season1 第5章 「秘密」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20話」
*"本当の強さは、一人で抱え続けることじゃなかった。"
養護の先生と話す時間が増えて、一か月ほどが過ぎた。
先生は毎日別室へ来てくれた。
「おはよう。」
「今日は暑いね。」
「昨日はゆっくり眠れた?」
そんな何気ない会話が、少しずつ私の日常になっていた。
私はまだ、自分のことをほとんど話せなかった。
それでも先生は焦らなかった。
「今日は話したくない日なんだね。」
そう言って笑ってくれる。
その笑顔に、何度救われただろう。
ある日の清掃後。
保健室には私と養護の先生、二人だけだった。
静かな部屋に、時計の針の音だけが響いている。
先生は私の向かいに座り、優しく尋ねた。
「最近、少し元気がないように見えるけど……何かあった?」
私は首を横に振った。
「大丈夫です。」
そう答えた瞬間、自分でも苦しくなった。
本当は、大丈夫なんかじゃない。
でも、どう話せばいいのか分からない。
先生は少しだけ間を空けて、穏やかな声で言った。
「無理に話さなくてもいいよ。」
「でもね、Amiが話したくなったときは、私はちゃんと聞くから。」
その言葉を聞いた途端、目の奥が熱くなった。
私は制服の袖をぎゅっと握りしめた。
しばらく黙ったあと、小さな声でつぶやいた。
「……先生。」
「うん。」
「私……自分を大切にできないことがあって……。」
声が震えた。
それ以上は、うまく言葉にならなかった。
先生は驚いた顔をすることも、責めることもなかった。
ただ、ゆっくりとうなずいてくれた。
「話してくれて、ありがとう。」
その一言で、張りつめていた心が少しだけほどけた。
私は初めて、自分が抱えていた秘密の一部を先生に打ち明けた。
先生は静かに言った。
「これからは、一人で抱えなくていい。一緒に考えていこう。」
その言葉を聞いたとき、胸の奥に小さな灯りがともった気がした。
この日を境に、私は少しずつ思うようになる。
もしかしたら、この先生になら、もう少しだけ自分のことを話せるかもしれない。
話してもいいのかもしれないと。




