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トップを越えろ!2  作者: たむ


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第50話「太陽消滅危機」

太陽が、揺れた。


最初に異変を観測したのは、水星軌道の無人監視衛星だった。


光度低下、0.02パーセント。

重力波乱れ、基準値の七倍。

恒星核振動、異常。


そして三秒後。


太陽表面に、黒い影が走った。


地球圏司令部は凍りついた。


「太陽にヴォイド反応!」


「ありえない!敵は銀河外縁だぞ!」


観測官が叫ぶ。


「違います!」


「VOID ARCHITECTの干渉波が、銀河全域へ伸びています!」


銀河外縁の戦場。


ソラは通信を聞いた瞬間、息を止めた。


「太陽……?」


レイの声が低くなる。


「地球圏を狙ったか。」


ミナトが叫ぶ。


「太陽が消えたら、地球圏は終わりだ!」


VOID ARCHITECTは、戦場だけを攻撃しているのではなかった。


人類の中心。


帰る場所。


始まりの星。


その恒星を、消そうとしていた。


ソラの手が震える。


「そんなの……」


COSMOSの青い光が揺らぐ。


一瞬、戦場の重力制御が乱れる。


レイが叫ぶ。


「ソラ、落ち着け!」


ソラは歯を食いしばる。


「落ち着けるわけないでしょ!」


太陽の映像が映る。


黒い亀裂が、太陽表面に広がっていく。


光が吸われる。


熱が消える。


まるで太陽が、夜に食われていくようだった。


司令官が言う。


「COSMOSは本体を叩け。」


「太陽圏は地球艦隊が守る。」


ソラは反射的に叫ぶ。


「無理です!」


「太陽相手に、普通の艦隊じゃ――」


司令官の声は静かだった。


「それでも守る。」


通信が切り替わる。


地球圏。


旧式艦隊が太陽へ向かっていた。


地球防衛艦。

退役寸前の巡洋艦。

民間輸送船を改装した砲艦。


その先頭に、地球司令官の声が響く。


「こちら地球圏防衛艦隊。」


「太陽は我々が守る。」


ソラは声を失う。


地球艦隊は弱い。


銀河外縁の主力艦隊に比べれば、旧時代の遺物に近い。


それでも。


彼らは太陽へ向かっていた。


太陽表面から、黒い触手のような重力線が伸びる。


艦隊が砲撃を開始する。


光が黒い亀裂へ突き刺さる。


だが、効かない。


艦が一隻、光を失う。


次の一隻も。


ソラは叫んだ。


「私が行く!」


レイが即座に止める。


「ここを離れれば、VOID ARCHITECT本体が進む!」


「でも!」


「ソラ!」


レイの声が強くなる。


「全部は救えない。」


その言葉が、ソラの胸を刺す。


一瞬。


ソラは黙る。


そして。


「……違う。」


静かに言った。


「全部救う方法を作る。」


NOVA核が光る。


COSMOSの重力翼が広がる。


ソラは太陽の重力を探す。


遠い。


あまりにも遠い。


だが、繋がっている。


宇宙の重力は、切れていない。


ミナトが叫ぶ。


「まさか、銀河外縁から太陽へ干渉する気か!?」


ソラは答える。


「うん。」


「太陽を、ここから掴む。」


COSMOSが両腕を広げる。


銀河規模の重力線が展開する。


星々の軌道を縫い、空間の歪みを越え、遥か太陽系へ届く。


ソラの額に汗が浮かぶ。


「見えた……」


「太陽の形……!」


太陽圏。


黒い亀裂が広がる中、突然青い光が太陽を包んだ。


地球艦隊が驚く。


「これは……COSMOS!?」


ソラは叫ぶ。


「太陽を返せ!!」


青い重力が黒い侵食を引き剥がす。


太陽表面が轟く。


プロミネンスが巨大な翼のように広がる。


VOID ARCHITECTの干渉波が抵抗する。


太陽を消そうとする力と、太陽を繋ぎ止める力。


銀河の端と太陽系が、一本の重力線で結ばれる。


ソラの意識が軋む。


「くっ……!」


レイが支える。


「一人で抱えるな。」


COSMOS内で、五つの炉心が同期する。


艦隊の重力炉も、太陽圏から支援する。


人類全体が、太陽を掴む。


そして。


黒い亀裂が砕けた。


太陽が再び輝く。


黄金の光が、地球圏を照らした。


地球艦隊から歓声が上がる。


だがソラは笑わなかった。


前方。


VOID ARCHITECTの本体が、さらに深く銀河へ侵入していた。


太陽を守った代償に、外縁防衛線が押し込まれている。


レイが言う。


「時間を失った。」


ソラは頷く。


「でも、太陽は守った。」


そして前を見る。


「次は、本体を止める。」


VOID ARCHITECTの黒い影が広がる。


銀河の星々が、次々と危機に晒される。


守るべきものは多すぎる。


だがソラは、もう迷わなかった。


「全部は救えない?」


彼女は小さく笑った。


「じゃあ、全部救えるくらい強くなる。」


COSMOSの青い光が、さらに深く燃えた。

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