season1第7章 「待っていてくれる人」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20話」
*"『おかえり』と言ってくれる人がいるだけで、人は少しだけ前を向ける。"
夏休みが終わった。
新学期が始まって少ししてから、私は前のようには学校へ行けなくなっていた。
朝、制服に着替えても体が動かない。
玄関まで行っても、足が止まる。
「今日も行けなかった……。」
そんな日が何日も続いた。
学校のことを考えるだけで、胸が苦しくなった。
それでも、少しだけ元気が出た日には学校へ向かった。
4限目。
別室のドアを開けると、先生が笑顔で迎えてくれる。
「おはよう、Ami。」
その一言を聞くだけで、「来てよかった」と思えた。
ある日の給食終わりの時間。
別室で課題をしていると、廊下から聞き慣れた足音が近づいてきた。
コンコン。
「入るね。」
ドアを開けたのは養護の先生だった。
「今日は来られたんだね。」
先生はそう言って、私の隣に座る。
「会えてよかった。」
たったそれだけの言葉だった。
でも、その一言が胸にじんわりと広がっていく。
「先生……。」
「ん?」
「今日、来ようか迷ってました。」
先生は静かにうなずいた。
「そうだったんだね。」
責めることも、「もっと頑張ろう」と言うこともない。
ただ、私の言葉を受け止めてくれる...
「来られたこと、それだけですごいよ。」
先生はいつもそう言ってくれた。
だから私は、少しだけ自分を認められる気がした。
その日からだった。
学校へ行けた日は、養護の先生が必ず別室へ顔を出してくれるようになった。
五分の日もあれば、十分の日もある。
忙しい日は「またあとでね。」と笑ってくれる。
その『あとで』を、本当に守ってくれる先生だった。
私は少しずつ気づき始めていた。
学校へ来る理由は、「勉強」だけじゃない。
先生たちに会いたい。
「おはよう」と言ってもらいたい。
その気持ちが、毎日少しずつ大きくなっていた。
そしてある日の放課後。
養護の先生は私に優しく声をかけた。
「Ami、少しだけ保健室のお手伝いしてみない?」
その一言が、私の日常をまた少し変えていくことになる。




