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【温川温泉 宝玉館】

作者:佐藤 英
最新エピソード掲載日:2026/10/10
山深い温川温泉に佇む老舗旅館・宝玉館。
その始まりは明治末期、行商人の弥彦が偶然見つけた乳白色の湯に足の傷を癒されたことから始まった。
以来150年、宝玉館は「心まで温まる宿」として静かに人々を迎え続けている。

この宿には、いくつもの“不思議”がある。

名物の温泉饅頭は、温川温泉の飲泉を使って作られ、食べた人の心をぽかぽかと温める。
夫婦喧嘩が収まった、職場の対立が解消した──そんな手紙が全国から届くほどだ。

しかし宝玉館の不思議はそれだけではない。
この土地は昔から “あの世との境が薄い” と言われてきた。

横柄なカスハラ客が泊まった夜、彼の枕元には事故で亡くなった娘が現れる。
娘は父の荒んだ心を案じ、静かに語りかける。
翌朝、男は20年ぶりに涙を流し、優しい父親の顔に戻っていた。

また、宝玉館には二つの“宝玉”がある。
初代が宿を建てていた頃、どこからともなく現れたおかっぱ頭の子供たちが残していった、
ピンクと水色の小さな玉──それが宝玉館の守り神であり、旅館名の由来となった。

宝玉は時に客の前に姿を現し、時に歌声を響かせ、
時に未来の自分の声を聞かせて人生の道を照らす。
常連客の佐藤老人は、若い頃に宝玉と出会い、
人生の節目ごとにこの宿に救われてきた。

女将は語る。
「この宿には、必要な人にだけ起こる不思議がございます。
それは怖いものではなく、心を整え、人生をそっと導くためのものなんですよ。」

宝玉館は、
心の傷を癒し、迷った人をそっと元の道へ戻す“温泉と不思議の宿”。
今日もまた、誰かの人生が静かに温められていく。
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