表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トップを越えろ!2  作者: たむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/60

第44話「選ばれた存在」

「選ばれた存在」


その言葉を、ソラは昔から嫌いだった。


誰かに決められたみたいで。

自分の意思ではないみたいで。


けれど今、宇宙の設計図を前にして、彼女は理解していた。


自分は確かに、選ばれていた。


だがそれは――


従うためではない。


COSMOSの内部空間。


白い世界は崩れかけていた。


VOID ARCHITECTの修正波によって、設計図の一部が閉じ、未来の可能性が次々と消されていく。


ミナトの声が響く。


「COSMOSの構造維持、限界に近い!」


「これ以上設計図に干渉すれば、機体が持たない!」


レイが言う。


「撤退するべきだ。」


ソラは設計図を見つめたまま答えた。


「まだ。」


「ここで引いたら、全部予定通りになる。」


設計図の中心には、人類の項目があった。


黒く塗りつぶされた異常種。


削除推奨。


だがその横に、ソラが書き込んだ一語が残っている。


《継続》


消されかけながらも、その文字はまだ光っていた。


そのとき。


宇宙ログが再び開く。


前宇宙の少女。


ソラと同じ重力パターンを持つ、最初の選択者。


彼女の声が響く。


《私たちは選ばれた》


《でも、選んだのは宇宙ではない》


《未来を諦めなかった者たちだ》


ソラは目を細める。


「……そうか。」


前宇宙の文明は、完璧な英雄を残したのではない。


失敗してもなお、次へ託す者を残した。


選ばれたとは、優れていることではない。


諦めなかった意志を受け取ること。


ソラは笑った。


「だったら、ちゃんと選び返す。」


レイが問う。


「何を選ぶ。」


ソラは答えた。


「この宇宙。」


「今いるみんな。」


「まだ見てない未来。」


VOID ARCHITECTが、設計図を閉じようとする。


巨大な黒い修正線が、人類の項目へ走る。


削除。


確定。


終焉。


ソラはCOSMOSの腕を伸ばした。


「させない!」


重力が爆発する。


五つのGFの力が一点へ集まる。


NOVAのビッグバン炉が、青く燃える。


ソラは設計図へ新しい文字を刻む。


《未定》


その瞬間、宇宙が揺れた。


決定されていた未来が、完全に白紙へ戻る。


DENEBが叫ぶ。


「未来予測、全域崩壊!」


「確定未来が消えています!」


ミナトが呆然と呟く。


「未来を……未定義にしたのか。」


VOID ARCHITECTが強烈に反応する。


怒りではない。


恐怖でもない。


ただ、計算不能。


完全な管理者にとって、最も許されない状態。


ソラは言う。


「選ばれた存在ってさ。」


「決められた道を歩く人じゃない。」


「選び直せる人のことなんだよ。」


COSMOSが設計図から手を離す。


白い空間が崩壊を始める。


だが、人類の項目はもう黒くない。


そこにはただ、輝く空白がある。


何になるか分からない。


だからこそ未来だった。


レイが静かに言う。


「戻るぞ。」


ソラは頷く。


「うん。」


COSMOSが設計図領域から離脱する。


背後で、VOID ARCHITECTの巨大な影が輪郭を強めていく。


外宇宙。


COSMOSが現実空間へ戻る。


その瞬間、銀河全域で星々が瞬いた。


消えかけていた星系の一部が戻る。


記録も、航路も、人々の記憶も。


完全ではない。


だが、確かに回復した。


司令室に歓声が起きる。


だが司令官は表情を緩めない。


「今ので、奴は本格的に来る。」


ソラは前方を見る。


銀河の外側。


黒い空白が、形を持ち始めていた。


VOID ARCHITECT。


ついに本体が、宇宙へ降りようとしている。


ソラは静かに言った。


「いいよ。」


「こっちも、選んだから。」


COSMOSの目が光る。


人類は選ばれた。


だがそれ以上に。


人類は、自分で選んだ。


終わるはずだった宇宙の未来を。


未定のまま、進ませることを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