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転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜  作者: 稲盛 皆藤
第1章:爆走・丸虫食堂編

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第10話 不動の重心――ゴーリキの鉄腕と巨大回廊の夜

 まいど!Q9の正解は「②届いた瞬間に料理が冷めている『鮮度ロス』」だ。

 ウサミチにとって、時間は単なる数字じゃない。マリアンの料理が

「最高に美味い瞬間」を届けるための、命のカウントダウンなんだね。

 さて、物流の道筋が見えたところで、次はいよいよ「ハコ」を完成させるための

巨大な資材が必要だ。魔界の物理法則を力業でねじ伏せる、あの「動かざる男」の出番だちゅ!


【♪ 昭和歌謡(重厚なブラスセクションと、腹の底に響くバリトンサックスの咆哮。

  夜の国道を彷彿とさせる泥臭いジャズ調) ♪】


「……重いもんを運ぶコツはね、力じゃない。……『覚悟』の置き場所なんだよ」

 「聖域」の建設現場に、絶望的な沈黙が流れていた。

 ミノが設計した食堂の心臓部。そこには、魔界の不安定な魔力濃度を一定に保つ

ための巨大な「鎮魂の巨石(モノリス)」を据える必要があった。

 重さ、推定50トン。

 並のオーガが数十人がかりでもビクともせず、魔力を帯びているため浮遊魔法も

受け付けない「動かざる災厄」だ。


「……ケッ、こればっかりは俺の『段取り』でも計算が合わねぇ。

 この巨石を運べるルートが、この先の断崖絶壁には存在しねぇんだ。

 自重で崖ごと崩落しちまう。物理的な限界点ってやつだ」


 建築士のミノが、図面を苛立たしく叩く。

 現場の職人たちも、その巨石を前にして手が出せずにいた。

 クレーン魔法も通じず、物理的な牽引も不可能。

 聖域の完成は、この一点で暗礁に乗り上げていた。

 その時、地鳴りのような足音と共に、巨大な影が現場に現れた。


 銀色の毛並みに、丸太のような腕。ゴリラの獣人、ゴーリキだ。

 彼は背中に、東大阪の工場長ペンジがその持てる技術の粋を集めて造り上げた

「超重量対応チタン合金製キャリー」を背負い、静かに巨石の前に立った。


 ゴーリキが巨石に手をかけ、その表面に刻まれた魔力の拍動を読み取った瞬間、

彼の意識は、アスファルトの匂いと黄色い回転灯が支配する「前世」の深夜へと飛んだ――。



 雨の国道16号線。時刻は深夜2時15分。

 先導車の黄色い回転灯が、激しく降りしきる雨のカーテンを不気味に、だが確かな

意思を持って照らし出していた。

 当時、ゴーリキは「特殊重量物搬送」の現場責任者だった。彼が運んでいたのは、

一基で数万世帯の電力を支える巨大発電所のタービン。総重量、数百トン。

 

 それは単なる「荷物」ではない。一度動き出せば止まることも、やり直すことも

決して許されない、国家の生命線そのものだった。

 タイヤ一つひとつにかかる数トンの荷重、路面のわずかな傾斜、雨による摩擦係数の

変化、そして空気圧の微細な変動。そのすべてが「事故」即「街の全壊」に直結する、

極限の緊張状態だった。


「……右、あと5センチ。……いや、3センチだ。

 ステアリングを固定。そのまま切れ」


 無線越しに飛ぶ、極限まで感情を排した郷田 龍騎(ごうだりゅうき)の声。

 巨大な多軸トレーラーが、数ミリのクリアランスで民家の軒先をかわしていく。

 ブレーキをかければ慣性で積載物がすべてを粉砕し、アクセルを少しでも踏みすぎれば

路面が自重に耐えきれず陥没する。

 世間が深い眠りについている間、彼らは「街の当たり前」を届けるために、孤独な闇の

中で路面と対話し、重心を測り続けていた。


 ある時、地盤の緩い旧道の交差点で、トレーラーの右後輪がわずかに沈み込んだ。


「郷田さん、無理です! これ以上進んだら

 ジャックナイフ現象を起こして、国道ごと横転します!」


 若い作業員たちが恐怖で顔を青ざめさせる中、彼は一人、雨の中、泥濘(ぬかるみ)

