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過保護なお姉ちゃん系王女を救うために何度も死に戻っていたら、全部バレていて曇らせてしまった  作者: 鳥助


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7/9

7.情報共有

 ルティアが床に膝を付き、私を抱きしめる。その体は震えていて、感情の揺れが良く分かった。


「どこにも行かないで、ずっとそばにいて、ずっとずっとそばにっ……。独りにしないで、マナと一緒じゃなきゃダメ。一緒、これから一緒……ずっとずっと一緒……」


 どうして、ルティアはこんな風になってしまったの? ちゃんと守ってきたはずなのに、こんなに曇って……。とにかく、ルティアを落ち着かせなくっちゃ。


 ルティアの体に精一杯腕を伸ばして、背中を撫でてあげる。


「ルティア様、大丈夫です。これからもお傍にいますから」

「ほ、本当? 嘘じゃないわよね。ずっと、ずっと傍にいてくれるの? 傍でずっとお話をして、声を聞かせてくれる? 傍じゃなくてくっついて、体温を感じられる? ずっと、ずっとマナに触っていたいの。マナの体温を感じたいの」

「それでルティア様が落ち着くのであれば、いいですよ」

「あぁ、マナマナマナマナマナッ! マナがいる……こんなに近くに……ずっと、ずっと一緒……。もう離れない、傍にいる、体温を感じる……匂いも……」


 ギュッと抱き寄せられ、体に顔をこすり付けられる。スゥッと鼻で息をする音が聞こえると、少しだけ恥ずかしい気持ちになる。あんまり良い匂いじゃないと思うんだけど……。


 トン、トン、トンと背中を叩いてあげると、体の震えも止まってくれる。これで少しは落ち着いたかな?


「ルティア様にも戻る前の記憶が残っていたんですね」

「……えぇ、しっかり覚えているわ。私が暗殺者に殺された時の記憶から、その……マナが何度も死んだ記憶も……」

「そうですか。だったら、お互いにずっと記憶があったことになりますね」


 なるほど、そういうことか。だったら、お互いに記憶があることを知らずに、ずっと死に戻っていたという訳か。


 それは辛い思いをさせてしまった。暗殺者に殺された記憶があるということは、その痛みを知っているということ。その痛みを知りながら、時が戻っていたのなら相当辛いはずだった。


 そうか、ルティアはその時の記憶が辛かったんだ。その痛みを知っているから、私が痛い思いをしていることに同情してくれたのか。やっぱり、ルティアは優しい。私のことを思ってくれている。


 でも、大丈夫。その痛みもルティアを守っている代償。喜んで受けて立つ。だったら、これからも平気だと笑顔で言おう。そうすれば、きっとルティアも安心するはずだ。


「ルティア様は記憶があってお辛いですが、私は平気です。ほら、見てください。この笑顔」


 体を離して笑顔を見せる。そうしたら、きっとルティア様も安心してくれる。そう思ったのに――ルティアの顔が悲し気に歪んだ。


「どうして、そんなに笑っていられるの……。あんなに酷い目にあったのに、あんなに痛い思いをしたのにっ……。無理しなくてもいいんだよ。無理に笑わなくてもいいんだよ。どうして、そんなに優しいの? もっと、私を頼って……。私を罵ってくれてもいいんだよ……」


 ……あ、あれ? どうして、そんなに悲しい顔をするの? 安心させようと笑顔をみせたつもりなのに。


「辛かったよね、本当に辛かったよね。私のせいでなんども死ぬ思いをしたんだから……。だから、今度は私がマナを癒させて。マナが気持ちよくなるように頑張るから。……あっ、頑張るって私如きがおこがましいわよね。努力するから、いっぱい努力するから……だから、私を見捨てないで」


 両手で私の両頬を包み込み、真っすぐに見つめてきた。その目はやっぱり曇っていて、いつものキラキラしたルティアの目じゃない。


 そんな目をさせたくて、何度も死に戻ったわけじゃないのに。私はいつもの過保護なお姉ちゃんみたいなルティアがいいのに。


 ……きっと、また暗殺者に殺されるかもしれないっていう恐怖があるから、ルティアは狂ってしまったんだ。だから、暗殺者をどうにかしないと、ルティアは元には戻らない。


 だったら、暗殺者をどうにかするしかない。まだ力が足りないから、もっと力をつけないと。


 ルティアが死に戻る前の記憶があるというのなら、協力してくれそう。


「私もいっぱい努力します。なので、沢山修行の時間が欲しいのですが……」

「そ、そんなっ! マナが頑張る必要なんてないのよ! 全部、私が悪いんだから! マナは何もしなくてもいいっ、私が……私がどうにかするから! お願い、何もしないで!」


 協力を訴えると、ルティアは困惑したように首を振った。まさか、何もしないでと言われるとは……。流石にそれは出来ない。だって、ルティアを守れるのは死に戻りが出来る自分なのだから。


「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさい。私が生きているだけで、こんなにマナが苦しい思いをするなんて……。でも、マナからは離れるのはいや。私、マナに迷惑ばかりかけている……。どうか、私を嫌いにならないで。どうか、傍にいて。声を聞かせて……」


 ルティアは私にしがみつくと、すすり泣く。ようやく落ち着いたと思ったのに、泣かせてしまった。そんな姿を見るだけで胸が痛む。


 泣いて欲しくないのに、私が泣かせてしまった。ルティアには笑って欲しかっただけのに……。


「そんなに悲しまないでください。どうしたら、あなたを泣きやます事が出来ますか?」

「私の事なんでどうでもいいのよ。マナが一番大事。マナの気持ちが一番大事。だから、私はどうすればいい? 何をすれば、マナは満足してくれる?」

「えっと、ルティア様が笑ってくれるなら……」

「私が? そんなことでいいなら、笑うわ」


 そう言って、ルティアは笑う。だけど、涙の痕が残っていて、目は曇っていて……。とてもじゃないけど、私が望む笑顔ではなかった。


 こんな風にさせるつもりはなかったのに! どうすればいいの!?

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