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転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜  作者: 稲盛 皆藤
モールテナントと眷属の拡大編

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14/22

第14話 看板娘とオカモチと――手作り『杏』の明るいデコレーション!

 まいど! Q13の正解は

「③ 目の前の一人一人を大切にして、美味しい飯で笑顔にすること」

だねぇ!

 どんなに立派なシステムがあったって、食べる人がいなきゃ商売は始まらない。

商売の基本中の基本さね。

 

 さて、昨夜の「中華宴会おせち」の大宴会は最高に盛り上がったけど、

翌朝、お店を開けてみてわーしたちはハッと気がついたんだ。

 ピカピカの新店舗『杏』が建ったはいいけど、外を見渡しても人っ子一人歩いて

やしない。当然、お店にはお客さんも来ないし、やる気満々だったシュンちゃんや

蜘蛛たちも、出前の注文がなくて裏口で暇そうにブラブラ揺れてる始末さ。

 だけどね、お客さんが来ないなら、来たくなるような温かいお店を自分たちの手で

育てればいいのさね! 


【♪ のんびりとした昭和の下町ジャズ(アコーディオンとウクレレが優しく奏でるBGM) ♪】


「そいじゃ、まずはハタキとペンキを持って大掃除とデコレーションといこうっかねぇ!」

 ちゅん、ちゅん……と、魔界のどこかから飛んできた不気味な三つ目の鳥が鳴く、静かな朝。

 新装開店したはずの下町中華『杏』の広々としたフロアには、気まずいほどの静寂が流れて

いた。


「……閑古鳥って本当に鳴くんだちゅな」


 ネズミの獣人であるメッキーが、カウンターの端で頬杖をつきながらポツリと呟いた。

 いつもなら、前世の優秀な商社マンとしてデータやグラフを鋭く睨みつけているはずの

彼だが、手元の魔導板(ダッシュボード)には「来店数:0」「受注数:0」という冷酷な

数字が並んでいるだけだった。


「そりゃそうっすよ」


 元・港区社長ゴブリンのサトルが、店内のピカピカな床に大の字に寝そべりながら、

気の抜けた溜息をつく。


「前のトラブルの時に、このエリアに住んでた魔物や転生者たちは、

 みんな怖がって遠くへ離れちまったんですから。

 いくら神崎さんとの決戦が配信でバズったって、

 ここが安全で、しかもこんなに美味い店があるなんてこと、

 周囲の住民にはまだ全然認知されてないんですよ。

 マーケティングの基本として、認知度ゼロの場所に顧客は集まらないっす」


 がらーんとした広い店内。

 厨房の奥では、元・特級調理師の神崎玲二が、完璧に磨き上げられた包丁を手に

手持ち無沙汰そうに佇んでいる。鍋も床もピカピカに磨かれているが、肝心の熱気が

そこにはなかった。


 そしてお店の裏口では――。


「はぁ……」


 元・ITエンジニアの蜘蛛の獣人・シュンが、大きな溜息をつきながら、自分の出した糸で

ハンモックを作ってぶら下がっていた。その周囲では、やる気満々で結成されたはずの

小さな蜘蛛たちもシュンと同調して、注文アラートが一切鳴らない魔導端末の周りで、

暇そうにハサミ脚をパタパタと動かして遊んでいる。


「ウサミチ、暇ならちょっと荒野の様子でも見てきてよ……。

 インフラをいくら整えても、トラフィックがゼロじゃ

 バックエンドエンジニアとしての僕の仕事がないよ……」


「無理無理。足自慢の仲間たちを集めて完璧なシフト表まで作ったのに、

 肝心の配達案件がゼロじゃ、みんな寝転がって日向ぼっこするしかないね」


 元・トップスプリンターでロジスティクスの鬼だった、配送長であるウサミチが長い耳を

だらんと垂らし、カウンターの椅子で死んだ魚のような目をしていた。

 せっかく建った立派な新店舗。だが、魂となる活気が、今の『杏』には圧倒的に足りなかった。



「――こーらあんたたち!

 朝っぱらからそんな冷え切った冷やし中華みたいな顔して並んでんじゃないよ!」


 ピシィィン!と、乾いた音がフロアに響く。

 見れば、背中にピカピカでグレーのランドセルを背負った小さな『ちび女将』――

マリアンが、自分の身の丈ほどもある巨大なお玉を床にドンッと突き立て、仁王立ちで

みんなを睨みつけていた。


「お客さんが来ないからって、だらだら身をよじってんじゃないよ!

