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東家のひみつ

作者:佐藤 英
最新エピソード掲載日:2026/10/10
東家の父・賢二は、突然の交通事故で命を落とす。
家族は深い悲しみに沈み、母の静江は一家を支えるため必死に働き始めた。
祖父母は息子を失った衝撃で憔悴し、子どもたち──真理子と浩太は、現実を受け入れられずにいた。

そんなある晩、浩太は仏間で「お父さん」と声をかける。
すると、姿は見えないのに賢二の声が返ってきた。
「浩太、待たせたな。ずっと寂しい思いをさせて悪かったな。」

続いて静江、真理子、祖父母──
家族は一人ずつ仏間で賢二と対話することができた。
姿は見えないが、声は確かにそこにあり、家族を慰め、励まし、支えた。

賢二は“向こう側”から家族を見守り続けていた。

やがて真理子の中学生活が始まり、家庭教師として桜井恵子が東家に通うようになる。
恵子は優しく、真理子の学習を丁寧に支え、東家の家族にもすぐに溶け込んだ。

しかし、家庭教師最終日の夜、賢二は真理子に
「先生をいつもの時間に帰してはいけない。30分引き留めなさい」
と告げる。

理由は言えない──ただ「絶対にそうしなければならない」と。

東家の家族は協力し、恵子をケーキでもてなし、帰宅時間を30分遅らせた。

翌朝のニュース。
その時間に、恵子が通るはずだった交差点で死亡事故が起きていた。

賢二は“向こう側”から、家族だけでなく東家に来てくれた人までも守っていたのだ。

家庭教師が東家を去る日、車に乗り込んだ恵子の耳に、どこからともなく賢二の声が届く。

「また来てやってください。いつでも歓迎ですよ。」

真理子は空に向かって言う。

「先生、きっと聞こえてるよ。これでまた来てくれるね。」

東家は、亡くなった父と共に生きる家族だった。
“向こう側が近い土地”で、家族は今も、そしてこれからも、賢二に守られながら暮らしていく。
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