第18話「空間突破」
宇宙が、きしんでいた。
シンギュラリティ級の周囲では、空間そのものが波打っている。光は曲がり、距離は崩れ、時間さえわずかに遅れているように感じられた。
その中心へ――
GF-01 NOVAが再び踏み込む。
「もう一回いく。」
ソラの声は、落ち着いていた。
レイが即座に返す。
「無謀だ。」
「成功率は限りなく低い。」
ソラは小さく笑う。
「でもさ。」
「さっき“触れた”。」
操縦桿を握る。
「つまり、いける。」
NOVAの重力炉が低く唸る。
青い光が、今度は静かに、深く広がる。
DENEBのオペレーターが息を呑む。
「出力は上がってない……」
「でも……密度が違う……」
レイが理解する。
「……圧縮しているのか。」
ソラが頷く。
「重力ってさ、広げるだけじゃない。」
「まとめられる。」
その瞬間。
NOVAの周囲の空間が、ぎゅっと縮む。
視界が歪む。
次の瞬間――
NOVAが消えた。
「消失!?」
DENEBが叫ぶ。
だがレイは首を振る。
「違う。」
「内部に入った。」
シンギュラリティ級の内部。
そこは“空間”ではなかった。
上下も、距離も、意味を持たない。
ただ無数の重力線が交差する、巨大な構造。
ソラの目が見開かれる。
「……すごい。」
「これ、全部――」
「重力の網だ。」
NOVAはその中を滑るように進む。
まるで迷路。
だがソラには見えている。
流れが。
構造が。
そして――
中心が。
「……あそこ。」
遠く。
いや、近く。
赤い核のようなものが脈動している。
シンギュラリティ級の“意思”。
ソラが言う。
「ここを壊せば終わり。」
NOVAが加速する。
だがその瞬間。
空間が歪む。
進行方向がねじ曲がる。
「うわっ!」
強制的に軌道を変えられる。
敵が防御している。
「簡単には行かせてくれないか。」
ソラは笑う。
「でもさ。」
「これも重力でしょ?」
操縦桿を引く。
NOVAの周囲に、再び重力が集まる。
今度は――
一点ではない。
線。
面。
構造そのものを捉える。
「こうやって――」
「ほどく。」
NOVAが手を広げる。
青い波紋が広がる。
重力の網が揺れる。
崩れる。
通路が開く。
外部。
DENEBが叫ぶ。
「内部構造に変化!」
「崩壊が始まってる!」
レイが呟く。
「……やる気か。」
内部。
ソラは一直線に進む。
赤い核が近づく。
だが。
そのとき。
“声”が響いた。
言葉ではない。
だが確かに意味がある。
――異常。
――排除。
ソラが目を細める。
「……喋った?」
次の瞬間。
圧倒的な重力が押し寄せる。
NOVAが押し潰される。
警報が鳴り響く。
《機体圧壊危険》
ソラが歯を食いしばる。
「くっ……!」
だが――
笑う。
「いいね。」
「ちゃんと敵だ。」
NOVAの光が強くなる。
「だったら――」
「押し返す!」
重力がぶつかる。
宇宙の力と、人の意思。
衝突。
そして――
ソラが叫ぶ。
「NOVA!!」
青い光が爆発する。
内部構造が一気に崩れる。
赤い核が露出する。
「そこだ!!」
NOVAが拳を振りかぶる。
その瞬間。
時間が一瞬だけ、止まったように感じた。
そして――
叩き込む。
衝撃。
シンギュラリティ級の内部が崩壊する。
外部。
巨大な存在が歪む。
崩れる。
司令室が叫ぶ。
「崩壊開始!!」
だが。
その中心で。
“何か”が、まだ残っていた。
レイが低く言う。
「……終わっていない。」
その言葉通り。
シンギュラリティ級の奥から。
さらに深い“核”が姿を現す。
それは今までとは違う。
より純粋な。
より巨大な。
本体。
ソラが呟く。
「……これ。」
「本番だね。」
宇宙はまだ
終わらない。