 前の騒動でみんなが離れちまったならさぁ、この店から楽しそうな声を響かせて、

 『ここはもう安全だよ、こんなに美味しくて温かい店があるんだよ』って、

 周囲に教えてあげればいいじゃないのさ!」


「教えてあげるって、ちび女将。具体的にどうやってちゅか?

 広告を打つポイントの余裕なんてないよ」


 メッキーが首を傾げる。マリアンは不敵にニヤリと笑い、背中のランドセルから

大量の絵の具や色画用紙、環境に優しい木切れや廃材を次々と引っ張り出した。


「そんなの決まってるだろさね! 

 外から見てもパッと目が引くような明るい看板を増やして、

 中に入ればよだれが出ちゃうような可愛いメニュー表を、

 みんなの手でデコレーションするのさ!」


「手作りで、店を飾りつける……!?」


 元・ゼネコン一級建築士、ミノタウルスのミノが、その言葉にピクリと反応した。


「そうさ! ミノ、あんたは腕がいいんだから、

 お店の外に立てる大きな木製看板をあと三本作りな! 

 ペンジは手先が器用なんだから、夜でもピカピカ光るような

 綺麗な魔導ランプの枠をデコる!

 ミク、スライムアイドルのミモリ、ハユカ、アイル、シズ!

 あんたたちの可愛いセンスの見せ所さ。

 この色画用紙に、ウチのメニューの絵を可愛く描いて、POPを作っておくれ!」


「わあ、おもしろそう!

 私、お花の絵とかいっぱいつけて、

 メニュー表を世界一可愛くデコレーションしちゃう!」


 ミクがぷるぷると身体を弾ませて大喜びし、他のスライムアイドルたちも

「やるやるー!」と目を輝かせた。


 ただ座して客を待つのではない。自分たちの手で、店を明るく、温かく育てていく。

 マリアンの下町仕込みのポジティブな号令に、スタッフたちの目に一瞬で炎が灯った。


「フン。壁の強度は十分だ。だがよ、店舗のデコレーションなら、

 建築家としての俺の美学が火を吹くぜ!

 ただ飾るだけじゃねえ、(あん)の看板を背負うに足る

 一級品の立て看板に仕上げてやるさ!」


 ミノが巨大な腕を回し、裏庭から持ってきた良質な木材をカンナで削り始める。

 シュシュシュッと小気味良い音が響き、あっという間に美しい立て看板の土台が

出来上がっていく。


「ワイの出番やな!

 東大阪の工場のプライドにかけて、ただ明るいだけやない、

 中華屋らしい赤と黄色のあったか〜い光を放つ

 特製デコレーションランプを仕上げたるわ!

 魔導回路の調整なら任せとき!」


 オークのペンジが溶接魔術の火花をバチバチと散らし、楽しそうにランプの枠を組み立てて

いく。

 フロントでは、ミクとスライムアイドルたちが床に広大な画用紙を広げ、キャッキャと

笑いながらお絵描きを始めていた。


「ねえねえ、チャーハンにはお星様の飾りをつけようよ!」


「餃子の絵の周りには、ジューシーな肉汁のキラキラをピンクのペンで描くの!」


 彼女たちが楽しそうにデコレーションのPOPを作るたびに、その純粋な『楽しい』という

感情が、店内の空気をどんどん明るく、柔らかく変えていく。

 これこそが、数字には表れない店舗の魅力だった。


「……ふむ。文字の美しさなら、私も少しは自信があります」


 厨房から白い割烹着姿で出てきた、鬼族(オーガ)の神崎玲二が、静かに筆を執った。

 特級調理師としての凄まじい集中力で、彼はミクたちの描いた可愛いイラストの横に、

『元祖・極旨頑固餃子』『黄金乱舞炒飯』と、息をのむほど見事な達筆でお品書きを

書き込んでいく。その文字からは、料理に対する絶対の自信と、一本芯の通った職人の魂

が感じられた。


「おお、神崎さんの字、めちゃくちゃ達筆で美味そうっすね!」


 サトルが感動して声を上げる。

 メッキーも、手作りの看板にペンキで『営業中! はらぺこ大歓迎!』と楽しそうに

文字を書き込んでいた。


「……不思議だな。現世で最先端の商業ビルをプロデュースしていた時は、

 何億もの予算をかけてプロの業者に内装を作らせていた。

 だけど……こうやってみんなで泥臭く看板一枚を手作りしている方が、

 よっぽど店に『血』が通っていく感覚がするぞ」


「フハハハハ!

