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【ノベル8巻10/7発売!】悪役令嬢の矜持〜婚約者を奪い取って義姉を追い出した私は、どうやら今から破滅するようです。〜  作者: メアリー=ドゥ
第六部/裏 濯ぐ手向けの花束を。

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リロウド公爵家の兄弟。【前編】

 

「久しぶりだな、兄上」

「ああ……すまないね、パシィ。無理を言って」


 ウェルミィは、目の前で行われるそんなやり取りを見ながら、不思議な気持ちになった。


 パシクレウス・リロウド公爵。


 クラーテスお父様の弟で、リロウドの血統の証である、プラチナブロンドの髪と朱色の瞳を持つ男性である。

 線の細いお父様や、亡くなったナーヴェラお祖父様とは少し違って、大柄で鍛え上げた肉体を持っており、髪も短い。


 ウェルミィは彼を、夜会や葬儀などで幾度か目にしたことはあるけれど、挨拶程度で全く会話をしたことがなかった。

 ナーヴェラお祖父様の葬儀の時は、ウェルミィより余程親しくしていたテレサロが大泣きしているのを放っておく訳にもいかず、ソフォイル卿と一緒にずっと相手をしていた。


「ウェルミィ、それに、リオノーラ夫人」


 お父様にそう促されて、二人で並んで軽く淑女の礼(カーテシー)の姿勢を取る。


「お久しぶりです。訪問をお許しいただき、ありがとうございます」

「リオノーラ・アバランテと申します〜。宜しくお願い致します〜」

「ああ。書庫は自由に見てくれて大丈夫だ。陛下からの打診もいただいており、用があれば、管理人の彼に話をしてくれればいい」

「畏まりました」

「それと、今後探し物が見つかるまでの間は、二人のご夫人は私不在の際も、自由に出入りしていただいて構わない。門番には伝えてある」

「重ねてのご厚情に感謝致します」


 叔父に対して少々他人行儀かもしれないけれど、実際にほとんど他人であるから仕方ない。


 それに多分、パシクレウス叔父様の魔力が強いからだろう、お父様同様、ウェルミィではその瞳から感情は読み取れなかった。

 あるいは瞳の力を知っているから、予め隠蔽魔術を掛けているのかもしれない。


 少なくとも表情からは、特に歓迎されているとも拒絶されているとも読み取れなかったが。


 ―――ま、でも多分、私に対しては好意的じゃないわよね。


 パシクレウス叔父様から見れば、ウェルミィは兄クラーテスが、ほとんど駆け落ち同然で平民と沿おうとして生まれた子。

 結果として、パシクレウス叔父様自身が爵位を継ぐことになったのを、どう受け止めているかはわからないけれど……その兄は、嫡子の地位を捨ててまで得ようとした恋人に失踪された。


 そして、解呪師として細々と生きていたかと思えば、成人した娘を認知して、自分の娘として籍に入れたのである。


 その娘は当時悪評まみれ。


 一度目の騒動で、何故か魔導卿の婚約者となり。

 二度目は王太子の婚約者としてだの、王城の夜会だので騒動を引き起こし。

 三度目は、王族まで巻き込んだ盛大な結婚式を挙げるのに出資させられ。

 四度目に、海外で大公暗殺犯扱いされる騒動を引き起こした。

 五度目の騒動は直近、各国王族を自分の治療の為に呼びつけた挙句に、今度は書庫を見せろと迫ってくる。


 リロウド公爵家にしてみれば、自分たちと何ら関わりがないのに大騒ぎの中心にいつもいて、問題を起こして回っては自分たちの家名を下げているように思えるのではないだろうか。


 少なくとも、ウェルミィが逆の立場だったら、頭が痛い血統内の異端者にしか見えないと思う。

 なのでせめて、相手の感情をこれ以上逆撫でしないよう、せいぜい静かに振る舞っておくのが吉である。


「僕はパシィと少し話があるから、ウェルミィ達は書庫に向かうといい。左の棟の地下一階から二階までが書庫だよ」


 クラーテスお父様にしてみれば、勝手知ったる実家なので、当たり前のようにそう教えてくれた。


「分かりました。要件が済んだらどうしたら良いでしょう?」

「僕たちの方が短いだろうから、書庫に行くよ」


 クラーテスお父様と別れると、少し離れた場所に立っていた管理人が来て挨拶を交わし、彼についていった。


 ウェルミィはここに来るまでの間に、マイラー・マクスウェルについて聞いてみていた。

 するとお父様は、やっぱり接触してきた彼を不審に思って独自に調べてはみたらしい。


『彼自身に、というよりも、あの紙片がとんでもないものだと思ってね。あれを解呪するのは無理だと思う』


 お父様は、そう断言していた。


『古代の遺物という話だけど、間違いないんじゃないかな。術者の技量がとんでもないし、多分魔力量も僕より遥かに上なんじゃないかな。それに、あの呪物自体が、精霊の加護を受けていると思う。そもそも精霊が解呪の祈りを聞いてくれなかったからね』


 解呪が出来ないというより、解呪自体が発動しなかった、が正しいらしい。


『昔の〝精霊の愛し子〟が作ったか、あるいは女神が作ったと言われても納得出来るくらい、あれは未知のものだね』


 お父様は、研究者として気にはなるものの、危険は感じなかったので後回しにしていたようなので、それでウェルミィは納得した。 

 そこで、リオノーラ夫人が口を開く。


「オルミラージュ侯爵夫人〜」

「何?」

「楽しみですわね〜」

「たの……? ああ、蔵書のこと?」


 いきなりそう言われて面食らったが、多分リオノーラ夫人は、未知の書物があるかもしれない書庫と聞いて、ワクワクしているのだろうと納得する。


「夢中になって、本来の目的を忘れないでね」

「はい〜、気をつけます〜」

「ええ。あ、足元気をつけてね」


 ニコニコとそう答える彼女に、ウェルミィは軽く息を吐きつつ、書庫の入り口の段差を指摘した。

 彼女に対して最初は敬語に近い話し方をしていたが、いつの間にか崩れてしまっている。


 実際賢い人ではあるのだけれど、リオノーラ夫人はかなりふわふわしていた。

 正直に言えば危なっかしくて、ぼーっとしていることも多いので、自然と面倒を見る感じになったのだ。


 普段のリオノーラ夫人は、テレサロの頼りない部分をもっと頼りなくしたような女性なのである。

 古い書物の臭いに包まれた涼しい空間に入ると、案の定目を輝かせたリオノーラ夫人が、顔を上げたまま足を踏み出してコケかけた。


 予測していたウェルミィは、彼女の肘の辺りをパシッと掴んでそれを防ぐ。


「気をつけなさいって言ったでしょ!」

「申し訳ありません〜、ありがとうございます〜」


 のんびりしたリオノーラは、ウェルミィが注意するのに、やっぱりニコニコとそう答えた。

 

ノベル版8巻発売中ですー♪


宜しければお手に取っていただけると嬉しいです♪


今回もがっつり加筆しておりますー♪


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― 新着の感想 ―
怒りながら誰かの世話を焼いてるとこらってウェルミィらしい姿の一つだよね…どうしても放っておけない優しさ。
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