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過保護なお姉ちゃん系王女を救うために何度も死に戻っていたら、全部バレていて曇らせてしまった  作者: 鳥助


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4/11

4.全部バレていた

 私の前で膝をつき、視線を合わせてくる。その目は曇っている。確かに私を見ているのに、その奥には別の光景が焼きついているみたいだった。


「どうして……」


 掠れた声。震えも怒りもない。ただ、擦り切れた疑問。


「ねぇ、どうして? 何度も、何度も……何度もマナが死んでいくの。私の前で。私を守ろうとして。血だらけになって、壊れて、動かなくなって……」


 指が私の肩に触れる。冷たい。


「私を……守ってっ……」


 無表情だった顔が、ゆっくりと崩れる。ひび割れるみたいに、くしゃりと歪んだ。


「私のせいよ! 全部、全部……私のせい! 私が王女だから。私が癒しの力を持っているから。私が弱いから。私が守られる側でいるから。マナは悪くない。ひとつも悪くない。なのに、あんなに傷ついて、何度も何度も死んでっ……!」


 涙が溢れているのに、拭おうともしない。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……っ! あなたに苦痛を味あわせたのは私。あなたを戦わせたのも私。あなたが刃を受けたのも、腕を失ったのも、息が止まったのも、全部……私がいるから!」


 私の腕を掴む。強く。爪が食い込むほどに。


「私がいなければ、マナは死なないの! 私が消えればいいの! 私がいなくなれば、あなたは戦わなくて済む。だから、だからっ……! 王女なんていらない! 私なんていらない! 守られる資格も、生きている価値もない! 全部、私が悪いから!」

「ち、違いますっ!」


 思わず声を上げてしまった。すると、ルティアの表情が怯えに変わる。


「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ! 私っ、余計なことを! いや、マナッ、私を嫌わないで! 見捨てないで! 私が悪いから、私を責めてっ! あなたは何も悪くないからっ!」


 ガタガタと体を震わせて、怯え始めた。自分を責めて、恐怖で怖がって……どうして、こうなった!?


 私はただルティアを救いたかっただけだ。こんな顔をさせるために、今まで守っていたわけじゃないのに!


 ルティアに痛い思いをさせないように、辛い思いをさせないように、身を挺して守ってきただけなのに。どうして、ルティアがこんなにも曇っているの!?


「お、落ち着いてください。ルティア様は全然悪くありません。悪いのは、守れなかった私なんですから」

「いやぁあああっ! そんなこと、そんなこと言わないでぇええっ! どうして、マナが悪者にならなくちゃいけないの!? そんなの絶対に許されない! 悪いのは私っ……私、私、私、私、私! 生きているだけで罪なのっ、マナの傍にいるだけで罪なのっ! でも、でもっ……離れたくないのっ! 私をっ、嫌わないでぇっ!」


 出来るだけ優しく言ったのに、ルティアは自分を責めることをやめない。それどころか、何か言葉をかけるごとに過剰になっているような気がする。


 私が救いたかったのはルティア自身だけじゃない。その心も救いたかった。いつものキラキラと輝いた笑顔を向けて笑って欲しかっただけなのに。


 どうして、曇り切った目で涙を流して、自分を責めることを止めないのだろうか。守ってきたはずなのに、何がいけなかった?


 もしかして、ルティア自身が私のように殺されるのが怖いからそうなっている? 確かに怖いよね……あんな暗殺者に狙われているんだから。


 いつ、自分が死ぬほどに辛い痛みを味わうか考えるだけで気が動転するのも分かる。そうだよね、痛いのは嫌だよね。


「ルティア様、大丈夫です」


 強い眼差しを向けて、ルティアの手を握る。


「ルティア様は私が絶対に守ります。暗殺者の手から、全て守り切って見せます」


 死ぬのが怖いというのなら、何度だって言うんだ。絶対にそんなことはさせないって。絶対に私が――。


「必ず、この身にかえてもお守りします」

「――ぇ」

「ルティア様をお救いするその日まで、私は何度だって死にます。ルティア様の代わりに死にますから、安心してください」


 そう言って、満面の笑みを浮かべた。その不安を消し去るように、恐怖を和らげるように。私は一番の笑顔を見せた。


 なのに――。


「……ぇ、そ……そんな……。マナが……また、死ぬ……? わ、私が……いるから……。私を……助けに? ……えっ……えっ……。続くの? これからも……マナが……マナが死ぬ……また……また……」


 その顔から表情が抜け落ち、目がどす黒く曇っていた。そして、ぶわっと涙が流れる。とめどなく流れ落ちて、床にボタボタと落ちていく。


 ――えっ? どうして、そんな顔に? 私はそんな顔をさせたくて、言ったわけじゃ――。


「い、いやぁあああっ! ごめんなさい、マナ! ごめんなさい、マナ! そんなつもりで言ったわけじゃないの! 私を守って欲しくて、言ったわけじゃないのよぉっ! 私っ、私っ……マナが酷い目に合うのが耐えられないだけなのっ! そんな事、しなくてもいいのっ! させたくないのっ!」


 また、ルティアが叫びだした。先ほどよりも怯えて、先ほどよりも自分を責めて。


 だから、そんな辛い思いをさせたくなっただけなのに! どうすれば、ルティアを元に戻せるの!?

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