膝をついて路面を睨みつけた。


 彼が守りたかったのは、単なる契約上の荷物ではない。その荷物が届いた先に灯る、

何万もの家庭の「明かり」であり、翌朝に橋を渡る「名前も知らない誰かの日常」だった。

 その誇りのためだけに、彼はミリ単位でバラストの重量配分を計算し直し、自身の神経

を冷たい鋼鉄の車体へと同化させた。


「……俺が通すと決めた。

 計算は狂ってない」


 数時間に及ぶ死闘の末、トレーラーが難所を完全に抜けた時、東の空は薄暗い朝焼けに

染まり始めていた。


 輸送任務を完遂し、凍え切った体で駆け込む国道沿いの24時間営業のラーメン屋。

 カウンターから立ち上る、濃密な醤油とニンニクの匂い。


「……生きてるな」


 その一口が、肩に食い込んでいた数百トンの重圧を、ようやく「過酷な労働」から

「揺るぎない誇り」へと変えてくれた。

 誰にも知られず、名前も公表されない。だが、自分がこの道を通り抜けたからこそ、

地図に新しいインフラの線が引かれ、誰かの生活が守られる。

 それが、運び屋郷田 龍騎(ごうだりゅうき)という男の、人生のすべてだった。



「……計算は、もう終わっている」


 意識が魔界の断崖絶壁へと戻ってくる。

 ゴーリキの瞳に、鈍い銀色の炎が宿る。

 背中には、魔力を帯びて脈動する50トンの巨石。

 目の前には、物理法則さえも歪んだ「道なき道」。

 彼は前世で培った「軸重分散」の感覚を魔力に応用し、自分の足跡一点に集中する

はずの凄まじい重圧を、周囲の空間全体へと巧みに逃がしていく。


現世あっちには、俺たちが命懸けで造った頑丈なアスファルトがあった。

 ……だが、ここには俺の『覚悟』がある。それが一番硬い舗装材だ」


 ゴーリキが巨石を背負い、崖の縁へ一歩を踏み出した。

 バキバキと空気が軋み、空間が重力で歪む。



 現世の閻魔モニターからは、名前もなきプロの意地を讃えるコメントが、滝のような

勢いで流れ落ちていた。


『うおおお、一人で特殊運搬車シュナーベルやってんのかよ!』

『これが日本の職人魂だ! 重心管理が神がかってる! いけえええ、ゴーリキ!』



その時。


「ゴーリキちゃん! 背中の石に負けるんじゃないよ!

 あんたの背中は、これからこの店を支える一番大事な『柱』なんだからね!

  ……ほら、食べなさい!」


 仮設テントの奥から、マリアンの威勢のいい声が響き渡った。

 差し出されたのは、どんぶりから溢れんばかりの分厚いチャーシューが五枚も乗った、

スタミナ特化の『特製・拳骨チャーシュー麺』だ。

 ペンジが極限まで熱を封じ込めた特製鍋で、マリアンが巨大な「牙豚(ファングボア)」のバラ肉を、

特大の鉄箸で豪快に躍らせた、血肉を踊らせる一杯。

 ジュワァァァ……ッ!!

と焦がし醤油の香ばしい匂いが、死を予感させる崖の空気に力強く立ち込める。


「…………っ!!」


 ゴーリキは巨石を背負ったまま、箸を片手で受け取り、麺を豪快に啜り、大量のもやしの

山をかき分けて、脂の乗ったチャーシューを喰らった。

 暴力的なまでの脂の甘みと、ガツンと脳を揺さぶるニンニクの刺激が、ゴーリキの

細胞一つひとつに「高純度燃料」として注入される。


「……ああ、美味いな。

 ……あの時と同じだ。

 深夜、任務を終えて啜ったあの匂いだ。

 ……マリアンさん。ご馳走様。

 ……この一杯の重さ、確かに受け取った!」


 ゴーリキが吼える。

 彼の周囲で、マリアンの【日常平和領域(マイホーム・ドメイン)】が最大出力で活性化し、

崖から吹き付ける殺意の魔風が、すべてゴーリキの踏みしめる「踏力」へと物理的に

強制変換されていく。


ズドンッ!!


 一歩。道のない崖に、ゴーリキの巨大な足跡が「新しい道」を刻んでいく。

 崩落しかけた地盤を、彼は自身の魔力で強引に圧縮し、ダイヤモンドよりも硬い

「超高密度舗装路」として、一歩踏み出すごとに路面を再構築していった。

 

「物流に『不可能』の文字はない!

