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転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜  作者: 稲盛 皆藤
第1章:爆走・丸虫食堂編

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第6話 黄金のネズミと物流革命の狼煙(のろし)

 まいど! 前回のクイズの正解は……そう、

 ③の「蜘蛛ですが、何か?」と問いかけたくなるような転生者だったよ!

 知る人ぞ知る異世界大ヒット作品のオマージュに頬が緩んだかな? 


 あのイレギュラーな存在が、マリアンの料理にどんなスパイスを加えるのか、

これからの展開に期待しててくれよな。

 さて、今回はついに「佐藤忠商事」の看板を背負っていた男、門倉メッキー

の過去と現在が交差する。エリート商社マンが、なぜ「0点の丸虫」にすべてを

賭けることにしたのか……。

 現世で見守る閻魔の冷ややかな視線と、魔界で「五色商会」という獣人ギルドを

背負いながら泥臭く情報を追うネズミの情熱。物流が、戦略が、そして「本物」を

求める魂が交わる第6話、とくとご覧あれ!

 物語は、門倉が「門倉」であった頃の記憶、砂漠の国での熱い商談から幕を開ける。

 ジリジリ……。

 アスファルトが焼け付く音が聞こえそうなほどの猛暑。

 摂氏50度。アラブ首長国連邦(UAE)、アブダビ。

 佐藤忠商事・資源開発チームのエース、門倉は、高級スーツにネクタイを締め直した。

 滴る汗が目に染みるが、彼は瞬きひとつしない。


「門倉さん、ドバイの成功は知っているだろう?

 我々もあんな派手なリゾートをここに作りたいのだ。

 水はいくらでも金で買う。

 噴水を上げ、砂漠に緑のカーペットを敷き詰めるのだ」


 豪華絢爛な王族の応接室。窓の外には蜃気楼が揺れている。

 王族のデベロッパーの言葉は、門倉にとって無知の極みに聞こえた。

 金で水を買う? それは商売であっても「事業」ではない。

 門倉が求めているのは、数字の裏にある「永続的な価値」だった。


「殿下。失礼ながら、ドバイの成功は『点』に過ぎません。

 一時の流行、一時の虚飾だ。私が提案するのは、

 アブダビの未来を百年にわたって支える『線』のインフラ

 ……地下500メートルに眠る化石水脈の引き上げと、

 それを核とした生活圏の構築です」


 門倉はタブレットの画面をスワイプし、複雑な地下水脈のシミュレーション図を

突きつけた。パチッ、という指先の乾燥した音が、静寂の中で鋭く響く。


「佐藤忠商事は、単なる貿易屋じゃありません。

 我々は『100年続く基盤』を売るんです。

 リゾートの噴水はいずれ枯れますが、私が掘り当てるこの水脈は、

 あなたの孫の代までこの国の喉を潤し続ける。

 金で買った水に価値はありません。

 この地に根ざした水こそが、本当の(アセット)なんです」


 徹底した現地調査、妥協を許さない地質への執着。

 門倉は数字の裏に隠された、目に見えない「真実の価値」を見抜く天才だった。

 だが、その「本物」への執着が、社内の権力闘争に巻き込まれ、裏切りの中で散っていった。


(……結局、この世は数字を弄る奴が勝つのか。俺が積み上げてきたものは、何だったんだ)


 そんな門倉の末路を、冷気漂うオフィスで眺めている男がいた。

 壁一面に並んだ巨大なモニター。そこには魔界へ転生した魂たちの「現在地」が、

 無機質なステータスと共に映し出されている。


「……ふん。佐藤忠の門倉、か」


 閻魔(システム)は、手元の端末に表示された門倉の評価を眺めた。


 【魂の鑑定:15点】



「能力は一流。だが、既存のシステムへの適応力が低すぎる。

 正論で世界が変わると思っている青臭いエリートだ。

 ……さて、ネズミの姿でその青臭さがどこまで通用するか。

 マリアンという測定不能のバグに、この15点のエリートが

 どう振り回されるか見ものだな。

 精々、泥水を啜って『本物』とやらを探すがいい」


 閻魔(システム)は鼻で笑い、次のモニターへと視線を移した。

 そこには、赤茶けた荒野を必死に駆け抜ける黄金色の小さな影が映っていた。



 舞台は魔界へと戻る。

 トコトコトコ、ササッ!と黄金の毛並みを揺らし、一匹のネズミが岩陰から岩陰へ

と爆走していた。メッキーだ。


「はぁ、はぁ……ちゅっ!

