season1 第19話 「ここにいていい」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20話」
*"頑張りたいのに、身体がついてこない。そんな私を、先生たちは何度も同じ言葉で迎えてくれた。"
中学三年生の夏を過ぎた頃。
午後になると頭痛がする。
そんな日が、少しずつ増えていった。
最初は「少し休めば大丈夫」と思っていた。
でも、保健室へ行く回数は日に日に増えていった。
午前中は教室にいる。
授業も受ける。
けれど、お昼が近づくと頭が重くなってくる。
そして午後になると、保健室へ向かう。
「また来たね。」
養護の先生は、いつも変わらない声で迎えてくれた。
「……すみません。」
「どうして謝るの?」
「授業、出られなくて……。」
先生は少し笑った。
「休むことも大事なことだよ。」
私は黙ってベッドに横になった。
教室に戻れない自分が、少し嫌だった。
ーー1度だけ、凄く体調悪くなった時に養護の先生に
「ドクターストップだよ!倒れそうになる前に必ず近くにいる先生に言って!」って強く言われたこともありました。
その時は体温が高いまま教室に戻ろうとして、ベットから移動する時にフラついてたからだと思います。
中3になったばかりの頃は、毎日朝から学校に行けていた。
ちゃんと授業も受けられていた。
「このまま大丈夫かもしれない」
そう思っていた。
だからこそ、また身体がついてこなくなることが怖かった。
ある日、帰り際に担任の先生が保健室へ来た。
「Ami、今日どうだった?」
「午後から頭が痛くなりました。」
「そっか。」
先生は少し黙ってから言った。
「最近、保健室にいること増えたね。」
「……はい。」
「無理してない?」
私はすぐには答えられなかった。
「……大丈夫です。」
先生は私を見ていた。
でも、それ以上は聞かなかった。
「そっか。でも、何かあったら言ってね。」
「はい。」
それから少し経った頃。
私は新しいキズを抱えていた。
隠しているつもりだった。
でも、帰り際。
先生と並んで歩いていて先生に腕を組まれた時に、「痛い!」って言ってしまい気づかれてしまった。
先生の表情が変わった。
「Ami……怪我してる?」
私は何も言えなかった。
言葉が出てこなかった。
先生は私を責めなかった。
ただ、
「保健室、行こうか。」
と静かに言った。
これはただの怪我ではなかったから。
保健室へ行くと、養護の先生も来てくれた。
二人の先生と、私。
いつもより長い時間、そこで話をした。
私は何度も黙り込んだ。
うまく話せない。
何から話せばいいのか分からない。
それでも先生たちは待ってくれた。
「話せるところからでいいよ。」
担任の先生が言った。
その言葉を聞いて、少しだけ顔を上げた。
「……ごめんなさい。」
「謝らなくていいよ。」
また、その言葉だった。
スポーツテストの日にも聞いた言葉。
養護の先生からも、何度も聞いてきた言葉。
私は少しずつ思った。
先生たちは、私を怒るためにここにいるんじゃない。
私が苦しいときに、そばにいるために来てくれている。
それが分かると、少しだけ涙が出た。
「……先生。」
「うん。」
「私、ちゃんとできてますか?」
担任の先生は少し考えてから答えた。
「ちゃんと頑張ってるよ。」
「……でも。」
「学校に来てる。授業も受けてる。辛いときは休むこともできてる。」
先生はゆっくり続けた。
「それだけでも十分だよ。」
私は何も言えなかった。
ただ、涙を拭いた。
帰る頃には、外が少し暗くなっていた。
保健室を出る前、養護の先生が言った。
「また明日ね。」
担任の先生も、
「明日、無理しすぎないでね。」
と言ってくれた。
私は二人を見て、小さくうなずいた。
「……はい。また明日。」
中学一年生の頃。
私は、学校に居場所がないと思っていた。
中学二年生。
教室には入れなくても、先生たちのいる別室が私の居場所になった。
そして中学三年生。
今度は教室にも行けるようになった。
それでも、辛くなる日はある。
そんなとき、戻れる場所がある。
保健室。
先生たちのいる場所。
「ここにいていい」と思える場所。
私は少しずつ気づき始めていた。
泣くことは弱さじゃない。
誰かの前で涙を流せるのは、その人を信じられた証なんだ。
そして季節は少しずつ春へ近づいていく。
卒業まで、残された時間はもうわずかだった。