 運べないなら、俺が道になるだけだ!!」


 数分後。

 ゴーリキは、聖域の最深部、ミノが用意した基礎台座の上に、音もなく巨石を下ろした。


 ガチリ、と。

 パズルの最後のピースが、宿命の場所に嵌まるような、完璧な設置音。


「……誤差、0.5ミリ以内。……据付、完了だ。

 旦那、あとの『段取り』は頼んだぜ」


 ゴーリキが膝をつくと同時に、ミノ、メッキー、ウサミチ、そして職人たちが一斉に

駆け寄った。


「……やっただちゅ! ゴーリキさん、

 あんたは最高の『運び屋』だちゅ!」


「……フン、これなら俺の設計した屋上庭園も、ビクともしねぇ。

 ……最高の土台を、最高のタイミングでありがとな、ゴーリキ」


 現場に、これまでになかった強固な一体感が生まれていた。

 夕闇の中、ゴーリキが切り開いた「巨大資材輸送ルート」は、後に魔界最大の物流回廊

へと発展することになる。

 職人たちが肩を組み、マリアンの追加のまかないを頬張る様子が現世に中継され、

シンクロバフが現場の熱気をさらに加速させていく。


 だが、その熱気を、少し離れた丘の上から冷ややかに見つめる影があった。


 仕立ての良い黒いスーツのような衣服を纏い、月光に銀色の毛並みを光らせる

美しい獣人――『関門大公』の放った刺客であり、情報工作と広報戦略のプロ、メコンだ。


 彼は手元の魔導端末(閻魔モニター)に表示された、急上昇する聖域の「熱量グラフ」

を細い指先でスクロールし、フッと息を漏らした。


「……ふむ。力業で(ことわり)をねじ伏せ、

 現場の数字を一時的に跳ね上げましたか。

 実に見事な『原始的(アナログ)な結束』だ」


 メコンはパチン、と心地よい音を立てて金細工の扇子を広げ、口元を隠す。

 その切れ長の瞳には、感動など微塵もなかった。あるのは、すべてを机上の計算式

で品定めするような、圧倒的な冷気だけだ。


「ですが、どれほど頑丈なハコを造ろうと、

 民衆の『認識』一つでそれは砂の城に変わる。

 システムが望むのは、波風の立たない調和の取れた世界

 ……あなた方のような、泥臭く自己主張の激しい0点は、

 ただの舞台ノイズ(バグ)なんですよ」


 メコンが扇子で聖域を指し示すと、彼の背後の影から、無数の不気味な魔鳥たちが

音もなく夜空へと飛び立っていった。


「さて、次は目に見えない『噂』という名の毒を、

 そのスープに混ぜて差し上げましょう。

 真実などどうでもいい。大衆が何を信じるか……

 そのデザイン(流行)を始める時間です」


 闇に紛れる魔鳥の羽音と共に、メコンの不敵な笑みが夜の帳に溶けていった。

 ゴーリキさんのプロ根性、痺れただちゅ!

 「動かせないなら、俺が道になる」……これぞ真の運び屋のプライドなんだね。

 マリアンの二郎系「拳骨チャーシュー麺」の猛烈なカロリーが、絶体絶命の危機を救ったんだ。

 これで「箱(店舗)」と「血管(物流)」は揃った!

 ……でも、次は「評判」を巡る目に見えない戦いが始まるみたいだちゅ。


 システム(閻魔)からの出題【Q10:運び屋の神髄】

 ゴーリキが輸送中に最も神経を研ぎ澄ませている「重心」の管理。

 彼にとって、荷物の重心がズレることは、何を意味するかな?


 ① 自分の力が足りないという恥

 ② 荷物の「魂」を汚す、プロとしての敗北

 ③ 周囲の建物や仲間を巻き込む「事故」への入り口


「ヒントは、ゴーリキちゃんが一口食べたラーメンのチャーシューの『安定感』にあるよ。

 大将なら、職人のこだわりが分かるよねぇ?」


 さあ、あんたたち! 巨大な国家の礎を築くために、応援の評価(☆)とブックマークを頼むよ!

 あんたたちの応援が、ゴーリキちゃんの背中をさらに強く支えてくれるんだからね!

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