 それだよメッキー!

 これぞ、これこそがシステムに管理されない、

 手作りの『人情デコレーション』のナラティブだ!!」


 元・広告代理店トップクリエイティブディレクター銀狐のメコンが、高級な金細工の扇子を

バサバサと煽りながら、感動の涙を流して自分もメニュー表に折り紙の輪っかを貼り付けていた。



 数時間後――。

 静かだった『杏』は、見違えるほど明るく、温かい下町の中華屋へと生まれ変わっていた。

 お店の外にはミノが作った立派な立て看板が並び、ペンジの手による温かい光のランプが

優しく周囲の薄暗い荒野を照らしている。

 店内には、ミクたちが一生懸命デコレーションしたカラフルな手作りPOPが、壁やカウンター

を賑やかに彩っていた。

 それはまるで、殺風景な魔界に突如として現れた、温かい光のオアシスのようだった。


 すると、その楽しそうな気配と、明るいお店の灯りに誘われるように――。

 チリン、チリン……と、事務室の魔導板(ダッシュボード)が、小さく、本当に小さく鳴り響いた。


「あ、あれ……?」


 サトルが魔導板(ダッシュボード)を覗き込む。その目が驚愕に見開かれた。


「注文……? バグじゃなくて、本当に注文が入ったぞ!

 ここから二つ隣の通りに住んでる、転生者の人からだ!

 ええと、内容は『ラーメン一個、チャーハン一個』!」


「キ、キタァァァァァーーーッ!!!」


 メッキーが拳を天高く突き上げる。


「周囲の住民が、俺たちの店の明かりに気づいて注文してくれたんだ。

 手作りの看板が、確かに消費者の心に届いたんだよ!」


「よしきた、待ってましたさね!」


 マリアンが小さな身体を弾ませ、厨房へと勢いよく飛び込んだ。


「神崎さん、麺を茹でな!

 わーしはチャーハンを煽るよ!

 記念すべき新装開店一発目の注文だ、気合を入れなよ!」


「御意!!」


 ジャカジャカジャカジャカッ!!!

 激しい鉄鍋の音が店内に心地よく響き渡り、ラードと醤油の最高に香ばしい香りが裏口へと

抜けていく。五感を刺激するその匂いを嗅いだ瞬間、ハンモックでブラブラしていたシュンが、

ピクッと耳を動かして起き上がった。暇そうに端末をいじっていた小さな蜘蛛たちも、

一斉にシャキッと整列する。


「女将、ラーメンとチャーハン、出来上がったよ!」


 神崎が手際よく、出来立ての熱い料理を器に盛る。マリアンは、厨房の棚からシルバーに

鈍く光る四角い金属製の箱を取り出した。前世の中華屋なら誰もが知っている、古き良き

『オカモチ』だ。

 ペンジが「いつか出前行く時に使うやろ」と、端材のアルミで作っておいてくれた、

愛情深い特製品だった。

 オカモチの蓋を開け、中に熱々のラーメンとチャーハンをすっぽりと収める。


「シュンちゃん、蜘蛛たち!

 それからウサミチ!

