第52話「新世代GF」
黒い人型ヴォイドが、銀河防衛線を切り裂いた。
それは怪物ではなかった。
群体でも、巨大な塊でもない。
明確に――
人類のGFを模倣した兵器。
量産型GF SPICA 部隊が迎撃に出る。
青い光を灯した数十機の機体。
だが黒い人型ヴォイドは速かった。
空間を折り、重力を蹴り、SPICAの懐へ潜り込む。
一撃。
SPICAの右腕が消える。
破壊ではない。
存在ごと削られた。
通信が乱れる。
「敵が速すぎる!」
「重力制御が読まれてる!」
「こちら第七小隊、支援を――」
声が途切れる。
ソラはCOSMOSの中で、拳を握った。
「……真似してきた。」
レイが言う。
「こちらの進化を観測し、対抗した。」
ミナトの声が割り込む。
「なら、こっちも次を出す。」
格納庫群。
建造中だった新型機の封印が解かれる。
量産型SPICAのデータを元に、各地のパイロット適性に合わせて再設計された機体群。
新世代GF。
火星圏から赤い機体が出撃する。
GF-06 ARES
高機動近接戦型。
木星圏から巨大砲撃機が起動する。
GF-07 ZEUS
超重力砲撃型。
土星リングから防御特化機が立ち上がる。
GF-08 CRONUS
広域防衛型。
そして外縁植民地から、観測・電子戦型が出る。
GF-09 MNEMOSYNE
記録固定特化型。
ミナトが言う。
「旧GF五機が核なら、新世代GFは枝だ。」
「NOVAやCOSMOSには及ばない。」
「でも、銀河全域に根を張れる。」
ソラは目を輝かせた。
「いいじゃん。」
「みんなで宇宙を掴むんだ。」
新世代GF部隊が戦場へ入る。
ARESが黒い人型ヴォイドと真正面から斬り合う。
ZEUSの砲撃が敵群をまとめて吹き飛ばす。
CRONUSが星系単位の重力盾を展開する。
MNEMOSYNEが消されかけた戦艦の記録を固定し、存在削除を防ぐ。
戦況が変わる。
SPICAだけでは押されていた防衛線が、再び持ち直す。
人類は進化していた。
だが、VOID ARCHITECTも止まらない。
黒い人型ヴォイドの中に、一体だけ異質な個体が現れる。
白い仮面のような顔。
背に黒い重力翼。
その重力パターンは――
NOVAに似ていた。
DENEBが叫ぶ。
「敵個体、NOVA核のパターンを模倣!」
ミナトが青ざめる。
「まずい……ソラの動きを学習してる!」
黒い機体が一瞬でCOSMOSへ迫る。
拳がぶつかる。
青と黒の重力が衝突する。
COSMOSが後退した。
ソラが息を呑む。
「強い……!」
レイが言う。
「名前が必要だな。」
DENEBが解析結果を表示する。
《敵識別名:VOID-GF TYPE NULL》
ソラは前を見る。
「ヌル……」
黒いNOVAのような敵が、静かに構える。
まるで鏡の中の自分。
NULLが動く。
COSMOSの重力機動を読んで先回りする。
攻撃の瞬間を潰す。
重力場を逆位相で打ち消す。
ソラは歯を食いしばる。
「私の癖まで読んでる……!」
レイが言う。
「なら癖を捨てろ。」
ソラは笑った。
「簡単に言うね!」
「君の口癖だ。」
COSMOSが姿勢を変える。
ソラだけで動かすのをやめる。
レイ、ORION、ALTAIR、DENEB。
五つの意思を完全に重ねる。
NULLが突っ込む。
だが、今度は読めない。
COSMOSの動きが変わった。
一人の天才の動きではない。
五人の選択が重なった動き。
ソラが叫ぶ。
「これが新世代だよ!」
COSMOSの拳がNULLを弾き飛ばす。
そこへ新世代GF部隊の砲撃が重なる。
NULLの黒い翼が砕ける。
だが、敵は消えなかった。
後退し、データを保存するように沈黙する。
ミナトが低く言う。
「学習された。」
レイが頷く。
「次はさらに強くなる。」
ソラは笑った。
「じゃあ、こっちももっと強くなる。」
銀河各地で、新世代GFが次々と起動する。
無数の青い光が、星々を繋ぐ。
人類はもう、一機の英雄だけに頼る文明ではなかった。
だが宇宙の外側では、VOID ARCHITECTが静かに観測を続けている。
人類が進化するたび、敵もまた進化する。
ソラは前を見た。
「進化勝負だね。」
レイが答える。
「ああ。」
「止まった方が負ける。」
銀河戦争は、機体と機体の戦いへ移った。
新世代GF。
VOID-GF。
そして、その中心に立つCOSMOS。
人類はついに、宇宙の管理者と同じ速度で進化し始めた。




