第40話「GFの本質」
五つの光が、重なった。
NOVA。
ORION。
VEGA。
ALTAIR。
DENEB。
それぞれ別々に設計されたはずのグラビティフレームは、円環中枢の中で一つの巨大な重力場を作り始めていた。
だが――
ミナトは、その数値を見て息を呑んだ。
「……違う。」
隣の技術者が振り向く。
「何がです?」
ミナトは震える指でモニターを拡大する。
「GFは、合体するための機体じゃない。」
「最初から――」
一瞬、言葉が止まる。
「一つの巨大な存在を分割したものだ。」
格納庫全体が揺れる。
五機の炉心が共鳴する。
ORIONの砲撃炉。
VEGAの高速重力炉。
ALTAIRの防御炉。
DENEBの観測炉。
そしてNOVAのビッグバン炉。
それらは別々の機能ではなかった。
巨大な一つの構造体を成立させるための、分割された器官。
レイが通信で問う。
「つまり、GF-Σ COSMOSは新造機ではないのか。」
ミナトが答える。
「違う。」
「これは復元だ。」
ソラが呟く。
「前の宇宙の……ORIGIN FRAME?」
ミナトは頷いた。
「その未完成版。」
「いや、もしかすると――」
モニターに古代ログが重なる。
巨大な人型構造体。
銀河を背負うほどの重力翼。
五つに分かれた中枢。
「人類は知らないうちに、前宇宙の最終兵器を再構築していたんだ。」
その瞬間。
NOVAのコクピットに、古い記憶が流れ込む。
前宇宙。
崩壊する星々。
燃え尽きる文明。
そして、最後に立ち上がった巨大な影。
ORIGIN FRAME。
だがそれは完成しなかった。
五つの中枢のうち、一つだけが欠けていた。
“未来を選ぶ核”
それがNOVAだった。
ソラは静かに息を吐く。
「だから私が乗れたんだ。」
「未来を決めるための機体だから。」
NOVAが応えるように光る。
外では、VOID ARCHITECTの影響がさらに広がっていた。
星図から星系が消えていく。
航路が消え、通信記録が消え、人々の記憶からさえ薄れていく。
司令官が叫ぶ。
「同期完了まで、あと何秒だ!」
ミナトが答える。
「理論上は二十秒!」
「実際は分かりません!」
「NOVAが宇宙を作り始めたら止められない!」
ソラが笑う。
「止めなくていいよ。」
ミナトが叫ぶ。
「よくない!」
ソラは前を見る。
「作るんじゃない。」
「繋げる。」
五機の光が完全に重なる。
重力場が円環を越え、格納庫を越え、軌道都市全体へ広がっていく。
人々が空を見上げる。
青い光。
それは恐怖ではなく、どこか懐かしい光だった。
レイが静かに言う。
「ソラ。」
「失敗すれば、我々は消える。」
ソラは答える。
「うん。」
「でも成功したら?」
レイは少し沈黙した。
「宇宙の外へ届く。」
ソラは笑った。
「じゃあ、やる価値あるじゃん。」
ミナトが最後の制御式を叩き込む。
「GF炉心同期、臨界!」
「円環中枢、開放!」
「COSMOSフレーム、形成開始!」
五機のGFが光の中へ包まれる。
装甲がほどける。
構造が再配置される。
腕が、脚が、翼が、核が。
一つの巨大な重力機構へと組み上がっていく。
その姿は、人型だった。
だが単なるロボットではない。
重力で宇宙に輪郭を刻む、巨大な存在。
人類が前宇宙から受け継いだ答え。
ソラは、その中心で目を開く。
「これが……」
青い光の中。
新たな巨神が立ち上がる。
GF-Σ COSMOS
銀河外縁の黒い空白が、初めて揺らいだ。
VOID ARCHITECTが、人類の変化を観測した。
そして。
初めて。
明確な敵意を向けた。
ソラは笑う。
「見えた?」
「これが人類だよ。」
COSMOSの目が光る。
宇宙の中から、宇宙の外側へ。
人類はついに、手を伸ばした。




