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転生国物語 〜50歳強制転生の世界で神に0点と蔑まれた中華屋のおばちゃん、無限連結国家群メガロモールステーツの国王に成り上がる件〜  作者: 稲盛 皆藤
第1章:爆走・丸虫食堂編

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11/22

第11話 毒を盛る扇――広報官メコンの虚構戦術

 まいど!Q10の正解は「③周囲の建物や仲間を巻き込む『事故』への入り口」だ。


 ゴーリキちゃんにとって、重心がズレるってことは、ただの失敗じゃない。

「自分を信じて道を譲ってくれた人たち」を裏切る大惨事に繋がるんだ。

 だからこそ、あの1ミリの狂いも許さない執念が宿るんだねぇ。


 さて、ハコも物流も整った。あとは開店を待つばかり……と思いきや、不穏な風が

吹いてきたよ。目に見えない「言葉の毒」が、せっかく築いた絆をバラバラにしよう

としているんだ。

 聖域に築かれた巨大な「ハコ」――マリアンの新店舗『(あん)』の全貌が見えてきた。


 サトルとメッキーが夜なべして作った中長期経営計画と店舗レイアウト案。

 それを基にミノが設計した堅牢な構造と、ゴーリキが運び込んだ守護石。

 マリアンの要望を存分に取り入れた厨房設備を作るペンジと職人たち。

 シュンの蜘蛛ネットワークと、ウサミチが繋いだ迅速な物流網。

 ジッジーがリスクコンサルタントの知見で張り巡らせた、盤石のセキュリティ網。

 フロアマネージャー兼看板娘のミクが教育したスタッフのアイドル仲間たち。

 

 すべてが完璧に噛み合い、あとはマリアンが鉄鍋を振るうのを待つばかりだった。


 しかし、その周囲を取り巻く観衆(魔物や転生者たち)の空気は、数日前とは明らか

に一変していた。


「……ねぇ、聞いた? あの丸虫の店、

 実は『洗脳魔法』を料理に混ぜてるらしいわよ」


「ポイントを不正に奪い取って、

 食べた奴を強制的に眷属にしてるって噂だ。

 閻魔のシステムが0点なのも、実は邪悪すぎて測定不能だったからだって……」


 根も葉もない噂。

 だが、それは急速に、そして確実に「真実」のような顔をして広がっていた。


 その噂の源流にいる男が、丘の上から現場を見下ろしていた。


 美しい銀狐の獣人、メコンだ。彼は仕立ての良いスーツのような服を纏い、金細工の

扇子で口元を隠しながら、現世の閻魔モニターから流れる「炎上」のコメントを楽しげ

に眺めていた。


 メコンが扇子を閉じ、ふと視線を落とした瞬間、彼の意識は、高層ビルの窓から

見下ろした「前世」の東京・港区へと沈んでいった――。



 前世、メコンは大手広告代理店白々通(はくはくどう)のトップクリエイティブディレクター、

今野肇(こんのはじめ)だった。業界でその名を知らぬ者はいない「コンペキラー」として

恐れられていた。


「流行は作るもの。大衆は踊らせるもの」――それが彼の信条だ。

 数千万、数億の予算を動かし、凡庸な商品を「時代の象徴」へと仕立て上げる。

 嘘はつかない。ただ、見せ方を変え、幻想を盛り、人々の欲望に火をつける。

 

