表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
満ちるころ  作者: 飴屋みずき
第1章 朝倉活版印刷所
PR
28/40

第28話 朝顔

 川面を渡る風が、港町に夏の終わりの気配を運んでくる頃。

 灯は商店街を抜ける。橋を渡る。朝倉活版印刷所は、今も変わらない場所にあった。少し色の褪せた看板。木の扉。窓の向こうに見える活字棚。灯は立ち止まる。小さく息を吐いて、扉を開いた。

 ガランガラン。

 大きなベルの音が響く。

 店の奥から、ガッチャン、と重い音が聞こえた。軽く、鋭い足音が響く。

 湊が暖簾をくぐり、顔を上げた。灯を見る。一瞬だけ驚いた顔をして、それから少し目を細める。

 灯は何も言わず、鞄から二枚の紙を取り出した。カウンターへ静かに置く。一枚は、カフェ風待ちのショップカード。カフェオレの確認はとってある。もう一枚は依頼書。活版名刺、百枚。

「前の版は、使えないかもしれません」

 湊は灯を見て、手元に目を落とした。依頼書。ショップカード。もう一度、依頼書。湊はそれを見つめ、最後に肩書きの欄で目を止めた。それから依頼書を、静かに机へ置いた。

「相変わらず急だな」

 灯は笑った。

「断らないって、聞いたんですけど」

 奥で印刷機が動き出す。

 湊が灯を見る。

 窓辺の朝顔が、風に揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