 このエリアのオーク共は、

 相変わらず『情報の非対称性』がひどいだちゅ……!」


 彼が名乗る『五色商会』。

 それは魔界に散らばる異端の獣人たち五名で構成された、独自ネットワークのギルドだ。

 しかし、それぞれが別々の地域で独立して商売を展開する「緩やかな連携」に留まって

いるため、組織的な情報共有システムはまだない。

 だからこそメッキーは、広大な荒野を己の足で駆け回り、泥臭く情報を拾い集めるしか

なかったのだ。

 パチ、パチパチ。小さなノートに、ネズミの爪で細かな情報を刻み込む。


(北の森のキャベツは今、収穫が遅れてる。西の村の岩塩は、最近の地震で質が変わった……)


 どれほど前世の知識があろうと、個人で集められる情報の絶対量には限界がある。

 情報の鮮度が落ちれば、それはただの紙屑と同じだ。そんな時だった。

 マリアンのキッチンカーの噂を耳にし、偵察に向かったメッキーは、そこで信じがたい

光景を目にした。マリアンの陣営では、これまでとは全く異なる「情報革命」が起きていた。


「おばちゃん、北東3キロ地点にオークの群れ。

 人数は40。空腹度はマックス。

 ……サトル、10分後に『豚キムチ定食』を40セット準備お願い」


 蜘蛛のシュンが静かに呟くと、横でゴブリンのサトルが魔力板(ダッシュボード)を叩いた。

 ピピピ、ポーン!魔力板(ダッシュボード)からは軽快な音が鳴り、画面上で複雑なアイコンが

踊っている。

 さらに驚くべきは、周囲の木々や地面だった。シャカシャカシャカ、ワサワサワサ!

 数え切れないほどの小さな蜘蛛たちが、まるで神経細胞のように荒野を駆け巡り、情報を

持ち帰ってはシュンの背中に触れて、データを「同期」させている。


 メッキーは、岩陰でガタガタと震えた。恐怖ではない。

 ゾクッ――!全身を駆け巡ったのは、圧倒的な「可能性」への興奮だ。


(……なんでちゅ、これは! 僕が足で稼いでいたバラバラの『情報の点』が

 ……この蜘蛛のネットワークを通じて、リアルタイムで『情報の面』になってるっちゅ……!

 これなら、バラバラに動いている五色商会の仲間たちも、

 ひとつの巨大な『商圏』に統合できるっちゅ!)


 メッキーの脳内コンピュータが、佐藤忠時代のフルスロットルで回転を始めた。


(シュンのネットワークは、物流と偵察。

 サトルの魔力板(ダッシュボード)は、在庫管理のフロントエンド。

 だが……足りない! 肝心の『経営判断ジャッジ』を下すアルゴリズムが不在だちゅ!

  誰かがこの膨大なデータを吸い上げて、利益を最大化する『脳』にならなきゃ

 宝の持ち腐れだちゅ……!)


「ちゅ、ちゅ、ちゅ……ちゅわぁぁぁ!!」


 メッキーは、思わず歓喜の叫びを上げてキッチンカーの窓口に飛び出した。


「おばちゃん! そのオペレーションは30点だちゅ!」


「な、なんだお前は!」


「僕はメッキー、元商社マンの今は見ての通りのネズミだよ」


 驚くサトルを無視して、メッキーはシュンの隣へ詰め寄った。


「クモさん。君のネットワークは最高だちゅ。

 でも、ただ『見る』だけじゃ勿体ない。その情報を僕に預けて。

 僕が、どの食材を、いつ、いくらで仕入れ、どのタイミングで

 宣伝を打てばいいか……全部、この魔力板(ダッシュボード)の中で

 『見える化』してやるだちゅ!」


 メッキーはサトルの手から魔力板(ダッシュボード)をビシッ、バシッ!と、ひったくると、

小さな指で画面を猛烈な速さでスワイプし始めた。

 シュッ、シュシュッ、ピコーン!

 メッキーが前世で培った「統計学」と「行動経済学」の知識が、魔界の未熟なシステムを

ハックしていく。


「見てだっちゅ。蜘蛛さんたちが拾った『オークの村の喧嘩』

 ……これは単なるトラブルじゃないよ。

 彼らが主食としている芋の凶作によるストレスだちゅう!

