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第32.5話 いつも働き者の聖女とメイドが高熱を出したので看病しました。

 先日、私が風邪で寝込んだ時のこと。二人は付きっきりで看病をしてくれた。


 その疲れが出たのに違いないわ。


 私は執務室で、信じられない光景を目にしていた。


「お姉様、本日のスケジュ……ケホッ、ゲホッ!」


「お嬢様、紅茶の……はぁっ、はぁっ……」


 いつも完璧なアリスとクロエが、顔を真っ赤にして荒い息を吐き、ガタガタと小刻みに震えている。


「二人とも、どうしたの!? 顔が真っ赤よ!」


 私が慌てて二人の額に手を当てると、火のように熱かった。


「お、お気になさらず……ただの、知恵熱、ですぅ……」


「ええ……お嬢様は、お仕事にお戻り……バタッ」


 二人は強がろうとしたが、そのまま床に倒れ伏してしまった。


「全然大丈夫じゃないじゃない! 二人とも、すぐにベッドへ!」


 * * *


 私は二人を大きなベッドに寝かせ、冷たいタオルと作りたてのお粥を用意した。


「さあ、二人とも。お仕事は忘れて、今日はいっぱい甘えなさい。この前のお返しよ。私がお粥をあーんしてあげるわ」


 私がスプーンでお粥をすくい、フーフーと冷ましてから二人の口元へ運ぶと。


 二人の目から、大粒の涙が溢れ出した。


『(あああっ、なんという事でしょう! 私というゴミが、神聖なお姉様に看病という重労働をさせてしまうなんてぇぇっ! 万死! 万死に値する大罪ですぅぅっ!)』


『(切腹……っ! 今すぐこのナイフで腹を切り裂いて詫びなければ……ッ! だが体が動かん! そして、お嬢様のあーんが致死量レベルで尊い……ッ!)』


「ほら、アリスさん、アーン」


「あ……あぁぁっ(涙)……あむっ。美味しい……神の味がしますぅぅ……」


「クロエも、無理しないで食べてね」


「うぅっ(号泣)……咀嚼するのがもったいない……ッ!」


 二人はボロボロと泣きながら、お粥を飲み込んでいる。


「……あら?」


 ……この子たち、熱で弱っているところに温かいお粥を食べて、安心して涙が出てしまったのね。


 いつもは気を張って完璧に仕事をしてくれているけれど、本当は普通の女の子なんだもの。

 病気で心細い時に優しくされて、ホッとしてしまったんだわ。


「可哀想に。とっても心細かったのね。大丈夫よ、私が汗を拭いて、ずっと側にいてあげるからね」


 私が二人の服のボタンを少し外し、胸元や首筋の汗を冷たいタオルで優しく拭ってあげた、その瞬間。


『(ヒィィィィッ!? お、お姉様の御手が、私の素肌にッ!)』


『(直接ワイピング……ッ! 細胞が、私の細胞が歓喜で爆発いたしますわぁぁッ!)』


 ——ブシューッ!!!


 二人の鼻から、凄まじい勢いで鼻血が噴き出した。


「た、大変!! 熱が高すぎて、鼻血まで出てきちゃったわ!!」


 私はパニックになり、正確な熱を測ろうと、二人の額に自分の額を順番にピタリとくっつけた。


「やっぱり、まだこんなに熱いじゃない! 息も荒いし……!」


「「…………ッッッ!!!!!!!!」」


 至近距離で迫る私の顔と、柔らかい額の感触。


 二人の免疫システムは、不意打ちの『おでこ検温』という劇薬によって、ウイルスごと精神を焼き尽くされた。


「あはぁ……お姉様の、おでこ……。もう、思い残すことは……」


「お嬢様ぁ……致死量の、看病でした……ガクッ」


 二人は白目を剥き、鼻血を出したまま幸せそうに気を失った。


 * * *


 翌朝。


 平熱に戻った二人は、昨日以上の凄まじいエネルギーで私の世話を焼き始めた。

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