第47話「全艦隊出撃」
人類艦隊は、退かなかった。
銀河外縁防衛線。
そこはすでに、通常の戦場ではなかった。
恒星の光は吸われ、空間は裂け、戦艦は一隻、また一隻と“存在ごと”消されていく。
それでも――
艦隊は前進した。
司令艦アルゴス。
艦橋では、損耗率の報告が止まらない。
「第七艦隊、通信途絶!」
「第十二防衛群、消失!」
「無人砲台群、残存三十パーセント!」
司令官は黙っていた。
そして、静かに命じる。
「予備艦隊を出せ。」
オペレーターが息を呑む。
「全艦ですか?」
司令官は頷いた。
「全艦だ。」
銀河各地。
火星圏艦隊。
木星重力艦隊。
土星リング防衛軍。
外縁移民船団。
民間改装艦。
戦うために造られた艦も。
逃げるために造られた船も。
すべてが、銀河外縁へ向かった。
通信が銀河全域へ流れる。
《全艦隊、出撃》
《繰り返す》
《全艦隊、出撃》
ソラはCOSMOSの中で、その光を見た。
無数の艦影。
遠くから集まってくる小さな光。
「……こんなに。」
レイが言う。
「人類全部だ。」
ミナトの声が続く。
「逃げ場なんて、もうないからな。」
ソラは笑った。
「じゃあ、前に行くしかないね。」
VOID ARCHITECTの影が広がる。
銀河外縁の星々が黒く染まっていく。
その前に、人類艦隊が横一線に展開する。
三万隻ではない。
十万隻。
二十万隻。
戦闘艦、輸送艦、旧式艦、民間船。
すべての船が、光を灯した。
司令官の声が響く。
「全艦、聞け。」
「我々は勝てない戦いへ向かうのではない。」
「勝つまで終わらない戦いへ向かう。」
一拍。
「撃て。」
銀河が光った。
無数の砲撃が、黒い宇宙へ突き刺さる。
COSMOSが先頭に立つ。
ソラは操縦桿を握った。
「全員で行くよ。」
COSMOSの重力翼が最大展開する。
艦隊の砲撃が、その重力場に乗る。
散らばっていた光が束ねられ、一つの巨大な槍になる。
レイが叫ぶ。
「今だ、ソラ!」
ソラは前を睨む。
「届けぇぇぇぇ!!」
COSMOSが拳を突き出す。
艦隊すべての火力が重なり、VOID ARCHITECTの外殻へ叩き込まれる。
黒い構造体に、巨大な亀裂が走った。
一瞬。
宇宙が震える。
VOID ARCHITECTが、明確に後退した。
歓声が上がる。
だが、それはすぐに途切れた。
亀裂の奥から、無数の影が現れる。
リヴァイアサン群。
コロッサス級。
さらにその上位――
タイタン級ヴォイド。
一体一体が、戦艦群を飲み込むほど巨大だった。
DENEBが叫ぶ。
「敵大型個体、数千!」
「防衛線へ突入します!」
司令官が命じる。
「迎撃!」
宇宙は再び混沌に沈む。
戦艦が砕ける。
GF量産機が燃える。
恒星粒子砲が闇を裂く。
ヴォイドの黒い波が、艦隊を飲む。
その中心で、COSMOSは戦い続ける。
ソラは叫んだ。
「まだ!」
COSMOSの腕が巨大ヴォイドを掴む。
重力をねじり、存在構造を砕く。
「まだ終わらない!」
そのとき。
VOID ARCHITECTの奥から、低い波が広がった。
それは命令ではない。
宣告。
《リセット工程、第一段階開始》
銀河の端から、星々が次々と消え始める。
ソラは息を呑む。
「……始めた。」
レイが言う。
「銀河そのものを削る気だ。」
司令官は静かに告げる。
「全艦隊、前進。」
オペレーターが叫ぶ。
「これ以上前進すれば、帰還不能です!」
司令官は答えた。
「帰る銀河を守るためだ。」
艦隊が前へ出る。
消滅領域へ。
存在を削られながらも。
それでも、砲撃を続ける。
ソラは目を閉じた。
一瞬だけ。
そして開く。
「NOVA。」
青い核が強く輝く。
「もっと力を貸して。」
COSMOSの全身に、青い光が走る。
人類全艦隊。
GF-Σ COSMOS。
そして、VOID ARCHITECT。
銀河の命運を懸けた戦いは、ついに総力戦へ突入した。
ソラは叫ぶ。
「全員で、トップを越える!!」




