、十機。
青い機体たちが重力盾を重ねる。
黒い槍を受け止める。
装甲が砕ける。
炉心が悲鳴を上げる。
それでも、退かない。
ソラが叫ぶ。
「やめて!下がって!」
少年の声が返る。
「約束しましたよね!」
「死なないって!」
SPICAの盾がさらに強く光る。
「だから、ここで生きて守ります!」
その瞬間。
同期が完成した。
COSMOSの内部に、数千の光が灯る。
人類の意思が、機体の構造へ組み込まれていく。
ミナトが叫ぶ。
「完全同期!」
「COSMOS第三形態、形成!」
COSMOSの姿が変わる。
八百メートルの巨体が、さらに巨大な重力輪を背負う。
周囲のSPICAと新世代GFが、まるで星座のように配置される。
一機のロボではない。
銀河規模の合体機動体。
ソラが目を開く。
「これが……」
レイが言う。
「完成形か。」
ソラは笑った。
「ううん。」
「まだ途中。」
COSMOSが腕を振る。
銀河GFネットワークから集まった重力が、黒いNULL部隊をまとめて押し返す。
VOID-GFが次々と砕ける。
NULL本体だけが残り、後退する。
ソラは前を見た。
「逃がさない。」
COSMOSの重力翼が広がる。
「みんなで――」
「行くよ!」
青い光が、試験宙域を貫いた。
NULLの片翼が砕け、黒い機体が闇へ消える。
実験は成功した。
だがそれは同時に、VOID ARCHITECTへ新たな情報を与えることでもあった。
敵は必ず次に対応してくる。
それでも。
人類は一歩進んだ。
COSMOSは、もう一機の巨神ではない。
人類全体が合体した姿。
小さな無数の命が繋がり、宇宙へ拳を届かせるための器。
ソラは静かに言った。
「これなら。」
「創造主にも届く。」




