表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
満ちるころ  作者: 飴屋みずき
第1章 朝倉活版印刷所
PR
26/40

第26話 餞

 出発の日は、よく晴れていた。

 昼過ぎの印刷所は静かだった。灯は机の上を片付けていた。筆記用具、メモ帳、いつの間にか増えていた紙。少しずつ鞄へしまっていく。古時計が鳴る。誠一は帳簿を見ていた。湊は作業台にいる。いつもと変わらない午後だった。

「灯」

 呼ばれて顔を上げる。湊が立っていた。手には小さな紙箱。湊は箱を差し出した。

「これ」

 灯は受け取り、箱を開ける。中には名刺が入っていた。厚い紙。活版の凹み。指先で触れると、そこに自分の名前があった。

 灯は何も言わない。名刺を見る。それからゆっくり顔を上げ、湊を見た。湊はいつもの顔だった。

「使うだろ」

 灯はもう一度名刺を見る。活版の凹みを指でなぞる。それから胸元へ引き寄せた。両手で包み込む。

 誠一が小さく笑う。窓から風が入り、紙の端が揺れた。

 灯は名刺を鞄へしまう。それから机の上の湯呑みへ手を伸ばす。玄米茶は少し冷めていた。最後の一口を飲み干す。湯呑みを置き、灯は立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