season1第4章 「はじめまして」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20章」
*"人に頼ることは、弱いことだと思っていた。だけど、本当は違った。"
季節は少しずつ夏へ近づいていた。
相変わらず私は3限から給食の時間までは別室で過ごしていた。
教室へ入ることは、朝から来れる日は1,2限と5,6限しか入ることができない。
ほとんど教室に入れず廊下にいる時もあったが、それでも学校へ来ることだけは続けていた。
昼休みになると、国語担当の先生がいつものように別室へやって来た。
「Ami、今日は一人紹介したい先生がいるんだ。」
先生の後ろから、一人の女の先生がゆっくり部屋へ入ってきた。
「こんにちは。養護の先生です。」
優しく笑いながら、私の目線に合わせるようにしゃがむ。
「はじめまして。」
私は小さく頭を下げることしかできなかった。
その日、養護の先生は五分ほど話をして帰っていった。
学校のこと。
好きな教科。
好きな食べ物。
「無理に答えなくても大丈夫だからね。」
その一言に少しだけ安心した。
翌日も、その次の日も...
養護の先生は別室へ来てくれた。
「今日は朝ごはん食べられた?」
「昨日は眠れた?」
「最近、何か楽しかったことあった?」
先生は、私が話しやすいように、一つずつゆっくり質問してくれた。
答えられない日は、「うん、大丈夫。」と笑ってくれる。
その時間が、少しずつ楽しみになっていた。
でも、その頃の私は、誰にも言えない秘密を抱えていた。
制服の袖の下に隠していた、誰にも見せたくないキズ。
誰にも知られたくない。
知られたら、きっと嫌われる。
そう思っていた。
ある日、養護の先生はふと私の表情を見つめて言った。
「Ami。」
私は顔を上げた。
「一つだけ聞いてもいい?」
先生は優しい声のまま、少しだけ言葉を選ぶように続けた。
「最近、自分のことを大切にできなくなるくらい苦しいこと、ある?」
その質問に、私は何も答えられなかった。
でも。
胸の奥が、少しだけ苦しくなった。
どうして、この先生は。
まだ出会って間もないのに。
私の心を見つけたような気がしたのだろう。




