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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 19 理想のキスを考えよう!

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19-15 エロが読みたきゃエロジャンルに行け


「今柊さんとキスしたら、私のファーストキスの相手は柊さんになるの?」



 が、この天然美少女は、どうもこの話題がお気に召してしまったらしい。



「ならないよ! セカンドだよ! どっちしても八重樫くんに泣かれるからやめたげて!」


「でも……柊さんのファーストキス相手にはなれるのよね?」



 意味深に言うと、城咲さんは婉然と笑みを浮かべた顔をぐっと寄せてきた。


 綺麗な二重の下から、黒く潤んだ大きな瞳が真っ直ぐに私を見つめる。鼻チュー寸前の距離に、艷やかな唇が薄っすらと開いて待ち受けている。



 僅かでも動けば、ほんの少し勇気を出せば、私の初めてはこの異次元級の美少女に捧げることが――――。



 邪な考えを断罪するように、スマホから連続で通知音が鳴った。


 確認するまでもない、有瀬くんだ。

 本日分の課題を終えるまで真央さんに取り上げられていたスマホが、返却されたらしい。



「やぁね、タイミングバッチリじゃない。どこかに隠しカメラでも仕込んでるのかもよ? 探してみたら?」



 毒気を抜かれたように城咲さんも身を引いて無邪気に笑う。


 そんなことするのは、私の周りじゃあんたくらいだよ! それにそんな知恵が、あの有瀬くんにあるわけないでしょ!



「ねえ……有瀬くん、明日家まで迎えに来るって。城咲さん、大丈夫? 有瀬くんが来る前に二人で逃避行する?」


「もう大丈夫よ。逃避行したって、あの脚力からはどうしたって逃げられないでしょ」



 諦めたように溜息をつく城咲さんに、私は一番聞きたかったことを尋ねた。



「城咲さんには、理想のキスとかなかったの? こういうシチュエーションがいいとか、こういうところでこういう感じで、とか、そういうふうに夢見たことない?」



 城咲さんはきょとんとして、軽く目を泳がせた。



「考えたこともないわね。別にいつでもどこでもいいわよ。ゴミ置き場でも、歯が全部折れて流血してても、何ならゲロ吐き散らしてる真っ最中でも気にならないわ」



 まじか……さすが、長年有瀬くんを追っかけてるだけあるわね。あの雑を相手に想定するなら、どんな夢やら理想やら抱いたところで撃破されるだけだもんね。


 でも今に限っては、城咲さんの相手は有瀬くんじゃない。今だけだとしても、城咲さんが自分で決めたことだ。


 責任を取るというなら、恋人としての役目をしっかり果たしてもらわなくちゃ。



「八重樫くんにはあるみたいよ。セカンドが私なんかでもいいって思うなら、それよりも八重樫くんの希望を叶えてあげてよ」


「え、八重樫くん、キスに希望があるの? 意外ね。あんなデカい図体して、乙女じゃない」



 うん、私もそう思う。少なくとも、語り合ったら城咲さんよりは女子トークっぽくなるし。



「覚えてる限りだと、夜景スポットとか、夕暮れの海とか、遊園地の観覧車の中とか言ってたかな。放課後の教室の机の下ってのもあった」


「ふうん、机の下なら一番簡単にできそうね。机さえあればいいんでしょ?」



 うっわ、誰かさんと同じこと言ってるよ。この人も大概雑よね。



「そ、その辺は八重樫くんと相談して決めて……。机の形状とかサイズとかもあると思うし」


「それもそうね。今度聞いてみるわ。ねえ、私からも聞いていい?」



 城咲さんにキラキラの眼差しで問われ、私はスマホ片手に有瀬くんに高速で返信していた指を止めた。



「柊さんには、こんなキスがしたいって夢があるの? 結構拘りが強そうだと思ってはいたけれど、しっかり聞いたことはなかったから。参考までに教えてほしいわ」



 また通知音が鳴る。

 スマホごとそれを放置して、私はデスクの引き出しから一枚の絵を取り出した。



「えっ、これ『恋生き』の実來(みくる)と理仁(りひと)……も、もしかして原画!? ええ!? ほ、本物!?」


「これはあげられないよ。ちょっと漫画とは違うけど、この二人が私の理想だから」



 峯岸(みねぎし)さん――五十嵐ネミ先生にお願いして描いてもらったイラストの二人は、いつもの制服姿で指先だけを軽く絡めて至近距離で見つめ合っていた。


 恐ろしいことにセッまでいきそうになっていた二人だったけれど、現在の連載ではそれどころじゃなくなっていて、ライバルの出現で心がバラバラになっている。

 理仁が不器用ゆえに自分を慕う女子を突き放せなくて、実來も実來で、彼にぶつけても理解してもらえない辛い胸の内をバイト先で出会った年上男子に打ち明けて、そのまま優しさに甘えてしまって……とまあ王道の展開ではあるものの、やはり五十嵐ネミ先生は素晴らしい。二人のライバルを魅力的に描くことで、彼らの熱狂的なファンまで生まれて『恋生き』の人気はさらに高まった。


 そうよ、私達はゲロ甘な桃色肌色全開のラブエッチが読みたいわけじゃないの。

 ヤキモキしたりハラハラしたり、そしてドキッとしてキュンとして、時折自分と重ねてンアァーって悶える少女漫画を求めているのよ!



「えっと……この絵、キスしてないけど……柊さんは断固として接触を認めない派なの? もしかして、留佳より潔癖症なのかしら?」



 恐る恐るといった手付きでイラストに触れていた城咲さんが、的外れなことを言う。


 この人! ほんっと! わかってないな!!


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