表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過保護なお姉ちゃん系王女を救うために何度も死に戻っていたら、全部バレていて曇らせてしまった  作者: 鳥助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/38

15.ぬくもりに包まれて

 一緒に食事を取っている間、ルティアは目に見えて明るくなっていった。


 私が一口食べるたびに嬉しそうに微笑んで、次はこれよ、と世話を焼いてくる。その表情は柔らかくて、少しだけ誇らしげで――まるで、昔のルティアに戻ったみたいだった。


 それが、嬉しかった。


 ……もちろん、時折ふとした瞬間に影はよぎる。笑っているのに、どこか必死で。私を抱き寄せる腕が、ほんの少しだけ強い。


 それでも、さっきよりずっと軽くなっている。少なくとも、私にはそう見えた。それだけで、十分だった。


 元はと言えば――きっかけは、私だ。私という存在があるからルティアは亡くなった妹、ナディアのことを思い出した。あの曇った瞳。震える声。縋るような指先。


 あんな顔をさせたくなかった。だったら、いっそ傍にいない方がいいのではないか。一度は、本気でそう思った。


 けれど。私が少し距離を取ろうとしただけで、ルティアは不安そうな顔をする。取り繕うけれど、隠しきれない。笑っているのに、目だけが追いかけてくる。


 あの顔を見ると、胸が痛くなる。離れた方がいい、なんて言葉は、どこかへ消えてしまう。


 私は、ルティアを苦しめるために傍にいるわけじゃない。笑ってほしいから、傍にいる。安心してほしいから、ここにいる。守られてばかりじゃなくて、私もルティアを支えたい。


 それが、私の本心だ。


 だから決めた。ルティアの気持ちを、最優先にする。重いなら受け止める。甘えてくれるなら、いくらでも甘えさせる。必要とされるなら、何度でも応える。


 それは義務じゃない。私が、そうしたいから。ルティアが笑うと、嬉しい。私を見て安心する顔をすると、胸がいっぱいになる。


 過保護で、少し独占欲が強くて、でも誰よりも優しい王女様。そんなルティアが、好きだから。


 曇った瞳が少しずつ晴れていくなら、その隣にいるのが私でありたい。たとえ時間がかかってもいい。ゆっくりでいい。


 以前のように、明るくて過保護で、ちょっと困るくらいに私を甘やかしてくれるルティアに戻るまで。


 私は、離れない。


 ◇


「マナ、今夜は一緒にいましょう?」

「えっ?」


 ルティアの支度を済ませた後、自室に戻ろうとしたところを呼び止められる。今夜は一緒に?


「まだ不安でしょう? だから、私に傍にいさせて。マナの不安を取り除いてあげる」

「……と言いますと?」

「私のベッドで寝て。そしたら、添い寝するから。そうしたら、不安はなくなるでしょう? 昨夜みたいに」


 ……なるほど。私は昨夜に不安だと言ったから、それを改善するために一緒に寝ようと言ってきたのか。


 その優しさが心に沁みるが、本当にいいの? だって、王女様のベッドだよ? 私みたいなスラム上がりが一緒に寝ていいわけがない。


 でも、ここで断ると、またルティアが曇る気がする。そんな姿は見たくない。ということは、折れるのは私の方?


「……分かりました。傍にいてくださいますか?」

「えぇ、もちろん! マナの不安を私が解消してあげるわ!」


 控えめにいうと、パァッと表情を明るくして喜んだ。


「では、着替えて参ります」

「じゃあ、私は着替えさせましょうか? その方が楽よね?」

「っ!? い、いえ! 流石にそれは! で、では!」


 流石に着替えまで手を付けてもらえない。私は逃げるように部屋を後にした。


 そして、自室に向かうと寝着に着替える。気合を入れなおすと、再び王女の部屋へと戻った。


「ルティア様、戻りました」

「こっちよ、マナ」


 呼ばれて行くと、そこにはベッドに横たわったルティアがいた。本当に一緒にベッドに入ってもいいのか……。迷っていると、ルティアに手を引かれた。


「さぁ、マナは寝て」

「は、はい……」


 ドキドキしながらベッドの上に上がる。想像以上にフカフカで気持ちのいいベッド。そのベッドに恐る恐る体を沈ませると、ルティアが布団をかぶせてくれる。


「これで、一緒よ。私が傍にいるから、安心してマナは寝て頂戴」

「? ……あの、ルティア様も寝るんですよね?」

「私は寝ないわ。いつ、マナが不安で飛び起きても大丈夫なようにずっと起きている。その方が安心でしょ?」


 にっこりと笑っているのに、その目は暗い。相変わらずルティアの行動は重い。


 昨夜も寝ていないのに、今日も寝ないのは体に悪いんじゃないか? 何か、ルティアを寝かせる方法は……そうだ。


「いいえ、ルティア様も寝てください。寝て、私を守ってください」

「寝て、守る?」

「悪夢を見るんです。だから、ルティア様が眠って、私の夢に入ってきてください。そして、悪夢を退治するんです」

「まぁ、そうだったの。マナの夢にまで入り込んでくるなんて、とても悪い子ね。いいわ、私も寝て、マナの夢を守ってあげる」


 すると、目の色を変えて張り切った。良かった、これで寝てくれる。


 そのことに安堵していると、手をギュッと握られた。いつもの優しい手だ。


「こうしていたら、いつでも駆けつけられるわ。これで、安心して眠れるでしょ?」


 そう言って微笑む顔はいつもの過保護なルティアそのもの。あの日々が帰ってきてくれたようで、とても安心した。


「はい。ありがとうございます」

「じゃあ、目を閉じて。マナが眠りにつくまで、起きていてあげるから」


 その優しい声に眠気が襲ってくる。久しぶりの安心感で、スッと自然と眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載!

スラムの孤児は慎ましく生きたい~大賢者の遺産を継いだけど、救世主にはなりません~

旧作

転生難民少女は市民権を0から目指して働きます!

転生少女の底辺から始める幸せスローライフ~勇者と聖女を育てたら賢者になって魔法を覚えたけど、生活向上のため便利に利用します~

追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する

転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした

スラムの転生孤児は謙虚堅実に成り上がる〜チートなしの努力だけで掴んだ、人生逆転劇〜

ゾンビがいる終末世界を生き抜いた最強少女には異世界はぬるすぎる

元社畜はウィンドウで楽しい転生ライフを満喫中! ~ゲームのシステムを再現した万能スキルで、異世界生活を楽々攻略します~

異世界喫茶で再出発ライフ

ゴミスキルだと捨てられた少女たち、実は最強の生活能力スキルだったので気楽なスローライフ冒険旅を満喫する

推し命の転生者、弱小ポンコツな推し神様のために万能な推し活パワーで騎士爵領を大領地にする

過保護なお姉ちゃん系王女を救うために何度も死に戻っていたら、全部バレていて曇らせてしまった


この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~

コミュ障クラフターの私、引き継いだ能力が異世界では規格外すぎて無自覚に無双してしまう件~地味に暮らしたいだけなのに、なぜか注目されて怖いんですが~

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