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異世界召喚は未成年者略取ですよね?  作者: 門松一里
1.異世界召喚

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1−3.虜囚

1−3.虜囚


 地下牢から緑髪緑眼の美しい少年――ジョシュアが見上げていた。

旦那ミスター竜騎兵ドラグーンですよ」

「……本当に異世界だな」

 白墨チョークを手にした香西鑑が目を凝らした。

蜥蜴トカゲが飛んでやがる。……それにしても営利目的略取が、異世界召喚による少女の魔王討伐とはな。何か他の手を考えるか……もしかして、あの母親……いや、せめて私も魔法が使えれば……」

 香西がチョークを落とすと、横になった。

「ああ、また眠っちゃった」

 ジョシュアが香西の包帯を交換した。

 壁には、魔術式が描かれていた。

 香西の額から、血が流れ落ちた。

(……いや、違う。あの時の衝突で……衝突?)

 香西の脳裏に、女の笑う顔が再生された。

(トラック……光! 見えない!)

「大丈夫ですか?」

 紅顔の美少年が声をかけた。

「ここは? ……地下牢か。君は?」

 ――違う。これは現実じゃない。――

 香西が目覚めた。

 無意識に頭の傷を確かめようと手を挙げると、両手が拘束されていた。

(石の手錠……セラミック?)

「目覚めたようね」白衣の女性が声をかけた。「――私はダランベール王国ドュ=ダランベール公爵が第七子にしてパンルヴェ子爵、宮廷魔法使いのハンナ・ドュ=ダランベール・パンルヴェ。救国総省救国部統括官よ。――正式な呼びかけは『ロード』だけれど、ミユキからはハンナと呼ばれている。――あなたのお名前は?」

(女医? 王国と同じ家名の公爵なら王族――王女プリンセスか。――つまり、審問官か?)

 香西が目をつむった。

(ミユキ? ああ、菊川美幸か)

 近視なので、ぼんやりとしか認識できないが、ハンナの両脇に武官が二名立っていた。

 状況から考えて虜囚りょしゅうだと推察された。

「美幸と高村は?」

 目を閉じたまま、質問した。

「それに答えたら、お名前を聞かせてくれるのかしら? ミスター?」

「拘束をいてくれ、ハンナ」目を開いた香西が、ハンナの目を見た。「暴力による解決は好きじゃない」

「そう……」

 ハンナが、美麗な首輪を取り出した。中央にルビーに似た輝きを持つ宝珠が埋め込まれている。

隷属れいぞくか?」

「……」

 それには答えず、ハンナが両手を、香西の首に回した。

 ハンナの吐息がかかった。

 カチッと首輪の起動音がした。

 ハンナが手錠の錠に指を当てると、カチャと解除された。

「……(指紋認証ではないな)」

「魔法よ。――ミスター?」

 香西の疑問を察したハンナが答えた。

「香西鑑だ」

「コウザイ・アキラ?」

「香西がうじで、鑑が名前だ」

「アキラ・コウザイ」

 ハンナが宝石に語りかけた。あかく光る。

「あなたも家名があるのね? アキラ?」

「……」

「どうしたの?」

 宝石の光が一瞬、揺らいだ。

「……私には使えないようだ。――これは、逆らうと首が締まるのか? それとも、爆発する?」

「爆発はしないわ。首を斬り落とす」ハンナが二指で首をねる所作をした。「――異世界人で、魔法が使えるのは勇者とその従者だけ。あなたがどうして光の門を通過できたのか不思議だけれど」

「車は?」

「ああ、あの鉄の車の力で強引にこじ開けたのね。なるほど……」

「眼鏡が欲しい」

 目を細めた香西が要求した。

「それには許可が要るわ」

ロード――あなたなら、どうとでもできるだろう? プリンセス・ハンナ」

「いろいろしがらみがあるのよ、アキラ。――アキラと呼んでも?」

「親しい女性からは別の名前で呼ばれている」

「何という名前なの?」

「コレを外してくれたら教えるよ」

 ハンナが笑みを返した。

「それで何と呼べばいいんですか?」

 少年が質問した。

「(緑の瞳)……君は?」

 ――そう、この時に名前を聞いたんだ。――

 ――ジョシュア……。――

 ――だったら、さっきの姫君は……。――

「気づいたか?」

 事務室で、ハンナが声をかけた。

(……現実だな。取調べの続きだ……)

「私が、誰だか分かるか?」

「美人は覚えている。――プリンセス・ハンナ」

「あなたの名前は?」

「香西鑑」

「コウザイ・アキラ。あなたに、救国裁判の判決を申し渡す」

 救国総省救国部統括官は、審理官も兼ねているらしい。

(まるで軍事裁判だな……)

 香西がぼんやりそう考えていたが、正しく軍法会議だった。陪審員はいない。

 判決文を読んだ。

「拘禁十五年? バカか?」

「……また不敬罪に問われたいのか?」

「では、聞かなかったことに」

「どうして協力しない?」

「子供を死地に送る助けはできない」

 香西が静かに述べた。

「ヒーローガーディアン・タカムラは賛同している」

「警察官だからね。統治下の行政官は従うさ」

 敗戦国の軍隊は占領国によって解散させられるが、末端の行政官(警察官や消防士)は、統治のためにそのまま使われる。

「処刑することもできるのだよ?」

「脅迫? 冗談じゃない。子供を戦場に送ることはできない」

「平行線だな。――連れて行け」

「一つ、いいか?」

「何だ?」

「地獄にちろ」

 ハンナが溜息をつき、二指を動かした。

 次の瞬間、武官の剣が香西の両目を斬り裂いた。



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