 最初の出前の初陣さね!」


 マリアンがオカモチの取っ手をウサミチに手渡す。


「いいかい、相手はまだウチの店を怖がってるかもしれない住民のひとりさ。

 だからこそ、ベタに、泥臭く、このオカモチを担いでスープが一滴も

 こぼれないようにマッハで届けておくれ。

 そして、『(あん)はいつでも、温かい飯を作って待ってるよ』って、

 笑顔で伝えてくるんだよ!」


「……了解!」


 ウサミチがガシッとオカモチの取っ手を握りしめる。

 その瞳には、退屈を吹き飛ばす熱い光が宿っていた。


「シュン、ルートのナビゲートを頼む!」


「任せてください。僕の糸の微弱な振動で、最短かつ、

 一番振動の少ない平坦なルートをリアルタイムで案内します。

 小さな蜘蛛たち、ウサミチの足元を先導して危険を排除して!」


「シュシャッ!」

小さな蜘蛛たちは、どこぞの軍隊がごとくに8本の足の1本をうまく使って一斉に敬礼した。

その姿はとても愛らしくもありプロフェッショナルでもあった。

 裏口の扉が勢いよく開く。ウサミチは爆風のような速度で荒野へと飛び出していった。

(あん)の出前、一丁あがりぃッッ!!!」



 同じ頃。新店舗から二つ隣の通りにある、窓ガラスの割れた薄暗い石造りの小屋。

 そこでは、ひとりの元・人間の柴犬顔の男が、ボロ切れのような毛布にくるまってガタガタ

と震えていた。

 男の名はトオル。前世では、来る日も来る日も深夜までサービス残業を強いられ、会社に

心身をすり減らした末に、駅のホームで倒れて50歳を前にこの魔界へ強制転生させられた、

いわゆる『使い潰された側』の人間だった。

 この魔界の管理システムはどこまでも冷酷だ。特別な戦闘スキルも、華やかな魔法も持たない

トオルは、システムから「価値なし・0点」の烙印を押され、日雇いのドブさらいの仕事すら

満足に与えられなかった。


 手元の魔導端末に表示されているLPポイントは、あと数日で完全にゼロになる。

 ポイントがゼロになれば、システムによって存在そのものを『消去』される。

 それがこの世界の絶対のルールだった。


「……ハハ、現世でも、この魔界でも、結局俺は誰にも必要とされない

 粗大ゴミのままなんだな……」


 凍えるような空腹と、暗闇の恐怖。トオルは消えゆく意識の中で、さっき魔導板(ダッシュボード)の片隅に

ふっと表示された、新しくできたという中華屋の画面を思い出した。

 あの神崎という高ポイントの特級調理師に勝ったという、小さなおばちゃんの店。

 どうせあと数日で消える命だ。残ったなけなしのポイントをすべて叩いて、トオルは生まれて

初めて、魔界で「出前」のボタンを押したのだった。


「……注文なんて、届くわけないよな。

 こんな、システムの底溜まりみたいな薄汚い場所に、誰も来るわけが……」


 トオルが絶望の涙をこぼし、静かに目を閉じようとした、その瞬間だった。


 バァァァンッッッ!!!

「まいどっ!!!

 『中華屋 (あん)』の出前だよ!!!」


 凄まじい風の音と共に、小屋のボロい扉が勢いよく開け放たれた。

 光を背にして立っていたのは、ゼェゼェと激しく息を切らしながらも、シルバーの

オカモチを両手で大事そうに抱えたウサミチだった。

 その足元では、小さな蜘蛛たちも「届いたぞ!」と言わんばかりにハサミ脚を

パチパチと鳴らしている。


「え……あ……ウサギの、獣人……?」


 トオルが呆然と目を見開く中、

 ウサミチは「ふぅ、スープ、一滴もこぼしてないよね!」と足元の蜘蛛たちと確認すると、

トオルの枕元に膝をつき、オカモチの蓋をガチャンと開けた。


【♪ 哀愁と救済が入り混じる、静かで温かい昭和のストリングス♪】


 フワァァァァァァッッッ……!!!

