season1第2章 「もう一つの教室」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20章」
*"居場所は、教室の中だけじゃない。そんなこと、この頃の私はまだ知らなかった。"
教室へ入れない日が続いた。
朝、学校には来る。
でも、チャイムが鳴る頃には私は教室ではなく、小さな別室の椅子に座っていた。
時計の音だけが静かに響く部屋。
窓から聞こえる校庭の声。
笑い声も、授業を受ける友達の声も、どこか遠くの世界のように感じていた。
「ここにいていいのかな...」
何度もそう思った。
みんなは教室で過ごしているのに、私だけ違う。
そんな自分が嫌だった。
それでも、別室の先生は何も責めなかった。
「おはよう、Ami。」
その一言を毎朝変わらずかけてくれた。
返事ができない日もあった。
小さくうなずくだけの日もあった。
それでも先生は、「今日は天気がいいね」「昨日より少し暖かいね」と、他愛もない話を続けてくれた。
ある日の昼休み。
コンコン、とドアをノックする音がした。
「失礼します。」
聞き覚えのある声だった。
国語担当の先生だった。
「少しだけ顔を見に来たよ。」
そう言って、先生は私の向かいに座った。
「ここには慣れた?」
私は少し考えて、小さく首を横に振った。
先生は「そっか」とだけ答えて、それ以上は聞かなかった。
沈黙が流れる。
でも、不思議と気まずくはなかった。
帰り際、先生は立ち上がると、私に向かって笑った。
「話したくなったら、いつでも話しかけてね!」
私はその言葉に、小さく、小さくうなずいた。
たったそれだけのこと。
それなのに、その日は少しだけ心が軽かった。
その頃の私は、まだ知らなかった。
この別室が、
そして先生たちが、
少しずつ私にとって「学校で一番安心できる場所」になっていくことを。




