season1 第6話「少しずつ」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20話」
*"信じることは、ある日突然できるようになるものじゃない。毎日の小さな積み重ねが、少しずつ心を動かしていく。"
養護の先生に秘密を打ち明けてから、保健室へ行くことが少し増えた。
「おはよう、Ami。」
先生はいつもと変わらない笑顔で迎えてくれる。
秘密を知ったからといって、先生の態度は何一つ変わらなかった。
それが、どこか嬉しかった。
保健室では、学校の話だけじゃなく、いろいろな話をした。
好きな季節。
好きな音楽。
休みの日は何をしているのか。
先生は、一つひとつゆっくり質問してくれる。
「Amiは夏と冬、どっちが好き?」
「好きな給食は?」
「最近、少しでも笑えた日はあった?」
答えられる質問もあれば、答えられない質問もあった。
そんな日は先生が笑って言う。
「今日はパスでも大丈夫。」
その言葉に、何度も救われた。
先生は、私が話せるようになるのを待っているだけじゃなかった。
私が話しやすいように、少しずつ扉を開けてくれていた。
だから私も、少しずつ答えられるようになっていった。
「今日は眠れた?」
「……少しだけ。」
「そっか。それでも学校に来られたね。」
その一言が嬉しくて、思わず笑ってしまった。
「笑った。」
先生が嬉しそうに言う。
「今、笑ったね。」
その言葉が照れくさくて、私は顔を伏せた。
「……先生。」
「ん?」
「先生と話してると……少しだけ安心します。」
言った瞬間、恥ずかしくなった。
でも先生は驚いたように目を丸くしたあと、優しく微笑んだ。
「そう言ってもらえて嬉しい。」
その笑顔を見て、私も自然と笑っていた。
保健室を出て別室へ戻る廊下。
窓から入る夏の風が、制服の袖を揺らした。
私はまだ教室へは行けない。
まだ毎日、不安になる。
それでも。
学校へ来る理由が、一つだけ増えていた。
~先生に会いたい~
そんな気持ちを抱くようになった頃、私の学校生活は少しずつ変わり始めていた。