 その瞬間、冷え切った暗い小屋の中に、圧倒的なまでの『熱量』と、暴力的なまでに

香ばしい匂いが爆発した。

 黄金色に輝くパラパラのチャーハン。器の熱気から立ち昇る、並々と注がれた琥珀色の

スープの白い湯気。


「な……んだ、これ……っ」


 トオルの鼻腔を突き刺したのは、かつて現世の実家の近くにあった大衆中華屋の匂い。

 仕事に疲れ切ってクタクタになった帰り道に、いつも自分のお腹を満たしてくれた、

あの懐かしい「油と醤油と人情」の匂いそのものだった。


「ほら、おじさん。ちび女将が言ってたよ。

 『温かい飯を、温かいうちに。

  はらぺこを一人残らず笑顔にするのがウチの商売だ』ってさ。

 冷めないうちに、早く食べなよ!」


 ウサミチが、手作りの割り箸をトオルの震える手に優しく握らせる。

 トオルはまるで何かに取り憑かれたように、震える手で箸を持ち、ラーメンの麺を啜り、

スープを一口、口に含んだ。


「ズズッ、――っ!!!」


 熱い。そして、涙が出るほど美味い。

 鶏ガラと野菜の旨味がじんわりと五臓六腑に染み渡り、ラードのコクが、凍りついていた

トオルの身体を内側から猛烈に温めていく。続いてチャーハンをスプーンで口に掻き込む。

 お米の一粒一粒に卵とチャーシューの旨味がしっかりと纏わりつき、噛んだ瞬間に口の中

に圧倒的な幸福感が広がっていく。


「う、美味い……美味いよ……っ!!」


 トオルの目から、大粒の涙がボロボロと溢れ出し、チャーハンの器の中にポタポタと落ちた。


「俺……現世でも魔界でも、ずっと『お前は無価値だ』って、

 数字だけで切り捨てられてきたんだ……。

 誰も俺のことなんて見てくれない、お腹が空いても、

 誰も助けてくれないって、ずっと思ってた……。なのに……っ」


 トオルは、涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら、熱々のラーメンを必死に貪り食った。

 冷え切っていた彼の心に、マリアンが鍋を振って込めた「お腹いっぱい食べなさい」という

泥臭い人情の熱量が、ダイレクトに届いていた。


「なのに……こんなに温かい飯を

 ……こんなに早く、届けてくれるなんて……っ。

 俺、まだ生きてていいんだな……っ。

 生きてて、よかったんだ……っ!!」


 声を上げて、子供のようにワンワンと泣き崩れるトオル。

 ウサミチはそんな男の背中を、ウサギの柔らかい手で静かに、優しくさすってやった。

 小さな蜘蛛たちも、2本の前足を使って、一斉に柴犬男の泣きまねをしている姿が愛らしかった。


「うん。生きてていいに決まってるじゃん。

 あの中華屋に来れば、いつでもあのおばちゃんが、

 お腹いっぱい美味い飯を作って待ってるからさ。

 だから、もう大丈夫だよ」


 トオルが泣きながら完食した、空っぽの器。

 それは、システムから「0点」と蔑まれた男の命が、たった一杯の人情中華によって、

確かに救い上げられた瞬間の証だった。

 

 まだ注文はたったの一件。だけど、オカモチで届けたこの小さな一杯の温もりが、

冷酷な魔界の理不尽をぶち破り、未来の巨大な『無限連結国家群(メガロモールステーツ)』の、

最も優しくて、最も強固な「核テナント」となったのだった。

 最後まで読んでくれてありがとねぇ!

 出前を届けたトオルさん、涙をボロボロこぼしてラーメンを食べてくれたんだってねぇ。

ウサミチからその話を聞いた時、わーしもちょっと目頭が熱くなっちまったよ。

 どんなに偉い神様やシステムが「お前は0点だ」って言ったってさ、ウチの店の前じゃ

そんな数字、ただのゴミクズさね。お腹を空かせて、美味い飯を食べて「美味い!」って

泣いて笑えるなら、それだけで100点満点なんだからさ!

 

 こうやって、目の前の一人一人を泥臭く救っていくことこそが、ウチの店の本当の

『仕込み』さね。

 あんた達がこうして読んで、ブックマークや評価(☆)をポチッとしてくれる熱量が、

ウチのオカモチの湯気をさらに遠くのはらぺこ達へ届ける力になるんだ。

これからも、ウチの店をしっかり支えておくれな!


システム(閻魔)からの出題【Q14:トオルが流した涙の謎】


① マリアンの中華屋(あん)にはオークやオーガ、ゴブリンやハピーまで居てとても怖くて

 食事どころではないと思っていたから

② 冷酷なシステムに切り捨てられて凍りついていた心が、マリアンの「温かい人情中華」

 とウサミチの優しさによって救われたから

③ 出前を頼んだことが今まで一度も無かったから、支払いでLPポイントが使えるかドコデモペイが

 使えるか心配でたまらなかったから


「ヒントはねぇ、空っぽになった器に込められた温もりさね。

 数字だけで人はお腹いっぱいにならないし、心も温まらないからねぇ。

 ……さあ、あんた達なら、どれが本当の正解か、もう分かってるよねぇ?」

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