第3話「重力戦闘」
宇宙は静寂に包まれている。
だが今、軌道都市ユグドラシルの外宙域では、その静寂が破られていた。
全長千メートル級。
ヴォイドスウォーム・デストロイヤー級。
黒い幾何学構造体は、まるで宇宙の裂け目そのもののようだった。周囲の星光が歪み、空間がねじ曲がる。
管制室が叫ぶ。
「デストロイヤー級確認!」
「候補生一人では対処不能だ!」
「GF部隊を出撃させろ!」
だが、出撃準備には時間がかかる。
その間――
前にいるのはたった一機。
GF-01 NOVA。
そしてコクピットの中で、ソラは息を吐いた。
「なるほどね。」
巨大な敵を見上げる。
「さっきのやつの親玉って感じ?」
通信が入る。
「アマミヤ候補生!」
管制官の必死な声。
「すぐ撤退しろ!NOVAは試作機だ!まともな武装は――」
その瞬間。
敵が動いた。
空間が裂ける。
黒い波が広がる。
重力崩壊波。
ソラは反射的に操縦桿を引いた。
NOVAが動く。
普通の機体なら回避不能の攻撃。
しかし――
NOVAは違う。
ソラは“感じていた”。
重力の流れを。
「そこ!」
NOVAが横へ滑る。
推進器ではない。
重力を踏み台にして移動している。
衝撃波が背後を通り過ぎる。
ソラが驚いた顔をする。
「うわ、今の当たったらヤバかったよね?」
AIが答える。
《予測被害:機体消滅》
「だよね!」
そのとき。
敵の中心が赤く光った。
管制が叫ぶ。
「エネルギー反応増大!」
「第二攻撃来るぞ!」
巨大な重力砲が形成される。
ソラは深く息を吸った。
「……でもさ。」
操縦桿を前へ押す。
「この機体、すごいよ。」
NOVAの重力炉が唸る。
《出力上昇》
背部の六枚のフィンが展開。
青い重力場が広がる。
ソラは直感的に理解していた。
この機体は――
重力そのものを武器にできる。
「こうやるんだ。」
右手を握る。
NOVAの腕に重力が集中する。
宇宙空間が歪む。
青い球体が形成される。
管制室が騒然となる。
「重力収束!?」
「そんな機能はテストしてない!」
ソラは笑った。
「でもできる。」
敵が重力砲を放つ。
黒い光線。
NOVAへ直撃――
その瞬間。
ソラが叫ぶ。
「いけ!」
NOVAの拳が突き出される。
重力衝撃弾。
青い球体が飛ぶ。
二つのエネルギーが衝突。
宇宙が揺れる。
そして――
爆発。
巨大な衝撃波が広がる。
管制室が静まり返る。
数秒後。
観測員が震える声で言う。
「……敵外殻、崩壊。」
黒い巨体が崩れていく。
ヴォイドスウォーム・デストロイヤー級。
撃破。
宇宙に沈黙が戻る。
管制室がざわめく。
「倒した……?」
「候補生が?」
「一機で?」
その頃、コクピットの中。
ソラは目を丸くしていた。
「……え?」
「今の、倒したの?」
AIが答える。
《敵反応消失》
《戦闘終了》
ソラは椅子にもたれた。
「はは……」
「なんかすごいことになっちゃったな。」
そのとき、通信が入る。
低く落ち着いた声。
「……君がNOVAのパイロットか。」
新しい機体が近づいてくる。
黒と赤の機体。
鋭いシルエット。
型式番号。
GF-03 VEGA。
そしてパイロット。
カガミ・レイ。
彼女は静かに言った。
「試作機でデストロイヤー級を撃破。」
「面白い。」
少し間が空く。
「だが――」
「次は私が相手だ。」
ソラは笑った。
「え?」
「それ、ケンカ売ってる?」
こうして。
NOVAのパイロット
アマミヤ・ソラの戦いは
本格的に始まる。




