47話 苦々しい再会/Bitter Reunion
魔の刃を以て、熊を斬り、猪を断ち、鳥を屠る。
この『深緑の民』の隠れ里に入り込んだ魔獣の群れを討滅させるため、ハル、ナツ、アキ、フユの四人の魔剣使い達は、愛剣を片手に村中を駆け回り、魔獣を狩った。
異世界に無知な四人はこの時はまだ知る由もないが、本来これらの魔獣は、世界的な標準で鑑みても「かなり強い」部類に入る種族群である。
RPGのゲーム開始時に登場するゴブリン、オーク、スライムといった初心者が狩る雑魚モンスターの様相ではなく、強いて言えば中盤以降の地域に出てくる強いモンスターといった趣だ。
それでも魔剣がもたらす圧倒的理不尽は、その程度の困難など意に介さず斬り伏せてしまう。
魔剣に覚醒したてのひよっ子だった三日前でさえ、常人では手に負えない凶獣ダイトドンの一つの群生を葬り去ったのだ。
あれから三日。更に魔剣の使い込み、力の理解、身体の馴染みが進んだ今、もはや木っ端の魔獣程度では「戦闘」など成立せず、ただの「屠殺」に等しい作業で侵入者達を殲滅させた。
村外れの一角で散開していた三人が一旦合流し、最後に方々を疾走し魔獣を辻斬りの如く斬っていたアキからの報せに、三人は動揺を隠せなかった。
「な、何で? 何でフレンが魔獣と一緒にいるの!?」
「いやオレも全っ然わかんねーよ! けど遠巻きに見えちまったんだよ! オレが寝ぼけてるとか幻覚見せられてるみてえなオチじゃねえんなら、間違いなくフレンだったぜあれは!」
「そう⋯⋯でも⋯⋯」
声を荒げるアキと、戸惑いに顔を歪めるナツに、頬に冷や汗を垂らしてフユが言い辛そうに口を開いた。
「私たちが知る、フレンは⋯⋯人間のフレンの、姿と人格を持った、人外⋯⋯だよ? だから、魔獣と一緒にいるのは⋯⋯必ずしも不自然じゃ、ない⋯⋯」
「本物のフレンが死んでから、昨日俺たちが『フレンの姿をした女の子』を発見するまでの四日間、その偽物のフレンは村に帰れず森で過ごしていた。その間、他の魔獣に襲われず無事でいたのは、そういうことだろうな」
ハルが言及したことは、同じ村の住人であるクライドから話を聞かされるまで疑問だった点の一つだ。
五日前に村を飛び出したフレンは、運悪く遭遇した怪物に捕食され死亡した。そしてその翌日、クライドがフレンの残った僅かな遺骨と魔除けの護符を回収した。
さっきの話には出なかったが、クライドが再び現場に戻った時にフレンに姿を変えた怪物がその場にはおらず、着の身着のままの衣服が残っていなかったこと、四人が『彼女』と出会った時の衣服の汚れ具合などを考えると、立ち去った『彼女』はフレンの死体の服を着ていたのだろう。
フレンとしての容姿と意識を持ちながら、その実フレンではない何か。戦闘能力が他の魔獣より高いのか、卓越した気配断ちができるのか、それとも単に運がよかっただけか。それは定かではないが、なぜ「ただの幼い少女」が四日間も森で無事だったかの納得は一応出来るものがあった。
「でも⋯⋯肝心の動機は何だよ? 魔獣の混成チームは村を襲いに来たんだろ? それにフレンまで参加してるってのはどういうこった?」
衝撃的光景を目撃したアキからは当然の疑問が出され、四人は顔を見合わせる。
「今のフレンは人間じゃないけど、人間だった頃の記憶はあるんだよね? 故郷の村を襲う理由なんてある?」
「⋯⋯種類の違う魔獣が、一緒になって⋯⋯村に乗り込んできたことと⋯⋯関係ありそうだけど」
「そうだな。本来一緒に行動する習性がない複数の魔獣が徒党を組んで行動している現象だ。これが意図したものなら、何者かに操られているか、魔獣すら従わせられる絶対的な命令権を持つ統率者がいるか⋯⋯」
あり得そうなパターンをいくつか類推するハル。そしてアキは「おい、まさか⋯⋯」と声を震わせる。
「それが⋯⋯フレンかもしれねえって、ことか?」
「そんな! そんなのウソだよっ!」
悲鳴を上げる否定するナツを、ハルが手で制して落ち着かせる。
「まだ何とも言えない。⋯⋯ただフレンはあのエオルギスと縁のある存在で、しかもそのエオルギスの通り名は『獣の王』⋯⋯これは偶然なのか?」
あまりにも最悪の想定だった。それでも散らばったあらゆる点が、まるで見えない糸で一繋がりになっているかのような気持ち悪さが、察しのいい四人の心をざわつかせる。
「⋯⋯行こうよ。フレンがいるなら、ちゃんと話さなきゃ」
それでも四人は立ち止まるわけにはいかない。
フユが左手の《真実と欺瞞の剣》の柄を握りしめる。真実が知りたい──その主の望みに応えるかのように、細刃を纏う青白いオーラが一層強くなった。
四人は村の入り口に向かう道すがら、ブルボグやダイトドンを露払いの如く斬り捨てる。
「邪魔だ」
興奮気味に突進してきたブルボグを、ハルはひょいと左側に避け、すれ違い様に太った胴体に《楽園と冥府の剣》の魔刃を押し当てて振り上げる。
「ブ⋯⋯ゴォ⋯⋯!」
恐るべき斬れ味によって、腹を中心に真っ二つになったブルボグは絶命する。消滅の光の後に緑色の霊晶石が出現するが、意に介さぬまま進む。
そして──。
「⋯⋯。やっぱりきたんだね。みんな」
村と外界を隔てる門の前にて、ブルボグ、ダイトドン、コンドリスを複数連れて陣取る、今にも泣きそうな顔のフレンと再会した。
最近4000文字超えが当たり前になりつつあったので次の話と分割して2000文字程度に。
またすぐ長くなるかもですが笑
ブクマや感想や★★★★★をいただけると踊って喜びますので、よかったら宜しくお願いします。