  だから、今すぐ芋に代わる『高カロリーな揚げ物』のキャンペーンを打つよ。

 同時に、五色商会の緑担当に連絡して、別のエリアの農場と先物契約を結ばせるだっちゅ!」


 画面上に、美しい供給曲線と需要予測グラフが浮かび上がる。

 サトルとシュンは、その「情報の魔法」に言葉を失った。

 マリアンが、厨房から顔を出す。


「……あんた、えらく自信満々だねぇ」


「当たり前だちゅ。僕は、本物しか認めない男だちゅよ。

 ……おばちゃん、まずはキミの料理を、この僕に『査定』させてほしいでちゅ」


 マリアンは黙って、メッキーが持ってきた高品質な岩塩を使い、炊きたての飯で

「おにぎり」を握った。

 ギュッ、ギュッ。小気味良い、しかし力強い音が響く。メッキーは一口齧った。

 パリッ。ホロリ。沈黙。メッキーの脳内で、アブダビの王族と食べた最高級の食卓が、

マリアンの握り飯によって粉々に打ち砕かれた。


(……嘘がない。この味には、数字の誤魔化しも、虚飾も、一切の嘘がない。

 僕が砂漠で求めていた、たった一滴の『真実』が、ここにあるだちゅ……!)


「……完敗だちゅ。おばちゃん、キミは『0点』だよ。

 あまりにも純粋すぎて、既存の市場価値(スコア)じゃ測れないだちゅよ」


 メッキーは涙を拭い、ビシッと立ち上がった。


「おばちゃん。屋台の規模はもう限界だちゅ。

 キミという最強のコンテンツには、それに相応しい『本丸』が必要だちゅ!

 僕が導き出した最適解……

 魔界第1号店の立地は、この先にある『忘れられた聖域』だちゅ!」


 メッキーの先導で辿り着いたその場所には、清冽な水脈がコポコポと湧き出していた。

 しかし、一行の目の前に立ちはだかったのは、店舗とは程遠い光景だった。


 ギギィ……。バサバサ……。崩れかけた石壁、抜け落ちた天井。

 数百年放置された巨大な廃墟。


「……メッキー、あんた正気かい?

 ここを店舗にするってのかい?」


「ちゅっ! 企画バイヤーの僕の仕事は、

 最高の『場所』を見つけることまでだちゅ。

 ここを再生できる狂ったプロは……あそこにいるだちゅよ」


 土煙の向こう、崩落した柱の下。

 ゴン、ゴン、ゴン!重厚なハンマーで地盤を叩く音が響く。

 そこには、巨大な角を持つ一人のミノタウロスが、鋭いまなざしで廃墟を「鑑定」していた。

 メッキー、流石は「佐藤忠」出身のトッププレイヤーだね!

 シュンの蜘蛛ネットワークを「情報インフラ」に変え、サトルの魔力板(ダッシュボード)

「経営の頭脳」に変える。

 彼がマリアンの『本物』の味に惚れ込んだことで、今はバラバラに動いている

「五色商会」の他の獣人たちも、やがてこの拠点に引き寄せられてくることになりそうだ。


 さて、拠点は決まった。食材の物流も整った。

 だが、あのボロボロの廃墟をどうやって「店」にするのか?

 次回、第7話。いよいよ「牛島建設」のプライドが、荒野に轟く!

 あの『不沈艦』のテーマが、地平線の向こうから聞こえてくるぜ……!


 システム(閻魔)からの出題【Q6:エリートの常識】


 門倉メッキーが前世の出張で訪れた場所のうち、最も富裕層が集まり、

彼が「インフラ」の重要性を説いた相手がいる国はどこかな?


 1.ドバイ

 2.アメリカ合衆国

 3.アラブ首長国連邦


 マリアンのヒント:

 メッキーの坊やが言ってたねぇ。『ドバイはキラキラしてるけど、何とか』って。

 エリートは細かいところまでうるさいわねぇ


 あ、そうそう! あんたたち、帰る前に画面の下にある星(評価)をポチッと押して、

ブックマークってやつもよろしく頼むよ!

 おばちゃん、閻魔様からの評価ポイントが上がると、次の仕入れの予算が増えて

助かるんだよねぇ〜! 頼んだよ!

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