season1 第3章 「少しだけ」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20話」
*"心を開くというのは、大きな勇気じゃない。たった一言から始まることもある。"
別室で過ごす毎日にも、少しずつ慣れてきた。
朝、学校へ来て。
別室の先生に「おはよう」と言われる。
窓の外を眺めたり、本を読んだり、課題をしたり。
そんな毎日だった。
昼休みになると、ときどき国語担当の先生が顔を出してくれた。
「今日も来たよ。」
そう言って、いつもの椅子に座る。
最初の頃は、先生が話して、私はうなずくだけ。
それでも先生は、「返事がなくても大丈夫」と言うように、穏やかに話を続けてくれた。
「昨日ね、帰り道で四つ葉のクローバーを見つけたんだ。」
「……。」
「小さい頃は見つけるの得意だったんだけど、久しぶりだったな。」
先生は楽しそうに笑う。
私は思わず先生の方を見た。
すると先生は嬉しそうに言った。
「今、目が合った。」
その一言が少し恥ずかしくて、私はすぐに目をそらした。
でも、その日は違った。
先生が帰ろうと立ち上がったとき。
気づけば私は、小さな声で言っていた。
「……先生。」
先生がゆっくり振り返る。
「……はい?」
「四つ葉……見つかって、よかったですね。」
自分でも驚くくらい小さな声だった。
先生は一瞬目を丸くすると、ふわっと笑った。
「ありがとう。」
その笑顔は、今まで見た中で一番うれしそうだった。
たった一言。
それだけなのに、胸の奥が少しだけ温かくなる。
話せた。
先生と、ちゃんと話せた。
その日から、先生は以前より少しだけ長く別室に来てくれるようになった。
そして、ある日の昼休み。
先生はいつもとは違う表情で言った。
「Amiに紹介したい先生がいるんだ。」
先生の後ろには、白衣を着た一人の先生が立っていた。
優しく微笑むその人との出会いが、私の毎日をまた少し変えていくことになる。




