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アオハル of the Dead End! ~平凡女子高生、顔面チートで頭赤ちゃんな超雑男子とラブコメ(ほぼコメ)する~  作者: 節トキ
LESSON 19 理想のキスを考えよう!

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19-14 生態不明の謎生物とお清めキスするのは不可能


「柊さん、どうして泣いてるの? ああ、そうだったわね。柊さんはまだキスの経験がないものね。私から経験談が聞けるのが、そんなに嬉しいのね」



 ほら、やっぱりバカにしてる!


 ってこの人、何でこんなに余裕見せてんの!?

 好きじゃない相手とキスしたことに落ち込んでるんじゃなかったの!?

 それを好きな人に知られたくなくて、顔を合わせるのも怖くて逃げ回ってたんじゃないの!?


 私だったら好きでもない人とキスなんてしちゃったらベコベコに凹むし、それを好きな人に見られでもしたらこの世の終わりみたいに号泣しながら、その場でスクラブして無理矢理にでも唇の皮剥ぐよ!?



「柊さんは、家族と映画を観たことがある?」


「え? あ、あるけど」



 唐突すぎる問いかけに、想像だけで溢れて止まなかった涙が引っ込んだ。



「その時に、不意打ちでえっちなシーンになったことはない?」



 ねえ……?



「あれと全く同じ感覚よ。たとえ相手が何も思っていなくても、こっちが嫌なのよ。だって、私の方は思わずにはいられないもの。なかなかハードだったわね、皆どういうふうに刺激されたのかしら、あ、今もじもじ動いた、ふーん、こういうのがお好みなのね、なんて家族相手に考えるの、気まずいじゃない。相手も同じように考えて自分を見てるんじゃないかと想像するだけで、ムズムズして気持ち悪くなるでしょう? その感覚よ」



 ねえ……!



「今日の件がバレたら、特に志貴なんか面白がってひどくからかってくるに決まってるわ。真央は隠してるつもりらしいけれどムッツリドスケベだから勝手に妄想を膨らませるだろうし、頭赤子の留佳だって今は恋人の行為に興味を持ってるせいで、あれこれ聞いてきそうじゃない。考えるだけで気分が重くなるわ。間違いなく面倒なことになるとわかってるんだから、そりゃあ知られたくないわよ」



 ねえ……!?



「まだ知られてはないみたいだけれど、知られてないからいいってものでもないの。だって今の私は、例えに出したえっちなシーンとは行為の違いはあれど、同じ気まずさを生み出す存在そのもののなのよ? 八重樫くんとキスした唇で喋って、八重樫くんとキスした唇で食事して、八重樫くんとキスした唇であくびしてるところを、留佳達に見られるんだと思ったら、向こうが知らなくてもこっちが気まずくていたたまれないわ。帰りたくなくなるのも無理ないわよ」



 ねええええええ!?



「自意識過剰だと笑われても、嫌なものは嫌なの。嫌でも考えちゃうんだから仕方ないわ。今だって柊さんを見て、思っているわよ。ああ、この人、真面目に鼻チューしたのねって」



 耐え切れず、私は両目からジャバジャバ涙を噴き出させながら、城咲さんに掴みかかった。



「ねえええええ!? そんな目で見るのやめてくれる!? ああでもしなきゃ帰ってくれなかったんだから、どうしようもないでしょ!? 私だって好き好んでやったわけじゃないんだからね!?」



 城咲さんはジャバ泣きする私を見て、笑顔で頷いた。



「そう、それよ、その感覚! ね、嫌でしょ? いたたまれないでしょ?」


「確かにね! これは嫌だね! いたたまれないね!」


「わかる? じゃあそんな目で見るのをやめると私が言っても」


「そうだね! いたたまれなさは変わらないね! なるほどね、これは帰りたくなくなるね!」



 泣きながら、全力で納得の意を告げる。城咲さんは満足してくれたようだ。



「私も好き好んで、というわけではなかったし、その点もお揃いね。でも……後悔はしていない、かな」



 城咲さんが唇を人差し指でそっと押さえて、小さく微笑む。



「後悔なんてしたら、八重樫くんに申し訳ないもの。私にできることはこのくらいしかないけれど、勝手にキスを奪った責任はちゃんと取るわ。八重樫くんを、私のファーストキスの相手にしてあげる」


「えっと……お清めキスとか、しなくていいの?」



 隣から、私はそっと尋ねてみた。



「お清めキス? 何それ?」



 城咲さんが長い髪をさらりと揺らして首を傾げる。



「他の人に汚されたところを、好きな人に触れてもらうことで浄化する的なやつだよ。キス以外でもいろいろできるみたい……っと、まぁ経験の上書きみたいな感じかな?」



 一番有名なのはBでLなジャンルのお清めセッ……だけれど、それについては黙っておくことにした。まだ城咲さんには早いと思うので。


 なかなかに肌色率が高いブツの数々は、来たるべき日が訪れるまで二重底にした棚の奥に封印しておくとするよ。いつか貸しても大丈夫だと私が判断を下すその時まで、お預けだ。



「つまり、柊さんとキスすればいいってこと?」



 はい来た、どうしてそこいった的な謎めき天然発言!

 やっぱりこの子にはまだまだ二重底の秘密は明かせないね!



「違うよ、何でだよ! 私じゃなくて有瀬くんでしょーが!」


「留佳にキスしろって? イヤよ、そんなことしたら次の瞬間には死んでるじゃない。ああ見えて、意外と潔癖なのよ? 食物以外は口に入れたがらないから、歯磨き粉は好みのフルーツフレーバー以外は受け付けないし、歯医者だって毎回盛大にご褒美で釣ってやっと行かせてるのに。小さい頃なんて、嫌がって器具を噛み砕いて逃げたこともあったんだから」



 ああ見えてという前置きはよくわかるけど、潔癖って言葉の使い方、間違ってない?


 草とか石とか平気で放り込むし、こないだなんてティッシュ食ってたし、聞いたら紙類と布類は大体味見したことあるとかいう狂った発言してたし、何より迷惑すぎるほど恋人とのキスに拘ってるじゃん。

 キスにしたって城咲さんなら頬チューは問題ない、私なら鼻チューはいける、っていろいろと基準が訳わかんないし。きっと雑な感覚だけで生きてるんだろうなぁ。


 あと器具噛み砕いちゃったエピソードまで出てきちゃったか……体と同じで、歯もとんでもなく頑丈なんだね。どこまでも健やかにお育ちになりあそばれてるわね。

 ハロウィンの時に首を肉ごと噛み千切られなくて、本当に良かった。潔癖だっていうならきっと食いもせず、ペッてやられたよ。

 そんなことになったら、私の首が可哀想すぎる。



「……わかった、お清めキスは諦めよう」



 もう理解の域を超えてるので潔く投げ捨て、私は溜息をついた。


 有瀬くんの生態の謎を解き明かすくらいなら、城咲さんのファーストキスの相手が八重樫くんだと認定した方がまだ楽だ。


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