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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 19 理想のキスを考えよう!

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19-16 柊那由多のキス自論


「ちっがーーう! そこはイラストから読み解いてよ! これ、キスする寸前なの! ほら見て、二人、同じような表情してるでしょ!? 瞳に映るお互いの姿もそっくりでしょ!? こういうことだよ!」


「つまり、顔が似てる人でないと無理、と……?」


「バカバカ、何でそうなるのよ!? だったら私にはパパか恒河かの二択しかないじゃない! 顔じゃなくて表情! 表情から見える気持ちが大事だっつってんのよ! 要するに気持ちよ、気持ち!」


「もう、回りくどいわね。もっとわかりやすく言ってよ。それより、通知がうるさくてかなわないわ。電源落とすか説得するかしてよ」



 私は渋々スマホを取り、『取り込み中!』とだけ送ってベッドに放り投げた。



「じゃあわかりやすく『恋生き』で説明するね。実來と理仁は両想いになったじゃない。で、次の号でキスしたよね? 私、あのキスに納得いってないの。気持ちは通じ合ったけれど、まだそれだけだったから」


「気持ちが通じ合う以上のことなんて、ある? 自分も相手も好き同士なら、それでいいじゃない」



 城咲さんが不満げに眉をひそめる。


 良くない! ちっとも良くない!



「たとえ好き同士でも、好きだけで何でも許せるわけじゃないでしょ? 具合が悪い時は触れてほしくないだろうし、落ち込んでる時はそっとしといてほしいじゃない。好きだから手を繋ぎたいってこっちは思ってても、向こうは好きだから腕を組みたいって思ってたら、どっちかに合わせなきゃなんない。恋人同士になっても多分、そうやって片方を優先することの方が多いんじゃないかな?」



 私は城咲さんの手から、そっとイラストを抜き取った。



「実來のファーストキスは、理仁の不意打ちみたいなものだったよね。嬉しくないわけじゃなかっただろうけど、実來にもこんなキスがしたいって夢があったと思うの。シチュエーションじゃなくて気持ちの上で、今キスしたいって二人の思いが重ならなかったところがすごく残念に感じるんだ。だからこのキスには正直、ガッカリした」


「…………柊さんはお互いの気持ちが重なった時にキスしたい、と思ってるのね?」



 城咲さんが静かに問う。私はゆっくりと、でもしっかりと頷いた。



「我ながら、キスに夢見すぎだって自覚してるよ。今だ! って気持ちが重なることなんて、どれだけ好き合ってる二人でも高難度だと思うもん。両方が常にキスしたいと思っててもテンションの高まりに差があるだろうし、キスしたいしか考えずに過ごしてたら日常生活がままならないよね」


「た、高まりも考慮しなくちゃならないの? 思った以上に厳密なのね……?」


「多少の高低差には目を瞑るよ。でも最低限、今だ! ってとこは遵守してほしいよね」



 イラストを机にしまうと、私は代わりに理仁のピンの立ち絵を取って城咲さんに差し出した。



「さっきのはダメだけど、こっちならあげる」


「い、いいの? でもこれも原画じゃない……こ、こんな貴重なもの」


「いいよ。もらってくれたら嬉しいな。ファーストキス記念に」



 城咲さんは私と原画を交互に見てから、花が咲いたように笑った。



「ありがとう、柊さん……大事にするわ! 本当に本当にありがとう!」



 喜んでくれたようで何よりだ。私も安心して溜息を零した。


 ――実は理仁の造形モデルのベース、八重樫くんらしいんだよね。他にもいろんな要素を取り込んだそうだけど、峯岸さんからそれを聞いてからちょっと理仁愛が冷めちゃったんだ……。


 こんなに嬉しそうな顔してくれてるのにごめんね、城咲さん。親切心で押し付けるみたいになっちゃって。



「はぁ……バスケしてる理仁、やっぱりカッコいいわね……何だかどこかで見たことあるような走り姿だけど、もしかしたら夢で会っていたのかもしれないわ。ちょっと実來に申し訳ない気持ちになるわね」



 鋭いね。まんま八重樫くんの走る姿を参考にしてるよね。今日実際に見て、既視感でスンってなったよ。



「それじゃあ、私もお礼をするわね!」



 虚ろに笑っていたら、ハッピーオーラ全開の城咲さんが私の手を握ってきた。


 美少女との手繋ぎ! これは最高のお礼だあ!



「原点に立ち返って、留佳との恋人サポートにより一層力を入れるわ! キスも経験したし、今の私は以前とは違うわよ? 柊さんの夢を叶えてみせるから!」



 えぇ……えぇぇぇ……?

 そんなんいらんですよ……手繋ぎだけで十分ですって。



「恋人やっててサポートの方が疎かになっていたものね。こうしちゃいられないわ! 早速留佳にラインして、柊さんのキスの条件を伝えなくちゃ! 覚えるまで叩き込んでやるわ!」


「あ、それは非常に助かります。是非ともお願いします!」



 掌を大回転させ、私は城咲大明神様に平身低頭してご尽力をお願いした。


 柊の実を教えた城咲さんなら、きっとやってくれると信じてる! 城咲さんがきっちり私の言い分を伝えてくれれば、有瀬くんだってあんなにも雑にキスを求めようとはしなくなるはず!



 キスについては、誰が何と言おうと、たとえそれが好きな人であっても私は妥協しない。


 百万歩譲って、気持ちが重なる瞬間ではなくても、せめて好きの気持ちの種類だけは同じであってほしい。


 だから、有瀬くんとはキスしたくない。

 好きだと言い合った事実はあっても、有瀬くんが役目のために口走った好きと、私が本心を隠して伝えた好きとでは、あまりにも大きな隔たりがあるから。



 神様仏様、城咲様、私の夢なんて叶えようとしなくて結構です。だからどうか、雑の魔の手からこの唇を死守してください。

 贅沢言える立場じゃないのは重々承知しております。ですがファーストキスは、やっぱり本物の恋人としたいのです……。


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