season1 第1章 「教室の扉」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20章」
*"居場所は、探しても見つからないものだと思っていた。あの日までは。"
四月。
新しい制服、新しい教室、新しい友達。
みんなが楽しそうに笑っている教室の中で、私は一人だけ時間が止まっているような気がしていた。
「おはよう。」
誰かが声をかけてくれても、うまく返事ができない。
笑おうとしても笑えない。
教室の扉を前にすると、胸が苦しくなって、足が動かなくなる。
「入らなきゃ。」
そう思えば思うほど、涙がこぼれそうになった。
入学して数週間。
私は教室へ入れなくなっていた。
朝になると学校には行く。
でも、教室の前まで来ると動けない。
そんな毎日が続いていた。
ある日も、一人で廊下の窓を眺めていると、後ろから優しい声が聞こえた。
「……Amiさん?」
振り返ると、そこには国語担当の先生が立っていた。
「今日はいい天気だね。」
先生は何も聞かなかった。
どうして教室に入れないのかも、
どうして泣きそうな顔をしているのかも。
ただ、私の隣に立って、同じ窓の外を見ていた。
その沈黙が、不思議と苦しくなかった。
しばらくして先生は、小さく笑って言った。
「無理に教室へ入らなくてもいい。」
私は思わず先生の顔を見た。
「まずは学校に来られた。それだけで十分だよ。」
その言葉に、張りつめていた心が少しだけほどけた気がした。
私は何も答えられなかった。
それでも先生は困った顔ひとつせず、
「また話そう。」
そう言って職員室へ戻っていった。
その日から私は少しずつ知ることになる。
あの日、あの先生の一言が、
私の世界を少しずつ変え始めていたことを。




