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東海道中珍栗毛  作者: なごやかたろう
八百富の祈りと赤ら顔の奇跡

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「神域の風、五つの祈り」

竹島──そこは島全体が八百富神社の神域であった。

海に囲まれた小さな島に、静かに神気が満ちている。


「ここが……日本七弁天の一つ、竹島弁天か」 と、

藤兵衛は潮風を胸いっぱいに吸い込んだ。

祀られているのは市杵嶋姫命いつきしまひめ

水と芸能、そして縁を司る女神である。

島の面積はおよそ二十反。

ほんの少し海を隔てただけなのに、植生は対岸とはまるで違う。

まるで別の世界へ迷い込んだような、不思議な気配が漂っていた。



石段を登り、朱の鳥居をくぐると、 ひんやりとした空気が肌を撫でた。

「……空気が違うのう」 と、藤兵衛。

手水舎で手と口を清め、 三人はゆっくりと境内を巡り始めた。


宇賀神社──商売繁盛

「海月屋の商いが、ますます繁盛しますように」 と、藤兵衛は深く頭を下げる。


大黒神社──縁結び

「良いご縁がありますように!」 と、定吉はなぜか一番張り切っていた。


千歳神社──長寿

「若旦那も、定吉も、長生きできますように」 と、権兵衛が静かに祈る。


八大龍神社──厄よけ

潮風がふっと吹き抜け、 三人の肩の重みをさらっていくようだった。


八百富神社 本殿──開運

本殿の前に立つと、 海の音が遠くでざわりと響いた。

「……良い運が巡ってきそうじゃ」 と、藤兵衛は胸の奥が温かくなるのを感じた。



祈り終えた三人は、 しばし境内の静けさに耳を澄ませた。

「なんだか……運気が上がった気がしますな」 と、権兵衛。

「ぼく、体が軽くなった気がします!」 と、定吉はぴょんと跳ねる。

「うむ……確かに、不思議な力を感じるのう」 と、藤兵衛も頷いた。


潮風がそっと三人の背を押し、

竹島の神域は、まるで旅の続きを祝福しているようだった。

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