第2話「巨人起動」
白と蒼の巨人――
GF-01 NOVA。
その機体は、静かな宇宙空間の中でゆっくりと姿勢を変えた。全高およそ40メートル。人型のシルエットを持ちながら、背部には翼のように展開する六枚の重力フィンが備えられている。
軌道都市ユグドラシルの管制室は騒然としていた。
「なぜNOVAが起動している!?」
「パイロット登録されていません!」
「AIが自動選択を実行しました!」
「誰だ!?」
オペレーターが震える声で答える。
「適合者……宇宙訓練校候補生、アマミヤ・ソラ!」
司令官が絶句する。
「候補生だと……?」
その頃、ソラの訓練艇のコクピットには、新しい通信が届いていた。
《GF-01 NOVA:パイロット搭乗を要請》
「要請って言われても……」
ソラは目の前の巨人を見上げた。装甲の隙間から淡い青い光が漏れている。まるで機体そのものが呼吸しているようだった。
背後ではヴォイドスウォームがゆっくりと近づいている。
黒い空間の塊。
周囲の星光が歪み、吸い込まれている。
「うわ、あれ絶対やばいやつだよね」
管制から怒鳴り声が飛ぶ。
「アマミヤ候補生!すぐ帰投しろ!その機体に近づくな!」
ソラは苦笑した。
「でも司令、あれ来てますよ?」
巨大なヴォイドスウォームが触手のような空間歪曲を広げる。訓練艇の警報が鳴り響く。
《重力場崩壊警告》
「……あーもう!」
ソラはシートベルトを外した。
「どうせ逃げても追いつかれるんでしょ?」
そして訓練艇をNOVAへ接近させた。
NOVAの胸部装甲が開く。
コクピットハッチ。
まるで機体が彼女を迎え入れるようだった。
「……ほんとに乗れってこと?」
ソラは深呼吸した。
「よし。」
訓練艇から飛び出す。
宇宙服の推進器を吹かし、NOVAへ向かう。
管制が叫ぶ。
「アマミヤ!やめろ!!」
だが少女は止まらない。
コクピットへ滑り込む。
ハッチが閉じた。
その瞬間――
機体が震えた。
《パイロット接続開始》
《重力神経リンク開始》
ソラの視界が真っ白になる。
無数の情報が流れ込む。
恒星の重力。
惑星の軌道。
宇宙の潮流。
ソラは思わず呟いた。
「……すごい。」
宇宙が、感じられる。
重力の流れが、手に取るように分かる。
《パイロット適合率:97%》
《GF-01 NOVA 起動》
次の瞬間。
NOVAの目が光った。
背部の重力フィンが展開する。
宇宙空間が歪む。
管制室が凍りついた。
「重力炉……出力上昇!」
「まさか……制御できているのか!?」
そのとき。
ヴォイドスウォームが攻撃を開始した。
空間を裂く黒い衝撃波。
しかし――
ソラは自然に操縦桿を握っていた。
「分かる。」
「重力の流れが。」
NOVAが動く。
推進器ではない。
重力を蹴って加速した。
一瞬で敵の側面へ回り込む。
ソラが笑う。
「これ……」
「めちゃくちゃ速い!」
NOVAの拳が振り上がる。
重力が集中する。
青い光が拳に集まり――
重力衝撃。
ヴォイドスウォームに直撃する。
宇宙が震えた。
敵の外殻が大きく歪む。
管制室が叫ぶ。
「ダメージ確認!!」
「効いている!!」
ソラは驚いた顔をした。
「え?」
「今の……当たった?」
だが次の瞬間。
ヴォイドスウォームの中心が裂ける。
そこから現れたのは――
さらに巨大な存在だった。
全長1000メートル級。
観測AIが震える声で告げる。
《新個体確認》
《クラス判定:デストロイヤー級》
ソラは呟く。
「……え、増えた?」
巨大な影がNOVAを覆う。
だがソラは笑った。
「いいじゃん。」
操縦桿を強く握る。
「もっと動かせるってことでしょ?」
NOVAの重力炉が唸る。
青い光が爆発的に広がる。
少女は宣言した。
「いくよ、NOVA。」
「トップを越えるんだ!」
宇宙戦闘が始まる。




