第16話「新たな兆し」
静かな宇宙の奥。
人類の観測網すら届かない、銀河外縁宙域。
そこに――
“それ”は存在していた。
星もない。
光も届かない。
完全な暗黒領域。
その中心で、空間がわずかに揺らぐ。
まるで呼吸するように。
ゆっくりと。
そして。
目が、開いた。
それは目ではない。
だが確かに「観測する意思」がそこにあった。
無数の重力波が交差する。
一つの巨大な意識。
それが、認識する。
――異常。
――干渉。
――宇宙法則の逸脱。
その原因。
GF-01 NOVA。
そして。
アマミヤ・ソラ。
“それ”は判断する。
――修正対象。
その瞬間。
暗黒空間が一気に歪む。
巨大な存在が動き始める。
まるで銀河そのものが、ゆっくりと目覚めるように。
その頃。
軌道都市ユグドラシル。
司令室では、緊急会議が開かれていた。
スクリーンには、先の戦闘データ。
そして、未知の反応。
観測官が報告する。
「銀河外縁より、異常重力波を検出。」
「パターンが……これまでのヴォイドと違います。」
司令官が腕を組む。
「新種か?」
「いえ……」
観測官は言葉を選ぶ。
「むしろ――」
「統制された動きです。」
部屋が静まり返る。
「群れではない?」
「はい。」
「意思があります。」
司令官が低く呟く。
「……指揮個体か。」
その頃、格納庫。
NOVAの前に、ソラは立っていた。
整備はほぼ完了している。
だが以前とは違う。
機体の表面には、微細な光の線が走っていた。
まるで内部から“何か”が変化しているように。
ミナトが言う。
「これ、普通じゃない。」
「自己進化してる。」
ソラが笑う。
「ロボットってそんなことあるの?」
ミナトが真顔で言う。
「普通はない。」
「でもこれはNOVAだ。」
ソラは機体を見上げる。
「……ねえ。」
「NOVAってさ。」
少し考える。
「機械だよね?」
ミナトは答えなかった。
そのとき。
通信が入る。
レイだった。
「ソラ。」
「司令が呼んでいる。」
「また?」
「緊急だ。」
司令室。
ソラとレイが入ると、すぐにスクリーンが点灯する。
そこに映るのは――
暗黒の宇宙。
そして。
ゆっくりと歪む空間。
ソラが呟く。
「……なにこれ。」
観測官が答える。
「新しいヴォイド反応です。」
「ただし――」
「規模が違う。」
数値が表示される。
ソラは目を丸くする。
「……え?」
司令官が言う。
「推定サイズ。」
「数百キロ以上。」
沈黙。
レイが低く言う。
「……コロッサス級を超えている。」
司令官が続ける。
「我々はこれを仮称する。」
少し間。
「“シンギュラリティ級”」
その言葉が、重く響く。
ソラは静かに画面を見る。
その奥で、何かが“こちらを見ている”気がした。
そして、ふと呟く。
「……あれ。」
レイが振り向く。
「どうした。」
ソラは小さく言った。
「私のこと、見てる。」
その瞬間。
警報が鳴り響く。
《重力異常急増》
《ワープ反応》
観測官が叫ぶ。
「来ます!!」
空間が裂ける。
基地のすぐ外。
巨大な影が現れる。
それは、これまでの敵とは明らかに違っていた。
ゆっくりとした動き。
だが圧倒的な存在感。
まるで――
宇宙そのものが現れたかのような存在。
司令官が叫ぶ。
「全戦力、迎撃準備!!」
ソラは笑った。
「……来たね。」
レイが言う。
「行くぞ。」
ソラはうなずく。
「うん。」
そして。
人類は初めて対峙する。
“意思を持つ宇宙”と。




