第14話「重力覚醒」
光が消えた後の宇宙は、異様な静けさに包まれていた。
先ほどまで存在していたはずの爆発の余波すら、どこか不自然に薄れている。
まるで――
何かが書き換えられたような空間。
GF部隊の各機が、その中心を見つめていた。
DENEBのオペレーターが震える声で言う。
「重力値……異常。」
「周囲空間の数値が……固定されてる?」
レイが低く呟く。
「……ソラ。」
その視線の先。
そこにいたのは――
GF-01 NOVA。
だが、その姿は明らかに変わっていた。
全身を包む青い光。
装甲の隙間から溢れる重力粒子。
背部のフィンはさらに展開し、まるで“翼”ではなく空間そのものを掴んでいるかのようだった。
ソラの声が通信に乗る。
「……聞こえる?」
その声は、いつもより静かだった。
しかし不思議とよく通る。
レイが答える。
「ああ。」
「今、何をした。」
少しの沈黙。
ソラはゆっくり言った。
「分かんない。」
「でも――」
周囲の宇宙がわずかに歪む。
「重力が、止まった。」
その言葉に、全員が凍りつく。
そのとき。
ベヒモス級が動いた。
巨大な球体の一部が崩壊している。
だが、まだ生きている。
そして再び、エネルギーが収束し始める。
DENEBが叫ぶ。
「再チャージ確認!」
「まだ撃てる!」
レイが即座に判断する。
「全機、再攻撃準備!」
だがソラは動かなかった。
静かに、ベヒモス級を見つめている。
「……違う。」
レイが言う。
「何?」
ソラがゆっくり言った。
「これ、攻撃しなくてもいい。」
「え?」
その瞬間。
NOVAの周囲に、巨大な重力場が展開された。
青い波紋が宇宙に広がる。
まるで水面のように。
そして――
ベヒモス級の動きが止まる。
完全に。
DENEBが震える。
「え……?」
「敵、停止……?」
ORIONのパイロットが呟く。
「重力拘束……?」
レイの目が鋭くなる。
「違う。」
「これは……」
ソラが静かに言う。
「捕まえた。」
その言葉と同時に。
NOVAが手を握る。
空間が圧縮される。
ベヒモス級の巨体が、ゆっくりと歪む。
潰れる。
巨大な質量が、まるで紙のように折れ曲がる。
そして――
崩壊。
静かに。
完全に。
ベヒモス級は消滅した。
爆発すら起こらない。
ただ、存在が消えた。
沈黙。
誰も言葉を発せない。
やがて、レイが言った。
「……ありえない。」
ソラは小さく笑った。
「なんかさ。」
「分かるようになったんだ。」
「重力って、力じゃなくて――」
少し考えて言う。
「形みたいなものなんだね。」
そのとき。
NOVAの光が揺らぐ。
ソラが顔をしかめる。
「あ……やば。」
《警告》
《重力炉過負荷》
《システム限界》
NOVAの光が急速に弱まる。
レイが叫ぶ。
「ソラ!」
NOVAが崩れるように静止する。
出力低下。
機体は完全に停止した。
宇宙に、再び静寂が戻る。
司令室では誰もが言葉を失っていた。
司令官がようやく呟く。
「……今のは。」
「兵器じゃない。」
誰かが続ける。
「現象だ。」
その日。
人類は初めて知る。
NOVAがただの兵器ではないことを。
そしてソラが――
“トップを越える可能性”を持つ存在であることを。