「お客様には教育が必要ですので」

 それが、冷徹な彼の口癖だった。


「いいですか、クライアント様。

 消費者は『性能』を求めているんじゃない。

 『それを所有している自分への酔い』を買っているんです。

 我々は、そのための物語を売るんですよ」


 深夜の会議室。冷え切ったコーヒーと、モニターのブルーライトに照らされた青白い顔。

 彼はヒット作を連発し、時代の寵児ともてはやされた。

 だが、その心は常に空虚に苛まれていた。


 自分が生み出した「ブーム」が、数ヶ月後にはゴミ捨て場に溢れる残骸になるのを

何度も見てきた。自分が語る「美しい物語」の裏側で、数字のために他者を蹴落とし、

誠実な職人を「古い」の一言で切り捨ててきた。


 ある時、彼はクライアントの不祥事を揉み消すための大規模な(ネガティブ)宣伝(キャンペーン)を指揮した。

 ターゲットは、実直に、だが不器用な経営を続けていた小さな下町の町工場。

 彼は「情報」という毒を使い、その工場の信頼を一夜にして粉砕した。


 工場が倒産した後、彼は空虚なオフィスで一人、高級な酒を煽った。


「……効率。数字。それがこの世界の正義だ。

 人情なんて、キャッチコピーの中にしかない」


 彼はシステムの「理想の駒」だった。

 だからこそ、転生後の世界でも高得点を叩き出し、狐の知略を持って「情報戦のプロ」

として重用された。


 今回の任務は、システムの調和を乱す「0点の異物」

 ――マリアンのブランド価値を完膚なきまでに叩き潰すことだった。


「……さて。次は『恐怖』という名のスパイスを足すとしましょうか」


 メコンが指を鳴らすと、彼が飼い慣らした諜報用の黒い魔鳥たちが一斉に飛び立った。

 彼らが撒き散らすのは、マリアンの料理に関する「科学的(システム的)な警告」。


『0点生物の調理したものは、因果律を汚染する。

 食べ続ければ、次の転生でポイントが没収される』


 システムの「ポイント主義」を信じる人々にとって、それは死刑宣告にも等しい脅し

だった。


 聖域の周囲に集まっていた観衆が、潮が引くように去っていく。

 マリアンが愛情込めて作った「仕込み」の匂いが、誰にも届かずに空虚に漂う。


「そんな……現世からの応援ポイントが、

 一気に逆流して大炎上してます……っ!」


 配信画面を管理するミクが、真っ青になって魔導板(ダッシュボード)の数値を読み上げ、震えていた。

 元エリート商社マンのメッキーが、その画面を険しい顔でのぞき込む。


「手口が鮮やかすぎる。これは個人の悪口じゃない。

 システムの『ルールへの恐怖』を突いた、

 組織的なディスインフォメーション(情報工作)だ。

 背後に一筋縄ではいかないプロがいる」


【♪ 軽快で都会的なスウィング・ジャズ

 (ハイハットの刻みが細かく、どこか人を食ったような軽薄な旋律) ♪】


 静まり返った店内に、コツン、コツンと革靴の音が響く。

 メコンが、優雅な足取りで店に入ってきた。


「おやおや、景気が悪いですねぇ、マリアンさん。

 せっかく立派なハコを造ったのに、誰もいない。

 これが『ブランドイメージ』の崩壊というやつですよ」


 マリアンは、カウンターの奥で黙々とキャベツを刻んでいた。


「……ブランド? なんだい、その新しい調味料の名前かね?」


「ふふ、相変わらず無知だ。……いいですか。

 この世界はシステムによって管理され、数字によって評価される。

 0点のあなたが提供するものは、この世界にとって『毒』なんですよ。

 私が一言囁けば、あなたの努力は一瞬で無に帰す」


 メコンは扇子を広げ、マリアンの鼻先に向けた。


「提案です。私の軍門に下りなさい。私のプロデュースがあれば、

 あなたを『システムの象徴』として売り出してあげてもいい。

 偽善でもいいから、数字になる物語を作るんです。

 そうすれば、あの方がご納得し、この街も救われる。

 WIN-WINでいこうじゃ、あーりませんか」


 マリアンは、包丁を置いた。

 そして、真っ直ぐにメコンの目を見つめた。


 その瞳には、彼が前世で何度も見てきた「愚かな職人の意地」とは違う、もっと

根源的な、太陽のような熱量があった。


「……メコンちゃん。あんた、さっきから難しいことばっかり言ってるけどさ。

 ……要するに、あんた、お腹空いてんだろ?」


「……は?」


 メコンの完璧なポーカーフェイスが、わずかに揺らいだ。


「あんたの顔、前世でわーしの店に来てた、

 仕事に疲れて顔色の悪いサラリーマンたちとそっくりだよ。

 数字だのイメージだの、そんなもんを飲み込んで、

 本当の味が分からなくなってるんだ。……ちょっと待ってな」


【♪ マリアン脳内BGM:力強い昭和の演歌

 (唸るベースと、魂を揺さぶるコブシの効いたメロディ) ♪】


 マリアンが鉄鍋を火にかけた。

 強火。限界を超えた火力。マリアンの【日常平和領域】が、メコンの放つ冷徹な知略

の魔力を、そのまま「熱」へと変換していく。


 バチバチィィィッ!!


 ラードが弾ける音が、聖域に轟く。

 マリアンが取り出したのは、大量のニラと、叩き潰したニンニク、刺激的なスパイス、

そして最後に新鮮なレバー。


 ジャァァァァァァッ!!


 鉄鍋の中で、素材たちが踊る。

 焦がし醤油の香りと、五臓六腑を刺激する強烈なスパイスの香りが、メコンの鼻腔を

容赦なく蹂躙した。


「……な、何を……」


「いいから食べな!

