第17話「シンギュラリティ級」
それは、ゆっくりと現れた。
軌道都市ユグドラシルの外宙域。
空間が裂け、その奥から“何か”が滲み出るように姿を現す。
黒でも、光でもない。
空間そのものが歪んだ存在。
観測スクリーンに映るその影は、形を持っているようで、持っていない。
だが一つだけ確かなことがある。
――巨大すぎる。
観測官が震える声で報告する。
「サイズ……計測不能……!」
「最低でも……数百キロ以上!」
司令室が凍りつく。
司令官が低く言う。
「……これが。」
「シンギュラリティ級。」
その瞬間。
全ての機器が一斉にノイズを発した。
《警告》
《重力場異常》
《計測不能領域》
DENEBのオペレーターが叫ぶ。
「センサーが効きません!」
「空間が歪みすぎてる!」
格納庫。
ソラはすでにNOVAのコクピットに座っていた。
目を閉じている。
ゆっくりと息を吐く。
「……分かる。」
ミナトの声が通信に入る。
「何が?」
ソラは静かに言う。
「あれ。」
「ただの敵じゃない。」
目を開く。
「重力の塊だ。」
NOVAが起動する。
青い光が静かに灯る。
宇宙空間。
GF部隊が展開する。
NOVA
VEGA
ORION
ALTAIR
DENEB
五機がシンギュラリティ級と対峙する。
だが――
距離があるはずなのに、近い。
遠近感が崩れている。
レイが言う。
「……距離が歪んでいる。」
ソラが笑う。
「面白いね。」
「宇宙そのものって感じ。」
その瞬間。
シンギュラリティ級が動いた。
いや――
動いたように見えた。
次の瞬間には、位置が変わっている。
DENEBが叫ぶ。
「瞬間移動!?」
レイが否定する。
「違う。」
「空間を折り畳んでいる。」
その直後。
攻撃が来た。
光もない。
音もない。
ただ――
一機の戦艦が消えた。
完全に。
司令室が騒然となる。
「第七艦消失!」
「何も残っていない!」
ソラの表情が少し変わる。
「……やばいね。」
レイが言う。
「通常戦闘は不可能だ。」
ORIONが砲撃を放つ。
だが。
光線は途中で歪み、消える。
ALTAIRのシールドも、触れた瞬間に崩壊する。
DENEBが叫ぶ。
「干渉できません!」
「物理法則が違う!」
沈黙。
その中で。
ソラがゆっくり言う。
「……なるほど。」
NOVAが前へ出る。
レイが止める。
「待て。」
ソラは首を振る。
「たぶんさ。」
「これ、普通に戦う相手じゃない。」
シンギュラリティ級が、わずかに“こちら”を見る。
その瞬間。
ソラの視界が歪む。
無数の重力線。
宇宙の構造。
そして。
敵の“構造”。
ソラが呟く。
「見えた。」
操縦桿を握る。
NOVAの重力炉が静かに唸る。
青い光が広がる。
「これ――」
「ほどける。」
レイが叫ぶ。
「ソラ、何を――」
次の瞬間。
NOVAが動いた。
加速ではない。
空間の中を“滑る”ように移動する。
シンギュラリティ級の内部へ。
そして。
ソラが手を伸ばす。
「そこ。」
空間を“掴む”。
その瞬間。
巨大な存在がわずかに歪む。
司令室がざわめく。
「反応変化!」
「干渉成功!?」
ソラが笑う。
「やっぱり。」
「壊せる。」
だが次の瞬間。
シンギュラリティ級の“意識”が動いた。
強烈な重力波。
NOVAが吹き飛ばされる。
「うわっ!」
機体が揺れる。
警報が鳴る。
《機体損傷》
レイが叫ぶ。
「ソラ!」
NOVAが体勢を立て直す。
ソラは息を整える。
そして笑う。
「……いいね。」
「今までで一番強い。」
その目が輝く。
「やっと。」
「トップを越えられそう。」
宇宙戦争は
ついに
次の次元へ突入する。




