season1 第16話 「同じ先生、少し違う私」
これは実際に経験した中学の頃の経験をもとに書いた小説です。「全20話」
*"気づけば一年が過ぎていた。何も変わっていないようで、私の中には小さな変化が生まれていた。"
中学二年生の後半。
学校での過ごし方は、相変わらずだった。
教室には入れない。
廊下にいたり、空いている狭い教室で過ごしたりする。
授業を受けることもなかった。
3限、4限と給食の時間は別室。
大きな変化はない。
それでも、先生との関係だけは少しずつ変わっていた。
「Ami、おはよう。」
担任の先生が廊下で声をかけてくれる。
「おはようございます。」
それが毎日のようになっていた。
別室にも来てくれる。
「今日もここにいたんだね。」
「はい。」
「元気?」
「……普通です。」
そんな短い会話。
でも、その積み重ねが私には大切だった。
養護の先生とも、以前よりたくさん話すようになった。
学校のこと。
好きなもののこと。
何でもない話。
そして、私が話したくないときは、無理に話さなくてもよかった。
先生は、いつもそこにいてくれた。
季節が変わり、冬が来た。
窓の外が暗くなるのが早くなった。
別室で過ごしていると、夕方の冷たい空気が少しだけ窓から入ってくる。
私はそれを感じながら、ぼんやり外を眺めていた。
「寒いね。」
養護の先生が言った。
「寒いです。」
「じゃあ、もう少し暖かくしようか。」
そんなやり取りをしていると、別室のドアが開いた。
担任の先生だった。
「Ami、今日もここ?」
「はい。」
先生は笑った。
「そっか。」
それだけ言って、しばらく部屋にいてくれた。
私はふと思った。
一年生の頃は、先生と話すことさえ怖かった。
何を言えばいいのか分からなかった。
でも今は、先生が別室に来ることを当たり前のように感じている。
それが不思議だった。
そして、少しずつ季節が変わっていった。
冬が終わり、春が近づく。
中学二年生として過ごした一年も、もうすぐ終わろうとしていた。
振り返ってみると、私はこの一年の間に、ほんの少しだけ変わっていた。
教室には入れなかった。
授業も受けられなかった。
それでも、学校には来られる日が増えた。
先生と話せるようになった。
「また明日」と言える人ができた。
それだけでも、私にとっては大きなことだった。
そして、二年生最後の日。
いつものように別室で過ごしていると、担任の先生がやってきた。
「Ami、今年一年どうだった?」
私は少し考えた。
「……よく分からないです。」
「そっか。」
先生は笑った。
「でも、最初の頃より少し変わったと思わない?」
私は黙って考えた。
「……ちょっとだけ。」
「うん。先生もそう思うよ。」
その言葉が、少し嬉しかった。
春休み。
学校へ行かない日が続くと、少しだけ不思議な感じがした。
いつもの廊下も。
別室の机も。
先生たちの声も。
しばらく聞かないだけで、なんだか遠く感じる。
そして、春休みが終わった。
桜が咲く頃。
私はまた学校へ向かった。
今日から、中学三年生。
去年と同じ担任の先生。
また会える養護の先生。
それだけで、少し安心した。
最後の一年が始まる。
この一年が、私にとってどんな一年になるのか。
そのときの私は、まだ何も知らなかった。
体調が少しずつ変わっていくことも。
保健室で過ごす時間が増えていくことも。
そして――
ある日、担任の先生に初めてキズを見られることになるなんて。
まだ何も知らない私は、
「今年も先生がいる。」
そのことだけを、少し嬉しく思っていた。