  あんたみたいな『頭でっかち』には、これが一番なんだよ!」


 ドンッ、とカウンターに置かれたのは、湯気と共に凶暴なまでのエネルギーを放つ

『特製・ニラレバ炒め』だ。


「……ふん、下品な料理だ。

 こんなもので、私の構築したロジックが……」


 言いながらも、メコンの口腔内が唾液で満たされていく。無意識に右手で箸を掴んでいた。

 一口、レバーを口に運ぶ。


 サクッ、ジュワァァァ……。


 臭みを完璧に抜かれ、旨味だけを凝縮したレバー。シャキシャキのニラ。それらを纏める、

刺激的なスパイスと濃縮されたタレの深み。


「…………っ!!」



 メコンの脳裏に、前世の記憶がフラッシュバックする。

 港区の高級フレンチではない。深夜のオフィス街の裏路地、ボロボロの暖簾をくぐって

食べた、あの一皿。

 数字に追われ、嘘にまみれ、疲れ果てた自分の胃袋を、唯一「本当のこと」で満たして

くれた、あの味。


「……美味い。……ああ、クソッ、

 悔しいほどに……美味いじゃないか」


 メコンの目から、一筋の涙がこぼれ落ちた。

 彼の作り上げた「虚構の噂」という魔法が、マリアンの一皿の「真実」によって、

内側からボロボロと崩れ去っていく。


「……お粗末様。……メコンちゃん。あんたの言葉の力は凄いよ。

 だったらさ、その力、誰かを怖がらせるためじゃなくて、

 みんなを『お腹いっぱい』にするために使いなよ。

 ……わーしの店の、エグゼクティブなんちゃら、まあいいや、

 チンドン部長としてさ」


 マリアンが笑う。

 メコンは、残ったタレをご飯にかけ、一心不乱に掻き込んだ。


「……完敗だ。……マリアンさん。

 あなたの『味』というナラティブの前では、私の小細工などノイズでしかない。

 ……いいでしょう。このメコン、あなたの『毒』に冒された一人として、

 最高の舞台を用意してあげましょう、そう、世界一のチンドンマンになりましょう」


 その光景は、ミクが密かに回し続けていた中継を通じて、現世の閻魔モニターへと流れていた。

 冷徹なエリート・大手広告代理店白々通(はくはくどう)のトップクリエイティブディレクター、

今野肇(こんのはじめ)が、マリアンの料理で泣きながら飯を食う姿。

 その圧倒的な「ギャップ」が、現世の視聴者たちの心を鷲掴みにした。


『うおおお、あの今野さんを黙らせたのかよ!』

『マリアンの飯、マジで食べてみたい……!』

『ポイントなんてどうでもいい! 腹減った!』


 現世からの爆発的な「いいね」と「応援」が、システム上の数値を逆流させ、

聖域の評価を瞬時に塗り替えていく。

 シンクロバフ発動。

 マリアンの店を覆っていた暗い噂は、今や「一度は食べるべき伝説の味」という熱狂

へと変わった。



 だが。

 あの方と呼ばれた、システムの管理者(閻魔)は、この事態を黙って見てはいなかった。


 ≪♪ 警告音(不協和音の電子音) ♪≫

  ≪♪ 警告音(不協和音の電子音) ♪≫

   ≪♪ 警告音(不協和音の電子音) ♪≫


『個体名:マリアン。システム評価軸への重大な干渉を確認。

 ……これ以上の逸脱は許容不可。……特級調理師(システム守護者)による、

 直接排除プロセスを開始します』

 メコンさんのニラレバ、最高だっただちゅ!

 どんなに綺麗な嘘を並べても、お腹の虫は騙せないんだねぇ。


 メコンさんの「情報操作」が、これからは味方としてマリアンさんを支えてくれる。

 心強いだちゅ!

 でも、システム側も本気を出してきたみたい。次は「本当のプロ」同士の戦いになるよ……!


 システム(閻魔)からの出題【Q11:情報の味】

 メコンがマリアンの料理を食べた時、彼の「虚構の魔法」が解けた最大の理由は何かな?


 ① 料理に魔法解除の薬が入っていたから

 ② 効率や数字では測れない「前世の温もり」を思い出したから

 ③ マリアンの包丁捌きが怖かったから


「ヒントは、あんたたちの心の中にあるよ。

 ……お腹が空いた時に一番食べたいのは、どっちだい?

 数字のついた高級品か、それとも心が温まる一杯か。

 ……答えは決まってるよねぇ?」


 さあ、あんたたち! 決戦に向けて、マリアンさんへの応援(☆)とブックマークを頼むよ!

 みんなの熱量が、システムを打ち破る「究極のスパイス」になるんだからね!

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